34、どこ行きたい?
『どう?ちゃんと実央ちゃんからチョコもらえた?』
『おう、もらえたぜ。お前だろ、実央を差し向けたのは?』
実央からチョコレートをもらった翌日の朝、教室で早百合が話しかけてきた。そういえば実央はいつも早百合とチョコを作っていたんだった。いかにもお菓子作りが苦手な様子を見せていた実央だったが、その真偽を確かめるべく早百合に訊ねた。
『あぁ、実央ちゃんね、いくら練習しても甘いチョコにならなくってねー。だから甘さは諦めてビター系にしたんだよ。まったく苦労させられたわよ』
なるほど、あの苦さにそんな理由があったとはな。でもビターチョコってたまに食べると美味いよな、実央のつくったやつなら尚更だけど。マジ美味かったぜ。
『早百合は直樹にあげたのか?呼び出してたみたいだけど。あいつビクビクしてたぜ』
『もちろんあげたわよ!でもビクビクしてたってどういうこと?あたしなんかしたっけな?』
そんなこんなで話していると直樹がいつもの乱入。めちゃくちゃ焦ってるけど、早百合が俺に取られるとか思ってるんだろうか?俺には実央という愛でることに人生を捧げてもいい嫁がいるというのに。こいつも人間不信になってきているんだな。・・・ところで今日の俺、なんかデレてないか?
『早百合~俺は一生お前についてくぜー!!』
『はいはいわかったからちょっと落ち着きなさいな』
直樹は早百合になだめられている。こいつ絶対数年後には尻にしかれてるだろうなと思う。M気質でもあるのか?早百合はたぶん、というか絶対Sだけど。そういう点では一番合ってるのかもしれないな、この二人は。
俺と実央は・・・無いな。こんな特殊な関係ではないだろ。あったら困る。実央がSだなんて想像もしたくないぜ。でもMならいいかも。
『あんたも実央ちゃんにお返ししなきゃだめよ?それがたとえ恋人同士じゃなくても礼儀ってもんでしょ』
『あ、そっかホワイトデーとかあったな。今まで気にしたことなかったから忘れてた。う〜ん・・・そういや俺もお菓子とかは作ったことないな』
実央が長い時間をかけて最高のバレンタインを用意してくれたんだからな。俺もそれ相応のお返しをしなくちゃいけないんだが、ホワイトデーといったらやっぱりチョコレートに対抗してクッキーとかだよな・・・。買って渡すのもアレだし、ここは手作りってことになるのか?
『わかってないわねー。プレゼントするものは形があるものとはかぎらないわよ?あんた達一緒にすんでるくせに全然デートしないって聞いたわよ?』
『あ・・・デートか。いつも一緒に居るから思いつきもしなかったな。しかしいきなりそう言われても今の時期どこに行ったらいいか・・・早百合、どこかいいとこあるか?』
『それは男の考えることでしょ!でも行き先だけ先に考えるなら実央ちゃんにどこか行きたい場所がないか聴いてみるのもいいかもね。サプライズではなくなるけど、今の実央ちゃんならあんたと出かけられるだけで嬉しいと思うわ』
なるほど・・・。じゃあ学校ではちょっと聴きづらいから家に帰ってから聴いてみるか。どこがいいかな、場所が決まったら予定も作らなきゃな。
デートか・・・、いつ以来だっけ?
そんな俺の耳に早百合と直樹の会話が飛び込む。
『ねえ直樹、どう思う?実央ちゃんってサプライズに喜ぶ方かな?』
『女の子ってだいたいサプライズ好きなんじゃないのか?』
サプライズか・・・そうだ、あれをサプライズにしよう。前からやってみたかったことだ。
でもこれはこいつらには内緒にしておくか。実行したあとの反応が楽しみだし、なによりこれだけは自分でやりたいしな。
俺が脳内で策を練っていると、職員室まで行っていた実央が教室に帰ってきた。とっさに早百合たちに『内緒だぞ』と合図を送り、情報の漏洩を防ぐ。
『実央、用事は終わったのか?』
『うん!先生から呼び出された割にはそんなに大した用でもなかったよ』
実央はやっと解放されたからか、はたまた俺の顔が見られてうれしいのか、笑顔を振り撒いている。この笑顔を見るとどうしてもやりたくなっちゃうんだよなー。
もきゅもきゅ。
『にゃふー///』
キーンコーンカーンコーン。
『ほら!席つけー!』
担任である。いつの間にか始業チャイムが鳴っていたようだ。でも俺はポニテを放したくない!俺は実央をもきゅもきゅしていたいんだ!!!
というわけで提案。
『せんせー席替えとか出来ないっすか?俺この席じゃ授業に集中できる気しないんですけど』
『そんな面倒くさいことはせんぞ。替えた後集中できる保障なんかないだろ。とにかく席に着け。ショートHR始めるぞ』
ハイ却下ー。ちっ、実央の後ろになるように細工しようと思ったけどだめだったか。あーあ、俺のもきゅもきゅ。まあいいか、放課後ならいくらでも出来るし。
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キーンコーンカーンコーン。
『けーいすけっ!帰ろ!・・・って、どうしたの・・・!?』
『フーッ、フーッ、フーッ・・・も・・・きゅ・・・不足・・・ッ!!』
だめだ・・・ここまで深刻な禁断症状がでるとは・・・!今すぐにでももきゅもきゅしないと精神がもたないっ!
もきゅもきゅ。
何はともあれ帰宅完了。徒歩20分間、一時もポニーテールを離すことがなかった俺は、もう中毒と言っても過言ではない。それほどあの行動には依存性があるのだ。何と言ってもあの手ざわr(割愛)ということであのもきゅもきゅは世界を救うのだ。
えっと・・・よく考えたらサブタイトルからかなり逸れてたな。これでは読者に怒られる。のろけてばかりじゃだめだな。
じゃあまずはデート場所だな。
『な、実央。昨日のお返しにさ、今度の日曜にデートしようか』
『エ?ほんとっ?!やったあ!圭佑から誘ってくれるなんてうれしーなっ』
『どっか行きたい所ってあったりする?俺あんまりデートスポット知らないんだけど・・・』
『そりゃいっぱいあるよ!遊園地で圭佑と一日中遊んでみたいし、見に行きたい映画あるし、買い物もしたいし、あっでも水族館も行ってみたいなぁ〜』
確かに行きたい所は多いみたいだな。まぁデートらしいデートをしたことないから仕方ないな。
実央は突然の非日常に目をキラキラさせて話している。実は俺も実央とのデートがかなり楽しみだったりするのだが。
『じゃあ、一日で回れるだけ回ってみるか。俺も実央と色んなことしたいし』
そうと決まれば日曜までに急いで準備しなければ。アレのこともあるし、のんびりしてられないな。
『実央、ちょっと手だして』
『ん?こう?どしたの?』
実央の小さな手をとり、指を絡めたりしながら感触を確かめる。言っておくが俺は変態ではないぞ。ちゃんと意味があるんだ。
『いや、なんでもないよ。ありがと』
さってと、予定はどうするかな・・・。




