篝
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高き岩壁のうえ、私は、"あの人"の倅を助けに行く。
吹き荒れる嵐
隻眼に染みる 戦地の屍たちよ
我が心は、その冷罵な魔神とは異なる
否応だとしても、我が魂 彼者を、黒龍の元から救わねば
師匠の墓石にすら顔合わせが出来ぬ。
彼女は吹き荒れる大嵐の中、暴風に掠り傷を作りながら、その眼に幾度も猛火を宿している。
「"あの人"の息子の名前は、確か"絢煚"」
あの人が亡くなる前に、私に託すといい、産まれる時、私に名前と、何かあれば、護ってくれと頼まれた。
私自身、子供の世話を焼くことは得意ではないが、頼まれたからにはやるしかない。
それに、師匠の子供だ。
さぞ、聡明で愛らしいにちがいない。
会って、救いだしたら頭を撫で撫でしてやろう。
それに孤児になることほど不安なものはない。
私は、野生児のように、森でずっと暮らしてきたが、
絢煚は5歳になったばかりだろう。
もしかすると、私を母としてべったりと甘えたりするのだろうか....
「それはそれで、可愛らしいなぁ、、」
私は暴風の中、風魔法で、黒龍乃牙の本拠地に単身で、向かっている。歩いていくには、あまりにも時間が無さすぎる。
おそらく。
黒龍乃牙が、師匠を殺したのは、間違いようのない事実だ。幹部の誰かが師匠を殺した。
今にも憎き仇を討ち滅ぼしたいが、捕らわれた師匠の愛息子を助けなければ、
奴らは、数日もせず、彼を殺す。
奴らのことだ。
黒龍の生け贄を捧げる巖山に、絢煚を置き去りにしているはずだ。
しかし、あの場所は少々厄介だ。
空をも並ぶあの高き巖は、黒龍乃牙の象徴とも呼ばれている。
過去に、捕らえられた生け贄たちは、あの巖の上に残され、伝説の龍、黒龍の供物にされてきたのだ。
その歴史は数千年にも及ぶ。
あの巖には、その数々の未練の魂たちが、今も、残され巖脈になり、碧色となって地層まで霊気を伸ばしている。
あの付近に住む人間からは、狂呼の巖と呼ばれている。黒龍乃牙はあの場所を、神に阿鼻叫喚を捧げる場として、仰天怨地の神巖と呼んでいる
数々の供物を捧げてきたのだろう。
絢煚を助けるにも、あの岩は、黒龍乃牙の本拠地のさらに、中心地に位置する。
助けられればいいが、一朝一夕にはいかないだろう、、
絢煚にさえ、会えることが出来れば、こちらに分があるが、
孤軍奮闘の状態に、内憂の怯えを吹き飛ばして、
吹き荒れる大嵐の狭間、私は心の内の燎原の火を抱き、
強き魂を鼓舞して突き進んだ。
「待っていてくれ。絢煚。いますぐ救いだす」




