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29、らしいこと?

ささいな「俺イジメ」のあと、家に戻った俺たちは、夕飯の時間まで適当に好きなことをしてすごした。夕飯の支度は料理が得意な実央と早百合がすることになった。実央の腕は確かだから手伝わなくても問題ないだろう。



俺はリビングでテレビを見ている。いつもこの時間はそんなに面白い番組は無いが、時期が時期なので、どのチャンネルも特番ばかりだ。カチカチとリモコンをいじってあてもなく色んな番組を見る。



『なぁ。お前はなんで実央ちゃんと付き合ってるんだ?』



唐突に直樹が尋ねてくる。直樹はぼぅっとテレビを眺めていてつまらなさそうだった。



『なんで・・・って、そんなこと言われてもなぁ・・・。実央は俺の家族みたいなものだし。あ、でも恋人として見てないわけじゃないんだけど、ん〜何て言ったらいいかな・・・』



俺の場合、実央との馴れ初めが唐突すぎて説明しようがない。その上、状況が普通の高校生とは掛け離れすぎている。いきなり現れて『あなた嫁になる』なんてことが日常的にあったら世の中がリア充で溢れかえるだろうよ。



俺は言葉を濁し、低く唸りながらいい表現がないかどうか考える。直樹は相変わらず上の空でもう一度俺に問う。



『実央ちゃんのこと好きじゃないのか?』


『そんな訳あるかよ。実央のことは大好きだよ。他に何もいらないくらいな』



柄にもなく恥ずかしい台詞だった。かつて冷静に振る舞っていた俺が、今では実央に関することなら熱くなったりデレデレしたりと、ありえないくらい感情的になっている。だからどんなに恥ずかしい台詞でもスラスラと言える。何より実央を愛してるっていうことには確信を持てる。



『だいたい、好きでもないかぎり知らない女の子を家に居座らせるかよ』



俺はこの言葉に少しの矛盾を感じた。言う通りならば、なぜ実央が現れたときに追い出さなかったのか。

しかしその矛盾はすぐに納得することができた。だれが聞いても矛盾だらけだが、俺はそれでいいと思っている。だってそのおかげで大好きな実央が傍にいるのだから。



俺は本能的に実央のことを守ってやりたいと思っていたはずだ。



『俺は実央が悲しまないようにずっと守ってやりたいと思ってる。実央はもう一人にしない、あいつは一人で生きていけるほど強くないのに、一人でいるのが長すぎたんだ。だから俺が傍にいてやるんだ』



俺の話を聞いていた直樹は、安心したように笑みをこぼす。どうやら実央の気持ちを俺が台なしにしていないか心配だったようだ。



『その言葉を聞けてよかったよ。お前もちゃんと実央ちゃんのこと見てるんだな。俺は実央ちゃんがお前にゾッコンなのは見抜いてたぜ』



何を今さら。



『恋人らしいこと、ちゃんとしてやれよ?実央ちゃんが誘ってくるまえにお前からな』


『らしいこと??』


『だからさ(コソコソ)・・・』



首を傾げる俺に直樹が耳打ちする。

その内容を聞いてすぐ後にリビングに入ってきた実央と目が合った俺は、ひたすら赤面するしかなかったのだった。



実央は、なんのこと?と首を傾げていた。

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