エピローグ
雪崩から二年。
元通りとは行かないけれど、ダムの建設や生まれ変わった新しい街ができてきて、やっと延期されていた結婚式を迎えられた。
ずっとこの日を待っていた。
ユリウスのお嫁さんになれる日を。
学園にいる頃からシルヴィブランドに依頼していたドレスは、つい最近仕立て上がったばかりで、その出来栄えは流石令嬢達の憧れの的なだけあってとても素敵だった。
ユリウスを驚かせたくて、実はまだ秘密にしているんだよね。
綺麗だと褒めてくれるだろうか。
控室のドアをノックする音。
「フィオナ、おめでとう」
そう言ってくれたのは私の唯一無二の親友だ。
お祝いに駆けつけてくれたサンドラはちょうど一年ほど前に出産をして、今は赤ん坊を抱いている。
委員長の色合いを継いでいるが顔立ちはサンドラに似ていてとても可愛らしい。
事前に用意していたおもちゃや服で部屋が埋まってしまいそうになるのをユリウスが必死に止めていたっけ。
私的にはまだ足りないと思うのだけれど。
「フィオナ、とっても綺麗よ。」
お母様が胸元にネックレスをかけてくれた。
ノースヴェイルに嫁いできた時につけていた大切なものなんだって。
鏡越しに見えた少し寂しそうなお母様の表情になんだか泣きそうになってしまった。
化粧が取れちゃうから我慢なんだけれど。
今日は私達の結婚を祝って街でお祭りも開いてくれるんだって。
「私、今すごい幸せ。」
ずっと夢だったユリウスのお嫁さんになれる。
それを多くの人達がお祝いしてくれる。
こんなに素敵なことなんてない。
「準備できたら行くわよ。
ユリウスが首を長くして待ってるわ。」
お母様に案内されて控室から式場の前へと向かった。
そこから先はお父様のエスコートで一歩を踏み出す。
ゆっくりと歩くたびに今までの思い出が蘇ってくるみたいだった。
ユリウスと初めて出会った時のこと。
夏祭りで迷子になったこと。
学園での行事。
そして、雪崩のこと。
色んなことがあった。
でも二人で乗り越えて、今がある。
「っ…」
結婚式を取り仕切る神父様の前。
ユリウスの隣に立って、彼を横目に見ると喉仏が大きく上下したのが見えた。
緊張してるのかな。
昨日までそんなそぶりもなかったのに。
それにしても白いタキシードで髪を後ろに流したユリウスはかっこいい。
「ゴホン…新婦殿、誓いますか?」
「…え?」
「フィオナ、新郎に見惚れすぎよ。」
「あ、ち、誓います!誓います!」
サンドラの言葉に会場が笑いに包まれる。
大人になったつもりだったけれど、どうやら私はあまり変わってない部分も多いみたい。
最後まで本当に格好つかない。
「それでは誓いのキスを」
恥ずかしさで赤くなった顔を隠してくれているベールがユリウスの手によってゆっくり上げられていく。
見上げたユリウスは頬をヒクヒクさせていた。
どうせならしっかり笑ってよ。と思う。
唇が優しく当てられると会場は拍手に包まれた。
ゲストの皆さんへ一礼をしてから、一歩ずつ会場の外に向かう途中、私の大好きな人たちから祝福の花の花びらが投げられた。
それはまるでノースヴェイルの雪みたいに綺麗だった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
フィオナの過ごす一年間を、最後まで楽しんでいただけていたら幸いです。
今作は、前作の『裏庭で野良猫に餌をあげていた私が王太子妃になるまで』を書きながら、甘い話が書きたいなぁ、恋愛に全振りした話が読みたいなぁと思ったことから生まれた作品です。
幼馴染っていいですよね。
日常をゆっくりと歩きながら、大切なものを大切にしていく。
そんな綺麗な物語が書けたらいいなぁと思いながら、フィオナとユリウスの一年間を書いてきました。
そして、忘れてはいけない補足として。
ざまぁは控えめでした。
本作では描かれませんでしたが、アーノルド殿下達の視点では、王道の乙女ゲームやざまぁ作品のような物語が展開されています。
一方、フィオナ達はその世界で生きるモブです。
ざまぁ作品ではあまり拾われない、「世界の常識的に考えて、それはおかしくない?」という部分にひっそりツッコミを入れながら、自分達の日常を過ごしていました。
モブだから出しゃばることもしません。
勝手に話が進んで、勝手に決着していきます。
けれど、モブにもそれぞれの人生があります。
フィオナ達にとっては、王族の婚約問題よりも、友達と過ごす時間や、学園での行事、領地のこと、そしてお互いのこと。
そんな日々の一つ一つが大切な物語でした。
評価や感想、リアクションをいただけると大変励みになります。
誤字もこそっと教えていただけると嬉しいです。
最後までここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
もしかしたら、後日談を追加するかもしれません。
その時はまた、フィオナ達の日常を覗きに来ていただけたら嬉しいです。




