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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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結局何一つ決まらず・・・・・

ミナギ都市に戻り一週間が過ぎた。

シドとライトは消耗した弾薬や食料品を補充し、ゴンダバヤシから提示された報酬を選んでいる。

「ん~・・・スペック表だけだといまいちパッと来ないんだよな~」

「そうだね~・・・・このエネルギーガンの出力、クラス5.3って高出力なのかな・・・・・良くわかんないや」

「防衛隊が装備している高出力エネルギーガンより高出力です。ですが、キョウグチ地下街遺跡で戦ったオートマタが持っていたエネルギーガンの出力がクラス6.2であったと記録されています」

「う~ん・・・・どうなんだろ、試し撃ちしてみないとわかんないな・・・」


2人共実際に触ってみないと決めきれない、といった状況だった。

自分達の命を預ける装備である。やはり一度は使ってからと考える2人であった。


他のワーカーが2人と同じ立場であったなら飛び上がって喜んでいるだろう。喜多野マテリアルの製品を扱えるという事は、エリア屈指の実力を持つワーカーとなったという証でもある。

それも、取締役クラスから直々に渡される報酬となれば、実用性云々を抜きにしても箔が付くというものだ。

だが、その様な事は一切考慮せず、使い勝手を第一に考える2人であった。


「試用させて貰うにしても候補が決まらなければ要求も出来ません。今の内に3種類くらいには絞るべきでは?」

「・・・そうだよな~」

「そうだね~」

この様な調子で、宛がわれた宿の一室でダラダラと装備を選ぶ2人。

そこへラルフが帰ってくる。


「ただいま戻り・・・・・まだ悩んでいるのですか?」

「おかえり~」「おかえりなさい」

何やらゴンダバヤシに呼び出されたと言って出て行ったラルフが帰って来た。

と言うのに、2人はチラっと視線を向けるだけでまたカタログへと視線を戻してしまう。

「・・・・・もうなんでもいいのでは?喜多野マテリアルの高ランク商品ですよ?」

ここ数日、ずっとカタログと睨めっこしている2人にラルフもあきれた表情を浮かべる。

「そうなんだけどな~。やっぱ使ってみないとさ。好みってのがあるじゃん?」

「そうそう。僕なんか、エネルギー兵器使うの初めてですし」

なんでもいいからさっさと決めろよ、とため息を吐き出すラルフ。

本来ならそんなことは思わず、良く考えて選ぶようにとアドバイスを送るだろうが、ラルフはこの2人の特異性を知っている。

きっとポンと渡された装備でも直ぐに使いこなすようになるに違いない。

お前等なら何でもいいんじゃないか?と心に思うのだったが、彼らの選択が自分の命にも直結する可能性があると考えれば安易に決められるのは困るというものだ。


「そう言えば、どういった用事だったんだ?」

シドがカタログから目を離し、ラルフに向けながらそう言う。

「ああ・・・・そうですね。スラムバレットの今後について・・・です」

ラルフがそう言うと、ライトもラルフに視線を向ける。

「どういうことですか?」

「まず、お二人に支払われる報酬が決まりました。今選んでいる装備とは別にそれぞれ15億コールです」

「は?!」「えぇ?!」

「ええ・・・功績からして少々少ないと思いますが、実質的にミナギ都市を守ったのは現地にいる防衛隊やワーカー達。そして、管理企業であるアースネットとケミックス・アロイの功績が大きいと判断されたのです」


シドとライトはドルファンドの大罪を公にし、ミナギ都市で大規模なバイオハザードが起こりうる証拠を喜多野マテリアルに齎した。その功績は大きなものであったが、彼らがワーカーとして活動した功績として認められたのは変異ナノマシン保有体ゲンハの撃破と、ドルファンドの不正の告発のみと判断されたのだ。

現在対処している変異体モンスターの出現予測や、討伐などの対処はゴンダバヤシ率いる部隊(研究員含む)とミナギ都市所属の防衛隊・治安維持部隊・ワーカー達の功績となったのである。


2人がミナギ都市に来る間に戦った巨大ワームの討伐報酬も15億の中に含まれている。

その事の告知を受けたとラルフは2人に説明する。


「もう少し金額を上げたかったのですが、喜多野マテリアルの取締役会で決定事項とされていた為、どうにもできませんでした」

ラルフからすると、もっと評価されてもいいという思いがあった。だが、

「いや、なんで報酬がもらえるんだ?俺達、依頼で戦ったわけじゃないのに?」

「ボクは逃げただけですよ?」

2人からすれば金銭的な報酬が発生するとは夢にも思っていなかったのだ。

何もわかっていない2人の様子を見たラルフは頭痛を堪えるようなしぐさを見せる。

「・・・・・いいですか、2人共・・・・・」

そこからラルフは2人の功績を懇々と聞かせていく。

都市管理企業の一角の大罪を暴く。南方都市の経済圏の破綻を防ぎ、人類生存権の縮小を防いだ事や、この都市に住まう全ての人命全てに関わる危機を防ぐ情報を持ち帰った事など。

