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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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イデアの様子と新しい防護服?

「よう、元気そうで何よりだ」

そう言ってシド達を待ち構えていたキクチは右手を上げる。


ダゴラ都市から高速艇に乗って一気にバハラタ都市にまでやって来たらしい。シドは随分遠くから連れてこられて可哀想なヤツだな、と思わないでもない。

しかし、今回の遺跡探索にキクチの力が必要とは思えなかった。


「まあ元気だけどな。なんでキクチがこっちに来ることになったんだ?遺跡に潜るのにキクチの能力が必要とは思えないんだけど」

分からないことは素直に聞いてみるに限る。

シドは自分の疑問をキクチに投げかかた。

「まだハッキリとした役割を与えられた訳じゃない。万が一に喜多野マテリアルから担当官の投入が不可能だった場合の代打だと思うが…。まあ、そんな事にはならないだろうけどな。この大陸を実質支配している6大企業の一角だ。人員不足とは無縁だろうからな」

ダゴラ都市のワーカーオフィスと違って…とキクチは心の中で呟く。

必死に少人数で整えた地下街遺跡アタックの案件から急遽外されたガッカリ感は未だ抜けていない。

「兎も角、ゴンダバヤシ様から指示があるまで待機だ。担当官もすぐに送られてくるだろうから準備だけは整えておいてくれ」

「わかった。といっても今回の探索じゃほとんど弾薬も使ってないからな。今からでもトンボ返りできるんだけど?」

シドとしては早く探索に戻りたくて仕方がない。このキクチを連れてミリタリービルに突撃してもいいくらいだ。

「待機だっつってんだろうが。それで?イデアと新しい装備に関してはどうなんだ?」

「…装備に関してはもうちょい時間がかかるって言われた。イデアは……メンテ中」

「メンテ中なのは聞いてる。それの進捗はどうなってんだ?あいつも立派な戦力だ。居るのと居ないのとじゃ大違いだろう?」

万が一、キクチも一緒に遺跡に潜ることになれば、戦力は多い方が心強い。旧文明の戦闘用オートマタよりも強力だというイデアの存在は、何をしでかすか分からないシドやライト以上に心強いとキクチは考える。

「‥‥後で見に行ってみる」

ツイっと視線を逸らしてそういうシド。その態度にキクチはシドがイデアの状態を隠していると察した。

「ほー…なら俺も一緒に行こう。お前達の装備を提供してくれている企業だ。担当官として挨拶の一つもしておかないとな」

「う‥‥うん」


シド達はミリタリービルで集めた遺物をワーカーオフィスに売り払い、その足で唐澤重工本社へと向かって行く。


ワーカーオフィスから唐澤重工までは距離が有り、全員で車に乗って移動する事になった。

「随分遠いな。本当に防壁付近に本社があるんだな」

初めて向かうキクチがその様に零す。

「防壁と隣接して本社が立っていますね。度々事故を起こすものですから、その様な場所に移設命令がだされたようです。現に今も事故か何かで防壁を貫いたようで、外で修復作業が行われていますよ」

「…不安だ」


防壁を貫くような事故。

他の都市なら営業停止処分を食らっても可笑しくはない。だが、唐澤重工は自前の技術で瞬く間に修復してしまう。それに、自分たちの施設以外に被害が及ぶような事は少ない為、都市側も強く勧告することが出来ないでいた。

