人間合格
全然冴えない人生だったなぁ…
男はあの世の映画館で自分の人生のハイライトを観て嘆いていた。
モテない人生、ワーキングプア、独身、貧乏、勉強もスポーツも人並みに出来ない。
人生のハイライトを観た後に上映した人が出て来た。その男は水野晴郎にそっくりだった。
「人生は何だった」
「罰ゲームだ」
水野に聞かれた男は即答した。
金持ちが美人と結婚したり、成功者がTVで嬉しそうに話したりするのと自分の冴えない人生を比較し、罰ゲームだと答えた。
「合格だ!」
「えっ!?」
怒られるか説教されると思ってたから意外だった。
「この映画には続きがある」
そう言うと水野は映写室に戻った。
俺は再びスクリーンを観た。部屋は暗くなった。
何でもない俺の日常である。
花に水をやるオレ。犬の散歩をするオレ、亀の水換えをするオレ。
間違った定食持って来られても文句を言わず食べるオレ。
ばあちゃんと談笑するオレ。
バイト先の鈍臭いおっさんに怒らず教えるオレ。
映像はここで途切れた。また場内は明るくなり水野が出て来た。
「こんだけ、他に対して思いやりを持って、報われない!報われようともしない無欲さは人間合格!」
「いや、あの…周りと比べて諦めてただけやし、犬の散歩とかは飼い主として当然…」
「いやいや、中々いないよ。君みたいな男は!あんだけ善行して見返りを求めないのは珍しい!貧乏なままだったのがスゴイ!」
「…あの人間合格したらどうなるんですか?」
「まぁ、来世で花を咲かせたら来来世で神よ。神にリーチがかかったな!しかも、君は善行ポイントほぼ使ってないから来世激アツのタンポポリーチや!一番咲きやすい!」
水野はパチンコ好きなのか?
さらに水野曰く
「来世は花なんて普通人間には出来ないよ。君スゴイわ」
かくして、俺はタンポポになった。水がなくても土がなくても勝手に咲くタンポポだ。
タンポポって周りにめっちゃあるよな?
どんだけ神様候補が多いんだ?
予定通り花を咲かせたオレは、もう一度水野に会った。
「来世は神さまですよね?どうすれば良いんだ?」
「2択ある。神さまになるか前世リベンジするか?」
「えっ?」
「前世の冴えなかった人生をもう一度やり直す。今度は勉強頑張れば良い。神様よりオススメ」
「もっかいあの人生出来るのか?」
「あぁ、リベンジチャンスよ」
「それでお願いします!」
かくして男は前世の冴えない人間に戻った。神さま水野は苦笑い
大体の人間はそうだ。タンポポを咲かすまでは行く。その後なんだよな、欲に負けてリベンジしに行く。
結局冴えない人生なのに…