丁寧に聞かせてみせたのだった。

「ふ~ん・・・・」「はぁ~・・・・・」

だが、2人の反応は非常に軽い。

(コイツ等全く分かってない・・・というより、実感がないって所か・・・)

「今の御2人はエリア管理企業の取締役から注目を受けているワーカーチームだと言う事を自覚してください。大陸広しといえど、ありませんよ?たった2人のチームに随行員が同行しているワーカーチームなんて・・・」

ラルフはこの2人に自分達の価値を自覚させることから始めることにした。

そうすれば突発的な行動も少しは収まるのではないかと期待しての事である。しかし、今一ピンときていない顔で話を聞いているシドとライトを見て、ラルフは前途多難だなと内心頭を悩ませる。

「それと、御2人のランクアップの事なのですが」

「まだあるのか」

「はい、ライトのランクは50に上昇させるとの事です。そしてシドなのですが、51以上へのランクアップ規定にひっかかるのです。その為の処置として、新しい同行者が選定されました」

「・・・同行者・・・ですか?」

「はい、本来ならランク51以上に上がる際に色々制約が掛かってくるのです」


ランク50以上となれば立派な高ランクワーカーである。

大陸全土、どの都市へと移動しても一目置かれる存在となり、最前線へと足を踏み入れる資格を得た証であった。

その他にもワーカーオフィスから様々な優遇を受けられる。

拠点の優先的な手配。装備更新時の低金利での融資。弾薬などの補給の優先権やワーカーオフィスと提携している店舗や企業からの割引など。

そして大きいのが、6大企業が課している兵器所有制限の段階的撤廃である。

広範囲殲滅が可能な兵器や、強化外装などの人の力を大きく超える武装の個人所有など、ワーカーとして活動するのにランク50以上に成れるかどうかでその所有できる「武力」が大幅に上昇する事になる。


ライトがシールドスーツを手に入れようとした時、ランク制限で購入できなかった事があった。

あの時はキクチの口添えで購入する事が出来たのだが、ランク51以上となれば、それはエリア管理企業のお墨付きと言える。

要するに金さえあれば、誰に憚ることなく好きに装備や兵器を購入する事が出来るようになると言う事だ。

ちなみに、ELシュータ01を購入できたのも、シドとライトがランク45以上だったからという理由が有る。

ランクが51以上になればあれ以上に強力な兵器が購入可能になり、さらに割引特約が付くという事だ。



そして、その為にはいくつかの突破すべき関門がある。


1つ目は実力。推奨ランク50レベルの遺跡を探索して、生きて帰って来る事が出来る力を示す必要がある。

2つ目が実績と貢献。ワーカーとしていかに活動し、ワーカーオフィス、言い換えれば人類社会へどれほど貢献したかを問われる。

3つ目が活動期間 5年。この期間の間、どれほど安定してワーカーとして活動していたかという査定が入る。

4つ目が後進の育成。次代のワーカーを育てる、ランク20以上まで育てる事。


この4つがランク51以上に上がる条件として規定されている。


1と3はランク51に認定して早々に死なれては、認定したワーカーオフィスの評価能力に問題があると認識されるのを防ぐため。

2と4は、その人物が最低限度の人格を有しているかどうかを判断する為に設けられている規定だ。


多くのワーカー達はギルドに所属し、長く活動していく中で3と4はクリアできる。2の貢献も時間を掛ければクリア出来るだろう。だが、多くの者達が1の条件をクリアできずにランク50を人生の最高ランクとしたまま、引退するか遺跡へと飲まれていくのだ。


シドとライトの場合は、3の条件以外は既にクリア済みである。

1の条件は最早確認するまでもない。2の条件はセントラルの地下シェルターで十分過ぎる功績となり、ドルファンドの件はダメ押しとなった。

4の条件に関しては、タカヤとユキが該当する。

最初のブートキャンプと2回目の合同訓練で、シドとライトが彼等を教育したと正式に認定されている。そして現在、タカヤとユキはランク20を突破し、今ではファーレン遺跡の中層をメインの活動場所としてブイブイ言わせているのだ。