そんな事が繰り返し起こると、都市側としても

「ああ、唐澤重工ね。進捗だけ(防壁修理の)確認しておいて」

と、慣れた物であった。



唐澤重工本社へとたどり着き、社屋の中に入るとそこにはシブサワが待機していた。

「ようこそおいで下さいました。スラムバレットの皆様」

そういい、丁寧なお辞儀をするシブサワ。

「どうも、イデアの様子を見ておこうと思いまして」

シドがシブサワにそう言うと、彼は視線をさ迷わせながら言葉を濁す。

「…ええっと…あのオートマタは現在精密作業中でして……」

シブサワとしてはイデアの様子を見せたくないのだろう。

現在イデアは主任達の手によってバラバラに分解されている。世界に1つしかないオートマタのその様な姿を持ち主が見れば憤慨処の騒ぎでは済まなのだから。


だが、シドはイデア経由でどういう状況なのかを知っている。それに、あの技術者たちにイデアを任せて唯のメンテナンス程度で収まるとも端から思っていない。

「大丈夫です。様子を見させてもらったらすぐに帰りますから」

「……そうですか。ではこちらに…」

シブサワはシブシブといった感じでシドを研究室に案内していった。




シブサワに案内された研究室の扉を開けると、そこには1300㎡くらいの広さがあった(大体体育館くらいの広さ)。

その中に所狭しと機材が搬入されており、中心には頭部だけをホルダーに吊るされたイデアが見える。

それぞれの機材の前には主任達とサポート役であろう研究員が陣取っており、よくわからない単語を言い合いながら作業を行っている。


「ええ~…現在このような状況でして…」

営業トークはスラスラと話すシブサワであったが、今は何を言っていいのかわからないという感じである。

唐澤重工の変態たちが未知の技術に我慢が出来ずにオンリーワンのオートマタを完全に分解してしまっているのだ。

唯一の良心とも言えるワカバヤシ主任も、4対1ではどうする事も出来なかったらしい。彼は今、取り外したパーツを破損させない様、全員のフォローに回っている様だ。

「…まあ、想像はしてましたけどね」

「うん、予想通りの光景かな?」

シドとライトは苦笑いを浮かべている。


だが、キクチとラルフはそれでは済まなかった。

「まてまてまて!!天文学的な価値を持つオートマタだぞ?!頭だけになるまで分解するか?普通!!!」

「元に戻せるのでしょうね?イデアは戦力としても有能です。もし再起不能になれば今後の活動の安全確保に影響するのですが?!(ラルフの)」

キクチとラルフの2人にすごい剣幕で詰め寄られるシブサワ。

「ええ…主任達によれば問題なく元に戻せると…」

「本当だろうな?」

「メンテナンスを行う際に付けた条件。忘れたわけではありませんよね?」

シブサワは営業マンだ。

技術的な事は専門外である。故に主任達の言葉を信じるしかない。

「それはもちろん、誠心誠意対応させて「おお!スラムバレットのお二人共!ちょうどいい所に!!」」


必死に弁解しようとするシブサワの声を遮り、声をかけてくるものが現れる。

全員が声のする方を振り向くと、研究室の外に出ていたのであろうマクスウェルが立っていた。

「あ、確か防護服開発の」

ライトがそう口にすると

「ええそうです。丁度お二人用に調整した新製品のテストが終わった所なのです。よろしければ着用していただけないかと」

笑顔でそう告げてくるマクスウェル。

「ええ…構いませんけど。イデアの状況って大丈夫なんですか?」

シドがその様に尋ねると、マクスウェルはチラっと研究室内に目を向け

「問題ありません。細心の注意を払って分解しましたから…しかし、イデア君からの要望の実装には難航しています」

浮かべていた笑顔から一転して難しい表情に変わるマクスウェル。

「どういう事です?」

ライトの質問に対してマクスウェルが説明を始める。


イデアのボディーを構成している技術は今まで遺跡から発掘された技術とは系統が異なる物が多いらしく、イデアが要求した継戦能力の向上が困難であることが分かったらしい。

あのボディーは独自でエネルギーを生産するジェネレーターが搭載されている訳では無く、非常に高性能なバッテリー方式の様だ。

イデアには予備のエネルギーパックを接続する端子が存在している様だが、それも現在の規格とは異なっており、シド達がオートマタ戦で回収した兵器のエネルギーパックとも様式が異なる様子。


無理やり接続する事も可能ではあるようだが、その場合イデアのボディの3倍ほどのサイズの変換機が必要になり、エネルギーロスも大きく現実的ではないとの意見が出される事になった。


「その予備のエネルギーパックが現物としてあれば解析して類似品を作り出すことも可能でしょうが…どの様な物かもわからなければ作りようがなく…」

そう言って肩を落とすマクスウェル。

「ナギ主任がオーバーヒートを起こした様で、現在は鎮静ざ……仮眠を取っているところなのですよ」


メンテナンスのリーダーであるナギ主任は暴走しそうになり鎮静剤を撃たれて転がされているらしい。

イデアから自分のボディーを見せる条件として提示された内容は満たさなければ唐澤重工の沽券にかかわるとの事。

なんとかそのエネルギーパックの破損品でもいいから手に入れなければならないとマクスウェルは言う。


「それだったら車に置いてあるんじゃない?」

「ん?そうなのか?」

「うん、確かジェネレーターから出てる充填機に取り付けたままのはずだよ。確か3つあったはず」


イデアはミナギ都市逃亡戦の時に予備エネルギーパックを使用して戦っていた。あの時使用して充填機に付けっぱなしになっているのである。

「本当ですか?!」

ガバッ!と顔を上げライトを見つめるマクスウェル。

「え…ええ。あるはずです」

「それならば直ぐに!‥‥‥」

取りに行きましょう!と続くはずだった言葉を止め、マクスウェルは研究室の中にチラっと視線を送ると、コホンと咳ばらいをしてこう言った。

「エネルギーパックは後でも構いませんね。まずは私の作品を試してください」


と笑顔で言うのであった。


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