天国と地獄
「オレは車椅子で頑張ったから優遇されるんやろ?」
70歳の権蔵さんはあの世のスーツを着た若い案内人達に尋ねた。案内人は5人いて、男3、女2だ
権蔵さんは60歳の時、車に跳ねられて車椅子になった。10年間、車椅子生活をした事になる。案内人の1人が答えた
「まず、この映画をみんなで観ましょう」
スクリーンが上からゆっくり降りて来た。部屋も暗くなる
映像が映ると、見に覚えのある面々が出て来た。若い頃のヤー仲間だ
「権蔵、亡くなったらしいで」
「あいつ、ヘマばっかりして破門になったからな。アホな事したんやろ」
「あいつと一緒の時アホ過ぎてヒヤヒヤしたわ」
「小指取られて辞めてったな」
「やらんで良いケンカするからホンマ嫌やったわ」
「素人にイチャモン付けてな。カタギの人からしたら死んで良かったんちゃう」
呆然とする権蔵さん
続いてコンビニ店員の若い兄ちゃん達が出て来た
「最近チンピラのおっさん来えへんな」
「亡くなったらしいで」
「えっ!ウソやん」
「店長が言ってたわ」
「絶対地獄やん。死後死後ボンバー!」
「なんやそれ(笑)まぁ、カスが灰になったな」
「燃えかすが灰か。上手いな」
権蔵さんは泣きそうである
駅員
「あのエラそうな車椅子のおっさん。亡くなったらしいで」
「マジで!やったぁ!」
「色んな駅で警察沙汰起こして鬱陶しかったな。死んで良かったわ」
「客にどけって言ったりな。あいつがこの世からどいたな」
「この世から戦力外通告やな。東山紀之にナレーションしてもらえや」
権蔵さんは泣き出した。それでも案内人は映像を続けた。
飲食店
「早よせいって言う車椅子のおっちゃん。亡くなったらしいで」
「ホンマに!早よせんで良くなったな」
「警察沙汰になって、客入り悪くなったもんな。疫病神死んで、店に客が戻るかな」
「あいつ死んだし、招き猫置くか」
権蔵さんは震えてる。それでも案内人は続ける
警察官
「車椅子のチンピラ死んだらしいで」
「色んな所で警察沙汰起こした奴やろ。生活保護貰っといて、働く奴によ〜イチャモン付けれるよな。死んで働いてる人らも喜んどるんちゃうか」
「ってかあいつシャブ中やろ」
「生活保護貰って働く奴にイチャモン付けて、国賊シャブ中やな」
案内人は伝える
「大体分かると思うけど、こっち来て」
泣き崩れる権蔵さんを無理やりみんなで起こし、向こうの方に連れてく。権蔵さんは頼み込んだ
「…二階と鳩山おるやんけ!絶対ヤバい所やん!許して下さい!」
そんな言葉は無視して案内人は連れて行く
天国か地獄は神や仏ではなく、周りが決めるのかもしれません




