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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
238/239

一時帰還

ラルフから報告を受けた翌日。

キクチは荷物を持って喜多野マテリアルの高速艇を待っていた。


昨日のうちに関係者達にダゴラ都市を離れるという事を連絡して回り、それぞれからお言葉を頂いていた。

ワーカーオフィス統括のマガラ氏には、普段の鉄面皮からは想像もつかない程や柔らかい表情で「気を付けて行ってきてください」と送り出され、なじみ深いギルド天覇のヤシロとレオナには文句を言われた。

彼ら曰く、中途半端な仕事でほっぽって行く気か!と言う事らしい。

故にキクチは「スラムバレット案件でバハラタ都市に行くことになった」と正直に伝える。

その言葉を聞いた2人は口を閉じ、同情交じりの視線をキクチに寄こしたのだった。


「・・・・・・・・ついて来てくれたりは・・・・」

『キクチ!元気でな!』

『コッチは任せて!頑張って来てね!』


と非常に有難いお別れの言葉を頂いたのである。

あの2人もミナギ都市でギリギリの逃亡戦を熟した後だ。キクチにひっついてバハラタ都市に向かえば、あれ以上の惨劇に遭遇し兼ねないと考えたのだろう。

今回は喜多野マテリアルからの依頼である。ここで成果を出せば彼の企業にアピールできる最大のチャンスだというのに、2人は頑なに同行を断って来た。

流石歴戦のワーカーである。危機管理能力は一級品であった。



時刻は6:50。

キクチは空を見上げ、自分の境遇がなぜこうなってしまったのかを考えていた。

「・・・・・・・・・・・・・・」

どう考えてもシドとライトの担当だからである。

2年前から比べれば待遇も権限も鰻登り。傍から見れば異常なスピードでの出世街道を突っ走っている様に見えるだろう。

だが、キクチからすれば自分のキャパシティを大幅に超えていると言わざるを得ない。

とはいえ、今更引き返す道も無い。

遠くの空にゴンダバヤシが手配したという高速艇がこちらに向かってくるのが見える。

流石喜多野マテリアル。

(時間ピッタリだな・・・・)

等と考えながらせめて何事も無くこの仕事が集結してくれることを願うばかりであった。





前日まで時間は遡り・・・・


「えぇ~~~?都市に帰るのか?」

ラルフから都市へと帰還するとこを聞かされたシドはブー垂れていた。

シドからすればまだ満足いく探索が出来たとは言い難い。久しぶりの遺跡探索。それがたった一日で終了してしまう事に不満があるのだろう。

「ええ、ゴンダバヤシ様からの依頼です」

シドが拒絶反応を示すことを予測していたラルフは冷静にそう告げる。

「・・・・・おっちゃんから?」

「はい。今回の件は喜多野マテリアルが処理する案件と考えている様です。未使用のライフカードを使用し、喜多野マテリアルの職員を正規登録して管理AIと接触する積りの様ですね」

それは分からなくはない。生きた旧文明の遺跡。その2つ目を占有出来るとなれば本気で動くのも当然と言える。

「・・・・・ここで探索しながら待ってればいいんじゃないか?何もバハラタまで帰らなくても・・・・」

それでもシドは遺跡を探索したいらしい。

「キクチが合流する手筈になっています。一緒に遺跡に潜り、正規登録を行った後で中央ビルにアタックをかけることになると思います」

先ほどの通信でゴンダバヤシとの会話の内容を言って聞かせる。キクチがバハラタ都市にやってくることは確定している。スラムバレットには都市に戻ってもらう事は決定事項だ。

「・・・・キクチさんが来るんですか?」

ライトはここでキクチがバハラタ都市にやってくる事に疑問を感じたようだ。

「ええ、喜多野マテリアルから適切な人員の派遣が困難な場合、キクチが我々と同行して遺跡に潜り管理AIと接触する役目を負う事になるでしょう。喜多野マテリアルとしても今回の任務は失敗する訳には行きません。必ず万全な体制を取ってくると思いますが・・・・・」

