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パラサイト戦記  作者: 五月雨拳人
第二章 変わる目的と、その意義
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第八十七話 採用!

 ゼンの腕前は確かだが、さすがに俺たちだけでは雇うかどうかは決められない。なのでホーリーとルーンを交えてさらに詳しい話を訊くために、ゼンを屋敷に招いた。

「あんた、荷物はそれだけか?」

 見れば、ゼンの荷物はそう大きくもない背負い袋一つだけだった。

「修行を兼ねていますので、荷物はこれで充分なのですよ。それに、元より男の一人旅。着の身着のままだとて、誰に気を使う必要がありましょうか」

「なるほど。違いない」

 俺が頷くと、ゼンは「でしょ?」とにっこり笑う。

 そうこうしているうちに屋敷に到着。まだ腹が痛そうなコングに馬を任せ、俺はゼンを案内して屋敷の中に入る。


「ゼンと申します。何の変哲もない旅の僧侶でございます」

「だから、そういうのは自分で言わないんだよ……」

 応接室に全員集まると、改めてゼンは自己紹介をした。

「……で、自分を傭兵として雇えって? 僧侶なのに?」

 俺から話を聞いて、ルーンがあからさまに怪しいという目つきでゼンを値踏みする。

「随分と自信満々だけど、あんたほんとに強いの?」

「拙僧の力量に関しては、既に証明済みかと思いますが」

「そうなの?」

 そう言ってルーンがこっちを見ると、コングはバツが悪そうにその巨体を縮めた。

「素手の一撃でコングを沈めたのは見事だった。だがそれと戦での実力は別の問題だ」

「え!? コング負けたの? しかも素手の相手に一発で!?」

 うひゃ、と最高のおもちゃを見つけたような顔と声でルーンに見られ、コングはさらに小さくなる。

「うるせえ。相手が素手だったから油断したんだよ……」

 そう、所詮は素手だ。戦場で武器を持った相手に、果たしてどこまで通用するのやら。

「今さら言うのも遅いですが、別に貴方は武器を使っても良かったのですよ」

「どういう事だ?」カチン、と音がしそうなコング。

「徒手空拳なのは拙僧の都合。だが素手にて武器を持った相手を制圧する事こそ、拙僧の最も得意とする事です。恥ずかしながら、読経よりも」

「つまり、あんたは戦場でも素手で戦うってのか?」

「左様。お疑いなら、もう一度お試しになっても結構ですよ。勿論、今度は武器を使って」

 ゼンの一言で、応接室の空気がきんと冷える。そして凍てついた空気を溶かす物凄い熱が、コングの身体から発せられていた。

 いくら調度品の無い質素な応接室でも、ここでおっ始められると物が壊れる。どうにかこの場を諌めないと。そう俺が考えていると、

「じゃあ、見せてもらいましょうよ」

 ホーリーの朗らかな声が響いた。そしてその一言だけで、室内の空気が一発で清浄化された。

「ゼンさんは傭兵さんもやってるんでしたよね? だったら今の言葉、今度の戦で証明してもらいましょうよ」

 名案でしょ、とホーリーが胸の前でぽんと両手を合わせると、胸がゆさっと揺れた。

「では、雇っていただけると?」

 俺は少し考え、コングたちのほうを見る。

 コングは苦虫を一樽分噛み潰したような顔をしているが、首を横に振る事はしなかった。ルーンはにやにやしている。ホーリーは言わずもがなだ。

 決まったな。どうせ戦力はひとりでも多いほうがいいんだ。

「わかった。あんたを雇おう」

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