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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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同行者 フィア・ハーバー

さらに1週間の時が流れ、シドとライトはゴンダバヤシに呼び出された。

用件はシド達が要求した装備の手配が終わった事と、新しい仲間?がミナギ都市に到着したため、その顔合わせである。


ミナギ都市ワーカーギルドに着くと、統括代行を務めているキクチが出迎えてくれた。

「おう、元気そうだな」

「まあな、出迎えに統括代行が来るって・・・暇なのか?」

「ははは!そうなんだよ。漸く今回の件が片付いたからな!!」

そう機嫌良さそうに笑うキクチ。

スラムバレットがミナギ都市へと戻って来て2週間。地下構造のクリアリングが100%完了し、モンスターが都市外へ流出した可能性は潰すことに成功していた。

現在ミナギ都市には事態収束のアナウンスがなされ、住居を持つ住民たちは元の生活に戻ろうとしている。

キクチも重圧から解放され、細々とした業務を終らせれば晴れて統括代行の任を解かれる運びとなった。

「それはおめでとう」

「ありがとうよ。じゃ、ついて来てくれ」

シドはキクチが背負っていた重圧など気にも留めない。というか気づいてもいなかった。キクチもシドにその様な気遣いなど全く期待していない。

だが、この気安いやり取りこそが無事に事態を収束させたと実感させてくれた。

ゴンダバヤシのいる部屋までシド達を案内しながらキクチはその様に感じていた。


彼のいる部屋に到着すると、キクチはノックを行い扉が開かれると全員を連れて室内へと入って行く。


「スラムバレットの面々をお連れしました」

背筋を正し、美しい姿勢でそう告げるキクチを真似て、シドとライトも同じように立つ。


「おう、ごくろう」

いつもの様に不敵な笑みを浮かべて椅子に腰かけるゴンダバヤシがそう答える。

キクチが道を開け、シドとライトはゴンダバヤシの前へと足を進める。

ゴンダバヤシはそのままの体勢で2人へと言葉をかけてくる。

「お前らが要求した装備は準備できてる。使ってみて気に入ったヤツを持って行け」

ニヤリと笑いながらそういうゴンダバヤシ。

「まだ悩んでるんだよ~。おっちゃんのお勧めは全部カッコいいからな」

シドはすでにバイクの事で頭がいっぱいだった。

「はっはっは!そうだろう?全部お勧めだぞ!」

シドの言葉に機嫌よく返すゴンダバヤシ。

「ゴンダバヤシ様。今回はボク・・・私の装備の提供、誠にありがとうございます」

シドとは違い、畏まって頭を下げるライト。

「・・・礼を言うのは俺達の方だ。お前たちには助けられてるよ。これからもよろしく頼むぜ」

「はい!」

ゴンダバヤシの言葉に返事をするライト。

ライトもゴンダバヤシに気後れする事は無くなってきたようだ。

「それじゃ、テストプレイの前にお前たちのチームに入るヤツを紹介しておこうか・・・・・」


先日ラルフから通告を受けたチームへの加入者・・・・というか同行者だ。

最初はしぶっていたシドだったが、同行者のランク調整依頼が終了するまでスラムバレットに仮加入という形にし、依頼終了後にそのまま加入するか脱退するかを判断するという形で話を進めたのだった。

これはラルフの提案である。

喜多野マテリアルから派遣された諜報員がスラムバレットに加入する。

これは喜多野マテリアルがスラムバレットの監視を強化したという事であるが、ラルフの視点から見て諜報員がスラムバレットについて行けるかと言われれば疑問符が付いた。

それがエリア管理企業から派遣された諜報員であったとしても。

もし、彼女が実力不足と言う事であれば、双方の話し合いの元でという建前を持って放逐できる。その形に持って行きたかったのだ。


この提案はゴンダバヤシにも、発案元である専務取締役であるアドルフにも承認された。

その決定が下されたと聞いた時、ラルフは人生最大の、胸の撫で降ろしを経験したのだった。


「おい」

ゴンダバヤシが声を掛けると、隣へと繋がる扉が開き、1人の女性が部屋へと入ってくる。

「お初にお目にかかります。シーカーランク32 フィア・ハーバーです」

その女性はダークレッドの髪を左右非対称のショートボブにしており、身長は170前後。女性としては長身な部類に入るだろう。年齢はラルフやキクチと同じくらいだろうか?