そして最後の条件。活動期間である。

本来ならば一番簡単であるはずの条件が、シドとライトのランク上昇には最大の壁として立ちはだかるのである。

そもそも1年2年程度でランク50以上に手を掛けるワーカーが現れた事など無い。

今までの最短記録で6年と9カ月である。

シドとライトは最短記録を5年以上短縮してしまった、文字通りのイレギュラーであった。


「で、その活動期間を短縮する代わりに、ある人物をチームに加え、その人物のランク調整依頼に協力するという話です」

「ランク調整依頼・・・ね~・・・」

シドは自分が受けたランク調整依頼の事を思い出し顔を顰める。

「なにか?」

「いや、俺の時は防衛拠点でひたすらモンスター狩りだったからさ・・・・・飽きるんだよな~。最後に大型モンスターが出た時は死ぬかと思ったけど」

シドはあの代り映えのしない毎日を思い出しうんざりした表情を見せる。


「で、その人とどんな依頼を熟していけばいいんですか?」

ライトはそんなシドを放置し、活動内容をラルフに確認する。

「スラムバレットは自由に活動してもらって構わないそうです。期間は彼女がランク50に到達するまで。言うなればあなた方に彼女がついて行けるかどうかを確認する為の依頼と言う事になります」

「その人はランク50前後の実力があるということですね?」

「そうなります。評価はランク50のシーカーが妥当であると判断されている様ですね」

「ボクと同じくらいってことか・・・シドさん、どう?」

「・・・俺達に同行するんじゃなくて、チームに入れろって話なんだろ?俺達との相性が判るまでは無理じゃないか?女みたいだし」

シドはラルフが意図的に混ぜた表現をした部分を正確に捉えていた。

ランク調整依頼に協力するだけなら同行でいいはずだ。それなのにラルフはチームに入れろと言った事にシドは難色を示す。

それに、相手が女性である事にも懸念を持っているらしい。


男所帯のチームに女性ワーカーが加入するだけでトラブルが発生する可能性は高い。男女の縺れが原因でチームが崩壊したワーカーチームなど腐るほど存在する。

ラルフはシドの懸念は当然であると考えた。

「やはり女性は難しいですか?」

「ああ、ライトが動揺したり、赤くなって気絶したりしたら大変だからな」

シドの懸念はラルフのものとは少しずれていた。

「大丈夫だよ!!!!」

いきなり槍玉にあげられたライトは顔を赤くして否定の声を上げる。


その反応を見て、ラルフはライトの方が女慣れしていないとの判断を下す。

実際にはシドの方が女性に対する知識が少なく、性的反応が何故か少ないというだけの事である。

チラっとイデアに視線を向けるラルフ。

「ライトは正常な思春期男性の反応です。シドの場合、雌雄に対する知識の欠如と幼少期からの生活環境が影響し女性に対する興味というものが非常に希薄であると思われます」

「・・・・・そういう知識の教育は?」

「私が行ってもよろしいですか?」

イデアの返答にしばし悩むラルフ。しかし、これからも考える事や対処する事が多く、この様な事でタスクを増やしたくはなかった。

「・・・・・・よろしくお願いします」

「承知しました。・・・・シド。まずは人間の繁殖方法から説明します。まず適切なタイミングで女性のしきゅ「チョーーーーっと待ってください!!!!」」

イデアのあまりに直接的かつ機械的な説明にラルフはインターセプトを掛ける。

「なんでしょうか?」

「私がなにかしらのプランを考えます!この件は私に任せてください!!!」

「・・・・承知しました。よろしくお願いします」

「・・・・はい」

規格外とは言えイデアは機械知性。人間的な情緒や貞操観念の教育には向いていない。イデアが与えられるのはひたすらに知識のみである。

ラルフは思春期であるはずのシドに女性が何たるものかを教えなければならなくなってしまった。

ゴンダバヤシやキクチからは、シドとライトの事に関して些細な事でも報告を上げるようにと言われている。

(・・・・え?この事も報告しなきゃならないのか?・・・・・いやだ~~・・・・・)

加速度的にラルフの仕事が増えていく。

今回の事はラルフの業務には含まれては居ないが、イデアに自分に任せろと言ってしまった為もうどうにもならない。

ラルフ・ローレンス 26才。

彼女いない歴 26年。青少年の貞操教育を請け負う。

(・・・・女性の事をシドに教える???私が知りたいよ!!!)

二重の意味で涙が流れそうになる目を抑え、ラルフはガックリと項垂れるた。

「・・・・・・・一体なに??」


話の流れが急に変わり、着いていけなかったシドは頭の上に?マークを浮かべながら首を傾げるのだった。


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ラルフおまえ…
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