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心結乃熾刀  作者: 氣肚愛烙
第ニ章 絢煚の絆
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11/14

篝

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高き岩壁のうえ、私は、"あの人"の倅を助けに行く。



吹き荒れる嵐


 隻眼に染みる 戦地の屍たちよ


 我が心は、その冷罵な魔神とは異なる


 否応だとしても、我が魂 彼者を、黒龍の元から救わねば


 師匠の墓石にすら顔合わせが出来ぬ。



 彼女は吹き荒れる大嵐の中、暴風に掠り傷を作りながら、その眼に幾度も猛火を宿している。


 「"あの人"の息子の名前は、確か"絢煚《けんひ》"」


 あの人が亡くなる前に、私に託すといい、産まれる時、私に名前と、何かあれば、護ってくれと頼まれた。








 私自身、子供の世話を焼くことは得意ではないが、頼まれたからにはやるしかない。


 それに、師匠の子供だ。

 さぞ、聡明で愛らしいにちがいない。

 会って、救いだしたら頭を撫で撫でしてやろう。


 それに孤児になることほど不安なものはない。

 私は、野生児のように、森でずっと暮らしてきたが、

 絢煚は5歳になったばかりだろう。


 もしかすると、私を母としてべったりと甘えたりするのだろうか....



 「それはそれで、可愛らしいなぁ、、」

 私は暴風の中、風魔法で、黒龍乃牙の本拠地に単身で、向かっている。歩いていくには、あまりにも時間が無さすぎる。

 

 おそらく。



 黒龍乃牙が、師匠を殺したのは、間違いようのない事実だ。幹部の誰かが師匠を殺した。

 今にも憎き仇を討ち滅ぼしたいが、捕らわれた師匠の愛息子《まなむすこ》を助けなければ、

 奴らは、数日もせず、彼を殺す。


 奴らのことだ。

黒龍の生け贄を捧げる巖山に、絢煚を置き去りにしているはずだ。


 しかし、あの場所は少々厄介だ。

 空をも並ぶあの高き巖は、黒龍乃牙の象徴《シンボル》とも呼ばれている。


 過去に、捕らえられた生け贄たちは、あの巖の上に残され、伝説の龍、黒龍の供物にされてきたのだ。


 その歴史は数千年にも及ぶ。

 あの巖には、その数々の未練の魂たちが、今も、残され巖脈になり、碧色《へきしょく》となって地層まで霊気を伸ばしている。





あの付近に住む人間からは、狂呼の巖と呼ばれている。黒龍乃牙はあの場所を、神に阿鼻叫喚を捧げる場として、仰天怨地《アンシュライエン》の神巖と呼んでいる






 数々の供物を捧げてきたのだろう。

 絢煚を助けるにも、あの岩は、黒龍乃牙の本拠地のさらに、中心地に位置する。

 


 助けられればいいが、一朝一夕にはいかないだろう、、


 絢煚にさえ、会えることが出来れば、こちらに分があるが、


 孤軍奮闘の状態に、内憂の怯えを吹き飛ばして、

吹き荒れる大嵐の狭間、私は心の内の燎原の火を抱き、

強き魂を鼓舞して突き進んだ。




 「待っていてくれ。絢煚。いますぐ救いだす」




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