スラリとした体形ではあるが、体の起伏に富み。所謂、大人の女性である。

体に密着するタイプの強化服を身に着けており、その上に短いジャケットを身に着けていた。


容姿は非常に整っており、目は切れ長で鼻筋も通り、間違いなく美人と称される人物だった。


「スラムバレットのリーダー、シドだ。よろしく」

「ボクは同じくシーカーをしているライトです。よろしくお願いします」

自己紹介と共に頭を下げたフィアに同じく頭を下げて挨拶するシドとライト。

2人を見やり、微笑みを浮かべながら返答するフィア。

「はい、よろしくお願いします」



双方のやりとりを眺めていたゴンダバヤシは彼女について話を始めた。

「彼女はランク50に相当すると考えられているシーカーだ。情報系を専攻し解析関係を得意としている。実力とランクの乖離が激しい為ランク調整依頼が発行されることになった。お前らには彼女が実力に見合うランクになるまで行動を共にしてほしい。細かい事は言わねーから・・・まあ、仲良くやってくれ」

元々この作戦に乗り気ではないゴンダバヤシはシドと気安い付き合いをしてきた事を良いことに軽薄な対応を取る。


「おう、分かった」

何も考えていないシドは思ったまま答え、

「承知しました」

特に引っ掛かりを感じなかったライトも快諾する。

「・・・・・・」

彼女の正体と役割を聞かされているラルフは表情を変えないまま静かに頭を下げるに止めた。


「よし!んじゃ装備の試用を始めるか!」

一つの案件が片付いたとゴンダバヤシが腰を上げる。






所変わってワーカーオフィスの訓練所。

規模は狭いが防音・耐衝撃性に優れた建材で作られており、装備の試用運転にはもってこいの場所であった。


エネルギーガンを要求したライトが性能を試している。

選んだ3種類の兵器が台の上に並べられており、それぞれ単発威力重視・バランス型・バラまき型と違うタイプのエネルギーガンが準備されていた。


ライトは思い思いに手に取り(エネルギーシールドで)的に向かってぶっ放していく。

単発重視の銃は威力は流石の一言である。ぶ厚い金属板を打ち抜き、後方へとさらに飛んでいったのだ。

バラまき型は威力は劣るが連射力が高く、ガトリング砲さながらの投射力を見せつけた。ライトはその性能を見ながら勝手な感想を思い浮かべる。

(威力は単発重視とバランス型の間、投射量はバランス型とバラまき型の間がベストなんだけどな~)

どれを手に入れても痛し痒しになる。だが、どれを撃ってもエネルギー兵器らしく反動が非常に小さい(A60比)。腕力に劣る(シドと比べて)ライトからすればこの点は非常にありがたい。これなら素手で持っても十分な命中率を出せる。

視界に映る的を全て打ち抜きながらどれが一番自分に合うのかを考えるライトだった。



そしてシド。

彼はバイクマニア ゴンダバヤシ推奨のバイクに跨っていた。

「ひゅーーーー!!!」

前回と同じメーカー、リバーケープのバイクに跨り空中を滑走する。

ゴンダバヤシが薦めたバイクの中には喜多野マテリアル製の空走バイクもあったが、その全てが浮遊して走行するタイプであり、シドが愛用していたシールドの上を走るタイプのバイクは無かった。

シドはタイヤが地面、もしくはシールドを捕えて走ることを好んでおり、空走バイクは少し乗っただけで満足してしまっていた。

今は自分が作り出したシールドの道を駆け、宙を縦横無尽に走り回る。


先代のバイクに比べて馬力も高く、加速力や走行中の車体安定性が飛躍的に向上していた。

シドは細かく体重移動を繰り返し、蛇行走行の際の車体のブレや車体に掛かる負荷を確認していく。

<コレは良いな!前のヤツにあった軋みとか捩れが全くない!>

<その様ですね。この車体ならばもっと高火力の装備を搭載する事も可能になるでしょう>

<楽しみだな!!>


ある程度感覚を掴み、元の場所まで戻って来るとそこにはバイクに跨ったゴンダバヤシが待っていた。

「どうだ?気に入ったか?」

「ああ、サイコーだよ・・・・おっちゃんも乗ってるって事は・・・」

「おう、また勝負だ。今回は俺の新しい愛機だからな、前回みたいに簡単に勝てると思うなよ?」

そういいニヤリと笑うゴンダバヤシ。

彼はダゴラ都市でシドと勝負をした際、地走式バイクにのったシドに空走レースで負けたのだ。それが悔しくて自分もシールドの上を走れるバイクと装備を準備したのだ。

ゴンダバヤシは自分でシールドを発生させられない為、シールドスーツを着用している。

「面白いな。よし!勝負だ!」

シドがゴンダバヤシの横にバイクを並べると、訓練所にコースを指示するレールが表示される。この時の為にゴンダバヤシが用意したデータを元にワーカーオフィスに指示を出して用意させたコースだ。

