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33、実央の物語

32の実央視点です

『どうしたの実央ちゃん?元気ないね』



早百合ちゃんだ。この子はいつも突然に話しかけてくるの。ま、すごく鋭いからあたしが今悩み中なのを見て話しかけてきたんだろうけどさ。その点では早百合ちゃんにはすっごく感謝してる。



『あたし・・・圭佑の負担になってるんじゃないかなって、最近思うんだ。早百合ちゃん、あたしどうしたらいいかな・・・?』



圭佑は見ず知らずだったあたしを家に迎えてくれたし、優しくしてくれるし、いつも側にいてくれる。でもあたしは、そんな圭佑に何の恩返しもしてあげられない。それじゃあただ圭佑にくっついてるだけなんだよ・・・。そんな関係なんてあたしは納得できない。



そんなあたしに早百合ちゃんは言った。



『じゃあさ~、今度のバレンタインデーにチョコ作って渡そうよ!あたしも直樹にあげるつもりだし、一緒にどう?』


『なるほど・・・。そうだね、それなら時季的にもあってるし。ありがと、早百合ちゃん!がんばろうね!』


『じゃあ放課後、あたしんちで練習も兼ねて構想とか考えよ!実央ちゃんの腕前も気になるしね♪』



こうしてあたしのチョコレート作りの修行が始まった!


―――――――――――――――


『ん~・・・。実央ちゃん、ちゃんと「砂糖」入れたよね??』


『そのはずなんだけど・・・なんでだろう・・・』





『『なんでこんなに「塩」辛くなるんだろう・・・』』





チョコ作りは一向に上手くいっていなかった。あたしの作るチョコは、ドロドロになったり、辛くなったり、酸っぱくなったり、とにかく原因不明の失敗ばかりが続いていた。料理には自信があったんだけどなぁ・・・。これじゃバレンタインに間に合わないよ。

一旦チョコを諦めて、ケーキやクッキーにも挑戦してみたけど、結果は似たり寄ったりでケーキは膨らまず、クッキーはボロボロ。あたし才能ないのかな・・・。

そんなこんなでチョコが一番マシだから繰り返し挑戦。



『とりあえず形は置いといて味からね。実央ちゃんの味の秘密を徹底的に探らなくっちゃ』



「味の秘密」ってなんだかカッコイイけどあたしの場合は原因を突き止める意味だからあんまり嬉しくないね。



『そういえば早百合ちゃんのチョコは?もう作ってあるの?』


『ううん、あたしの分は前日に実央ちゃんと一緒に作るよ。この前の練習では上手くいったしね』


『そっか。ごめんね、あたしが下手なせいで巻き込んじゃって』



早百合ちゃんはふるふると首を横に振って気さくに答えてくれた。



『いいのよ、友達じゃない。困ってるときは全力で助けるのが友達ってもんよ』



友達・・・かぁ。嬉しいな。友達がいた記憶なんてなかったから。早百合ちゃんはあたしのことちゃんと友達だって認めてくれてたんだね。

手伝ってくれてる早百合ちゃんのためにも頑張らなくっちゃ!!



『んん!しょっぱいっ!』


―――――――――――――――


『実央ちゃーん!』



今日も早百合ちゃんの家でチョコ作り。相変わらず全然上手くいかなくてここんとこ毎日通いつめてる。もちろん圭佑には秘密にしてあるし、圭佑が気付いた様子もないみたい。でもホントはちょっとくらい気付いてもいいんじゃないかな・・・なんて思ったり。圭佑にぶいけどね。



『晩飯は作って置いとけばいいんだろ?』


『うん!ありがと!じゃあね~』



でも。そんな期待しなくてもいいかな。

あたしを信じて帰りを待っててくれる、純粋な圭佑が大好きなんだから・・・///

あ!こんなこと圭佑に言っちゃだめだよっ!!



『なーににやけちゃってんのかなぁ~?』


『っ!!な、なんでもないよ!』



学校の下足室まで来たところで早百合ちゃんがそんなことを言ってきた。もう・・・いっつも油断したところをついてくるんだから。



『顔赤いんだけどな~!』


『っもう!やめてよぅ!』


―――――――――――――――


『で・・・できた・・・の?』


『そ・・・そうね・・・完成ね』



キッチンのテーブルには完成したハート型のチョコレート。ちょっとベタだけど、初めて作ったにしては上出来だね(初めてとは言っても、もう20個ほど失敗作は作ったけど・・・)。

あとは明日、圭佑に渡すだけ・・・。

作ったチョコレートを冷蔵庫にしまい、片付けを始める。



『じゃ、明日は計画通りにね!あたしは直樹を呼び出すから実央ちゃんはその後にね』


『おっけ!圭佑よろこんでくれるかなあ・・・!!』


『あいつならきっと泣いて悦ぶよ』



なんか字が違う気がするけど・・・。でも・・・、明日が楽しみだなぁ・・・!


―――――――――――――――


気合を入れて仕上げてたせいで帰りが遅くなっちゃった。



『実央。好きな人でもできたのか』


『ちょっとちょっと・・・そんなわけないよ!あたしが好きなのは圭佑だけだよ?』



まさか圭佑がこんなこと言ってくるなんて思いもしなかった・・・。ここまでくるとちょっと呆れてくるわね・・・。明日で挽回しなくちゃ。




『・・・あたし疲れたから寝るね。おやすみ』



ほんと鈍感。


―――――――――――――――


なんでだろ。いつも一緒にいるのにドキドキするよ・・・。バレンタインデーにこんな魔力があったなんて。

教室の扉の前でもう小一時間立ち尽くしてた。用事があるって言って出てきたけど流石にもう待たせすぎだよね・・・。行かなきゃ。そうよ、いつものようにすればいいんだから!



『お、やっときたか。長かったな。いつものやつじゃなかったみたいだけど』



圭佑はいつもの笑顔で迎えてくれた。なんだかホッとして、緊張がほぐれていく。これならいけそう。



『その・・・ごめんね、ここ最近一緒にいられなくて。こ、これは、そのお詫び・・・!』


『別に、作れなかったわけじゃないからねっ!お菓子作りだけ苦手だなんてことないもん!』



後ろ手に持っていたチョコレートを手渡す。圭佑のために時間をかけて作ったチョコ。素直には言えなかったけど、なんだかやりきった・・・と思う!



『ありがとな・・・実央』



圭佑は頭を撫でてくれた。優しくて、頼りになって、カッコイイ圭佑・・・。


―――――――――――――――


『とけるぅ~~』


『あたしが嫁であることに感謝しなさいな。実央ちゃんのは甘さの概念を失くす処置をしたけど、あたしのはそれに対抗して激甘にしてあるのよ!』


『早百合ぃ~ほっぺが落ちるほどあまいよ~~~~』


『さてと・・・あっちも終わったかな。ほら、帰るわよ。今までお預けした分、今日はサービスしてあげるから☆』

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