セントラル地下遺跡とミリタリービル。この2つの遺跡とコンタクトを取れる様になれば、他の6大企業の中で頭1つか2つ飛びぬけた技術を手に入れることが出来る。

他の企業に変な横やりを入れられる前に決着を付けてしまいたいと考えるのは普通の事であった。


「・・・・・・・・・」

「シドさん。ここは戻った方が良いと思うよ?キクチさんを1人でここまで来させるのは流石に危ないよ」

「・・・・・・そうだな・・・・・戻ろう」


こうしてバハラタ都市へと戻ることが決定し、頭を冷やしに行っていた(報告をしに行っていた)フィアと合流した後、購入した食料を頬張りながらバハラタ都市に向かって出発する事になった。



1日の時間をかけ、バハラタ都市が見える所まで戻って来たスラムバレット一行。

道中現れるモンスターを蹴散らしながら荒野を走っていく。

すると、防壁の一か所に違和感を感じた。

「ねえ、あそこ・・・・工事してる?」

ライトが防壁の一部分で工事を行っている場所を見つけた。

全員がその方向に目を向けると、確かに防壁の修復工事を行っている様だ。


「モンスターの襲撃でもあったのか?」

シドがそちらの方にハンドルを切り、距離を詰めていく。


距離が近づいてきて、ハッキリ見えるようになってくる。

その周辺には立ち入り禁止の看板が立てられ、荒野車などの侵入が禁止されていた。

「・・・・・何があったんだ?」

「わかりません。ワーカーオフィスの情報板には何も乗っていませんね」


工事は急ピッチで行われている様で、破損した防壁がみるみるうちに塞がれていくのがわかる。施工者はかなり手慣れている様で、技術都市として確かな腕を持っている様であった。

「あの様子であれば後1日もあれば修復が終わりますね。周囲にも護衛部隊が展開している様ですし、特に気にすることは無いでしょう」

ラルフは作業の様子を観察し特に問題ないと判断したようだ。

「・・・・・・・あそこって・・・・・・・唐澤重工の研究所が隣接してる防壁じゃない?」

「「「・・・・・・・」」」

フィアが呟いた言葉に全員が無言になる。

ライトとラルフがマップで調べてみると、フィアの言う通り、あの防壁の向こう側には唐澤重工の本社があった。


「マジで何があったんだ?」

「わかんない・・・・あの施工員ってさ。唐澤重工所属って事なのかな?」

「有り得ますね。あの企業なら壁に穴を開けるのも塞ぐのも通常作業なのかも知れませんね・・・・」

相変わらず技術力だけは高い唐澤重工の様である。


<・・・・・・なあイデア。唐澤重工で何かあったのか?>

<わかりません。ですが、今朝方大きな振動を検知しています>

<事故・・かな?>

<不明です。しかし、マクワ氏が簡易実験を行うと言って姿を見せていませんね>

マクワと言えば、兵器開発部門の主任を任されている人物だったはずだ。

<・・・・兵器の実験で防壁ぶち抜いた・・・・って事??>

<わかりません>


イデアのボディはメンテナンス中である。本社内の出来事をすべて把握しているわけでは無い。

<そう言えば、お前のボディのメンテナンスってどうなってんだ?>

<現在、私のボディは頭部を除いて完全に分解されています>

<<え?>>

<私が共同研究室に搬送されて1時間40分後。ナギ氏がパーツを1つ取り外したのを皮切りに瞬く間にバラバラにされました>

<おいおい!!それ大丈夫なのか?!>

<武蔵野皇国製のオートマタだよ?!慎重に扱うって・・・・>

<作業は極丁寧に行われました。私が観察している限り、パーツの破損は確認出来ていません>

<・・・・・いろんな意味で唐澤重工だな>

<そうだね・・・・・いろんな不安も出てくるけど・・・・>

<セントラルに復元を依頼する事も視野に入れプランを構築しています>

<・・・・まあ、お前が良いなら良いんだけどな・・・・>


防壁に開いた穴の修復を横目に、スラムバレットはバハラタ都市へと帰還する。

そして、ワーカーオフィスで待っていたのは久しぶりに見るキクチであった。


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