職権乱用も甚だしい。


スタートの合図が出され、2人はアクセルを回し勢いよく飛び出していくのだった。



フィア・ハーバー視点


私は喜多野マテリアル諜報部に所属する人間。

ミュアというコードネームを与えられ活動を行っている。


エリア管理企業の諜報部に所属した際、本名から過去の履歴から一切を抹消され、私と言う個人はゴーストと同じになった。

厳しい訓練を熟し正式に配属されてから数年、他エリアの企業や中央崇拝者のアジトに潜入し、害悪な組織の情報を喜多野マテリアルに齎してきた。

ハッキング能力には自信があるし、戦闘能力においても上級兵に匹敵するものを持っていると自負している。


今回専務取締役から、ランク50のワーカーチームに潜入して監視するようにと指令を受ける。

話を聞いた時は首を傾げたものだ。

そのワーカーチーム スラムバレットの詳しい情報を渡され、確認してみると、そこには俄かには信じられない様な内容が書かれていた。

推定年齢16~17才の二人組。年齢が推定なのは2人共ダゴラ都市にある第3区画出身で、出生が確認できなかったと言う事だ。

生まれがダゴラ都市であるかどうかも不明であるとの事。

リーダーのシドが1年4カ月前にワーカー登録を行い、初期の段階でワーカーオフィス出張所の職員との間にトラブルが発生。その後はオフィスには寄り付かず知り合った行商人と取引を行っていた様だ。

その後唯一のメンバーであるライトとバディーを組み、ワーカー活動を行いその直後にスタンピードに遭遇。

都市防衛戦に参加し、そこで大型モンスターの討伐を経てランク11へと上昇。正式なワーカーライセンスを取得した経緯があった。


その後シドはランク調整依頼を掛けられミナギ都市方面防衛拠点へ配属、ライトは都市のワーカー養成所へと入所。

双方ともにワーカー活動から半年も満たない新人とは思えない活動を見せ、破竹の勢いでランクを上げて行く。

現在ダゴラ都市で進められているワーカーオフィス主導の訓練所の開設にも深くかかわっており、その訓練強度は凄まじく、教導官は喜多野マテリアルの引退兵を起用しなければならない程の練度が必要であるとか。


ダゴラ都市にて中央崇拝者と中級ワーカーギルドの襲撃を受けこれを殲滅。その後ミナギ都市へと拠点を移す為に移動。その途中、旧文明の遺跡を発見し、生きたAIとの交渉の場を得ることに成功。ゴンダバヤシ氏が取締役へと昇進するきっかけを与えた。

その後ミナギ都市へと移動し、都市管理企業の人身売買と人体実験の証拠を入手し解決に貢献。



その履歴を見るとトラブルに愛されているとしか言いようがない。

今日は連れていない様だが、高性能な旧文明製オートマタを従えているとの情報もある。


だが、この経歴だけで喜多野マテリアル諜報部が潜入する必要があるだろうか?と考えてしまう。

確かに類まれなる成果を出している。前代未聞の超短期間でランク50に到達したのも納得の成果といっていい。

しかし、彼ら自身が危険な思想を持ち合わせている訳でもなく、普通にワーカー活動を行い、その先で大きな事件に遭遇しただけで、彼ら自身が問題行動を起こしたことは無い。

コレならばワーカーオフィスと連絡を密にし、逐一情報を吸い上げるだけで対処可能であると考えられる。


そこで私はアドルフ取締役の思惑を読む為、ゴンダバヤシ氏に前もって情報提供を願い出た。

私の様な諜報員が直接顔を合わせる事などない人物であるにも関わらず、彼は直ぐに応対してくれ彼らの情報を開示してくれたのだった。


彼らの経歴等は専務から供給された情報と相違はない。

しかし、問題は彼らの実力だった。

シーカーであるライトは上級兵と対等の実力を持っているとの事。シールドスーツと情報収集機を装備し、愛用の銃を持てば上級兵が複数で掛からなければ手が付けられないのだとか・・・・・

一体何の冗談だと思っていたが、今、目の前で行われている銃の試射を見て納得がいった。

高速で展開される的に、一発の外れも無く全弾命中させていく。

それは射線が通っていない的でも例外は無く。エネルギー弾を曲げて複数の的に命中させていた。

それも、銃を手で持つのではなく、エネルギーシールドを変形させ、銃を保持して行っているのだ。どれほどの演算能力があれば可能になるのか想像もつかない。

その上、遺跡でのシステム回収なども行っているらしくシーカーとしての腕も申し分ないとの評価を得ている様だ。


そして、今楽しそうにゴンダバヤシ氏とバイクレースに興じているシド。

彼に至っては、喜多野マテリアルが保有しているイレギュラーの1人、デンベと殴り合えるレベルであるという驚愕の情報も聞かされた。

デンベ曰く、

「まだまだ未熟ではあるが、数年で私と対等に戦える様になるはず」

との事。

まさしく人外の領域に両脚を突っ込んでいる。


片や真剣にエネルギーガンの性能を見比べ、片や楽しそうにバイクを繰る少年達。

私はまだまだ子供の様なバケモノ2人組について行かなければならなくなってしまった。


(明らかなランク詐欺・・・・・彼らについて行く・・・か・・・・・)


今まで以上に難しい任務になる。

そう考え無表情に徹しながら内心冷や汗が止まらなかった。


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― 新着の感想 ―
やったぜ!新しい苦労人枠だ!
ミュアさんが二人に何をもたらすかな?
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