26、みみ!ミミ!耳いいぃ!!
『ふぁぁ・・・』
『おっ、実央も起きたか。おはよう』
『おはよ〜圭佑』
時刻は既に10時半。長期休暇になると必ずと言ってもいいくらい起きる時間が遅くなる。それは今年も変わらなかった。
『朝ごはん作ろうか?』
実央が聞いてきたが、そんなに腹も減ってないし、早百合や直樹がまだ起きていないようなので昼まで待つことにした。
実央は眠たそうな目をこすりながらキッチンの冷蔵庫へ向かい、中から牛乳を取り出す。新しい紙パックを開け、コップには注がずにそのままで喉を鳴らしながら半分ほど飲んだ。
『ぷはっ』っ息づきをする様子がなんとも可愛らしい。
『圭佑も飲む?』
『飲む』
俺は実央から牛乳を受け取り、一気に飲み干した。
『あたしお風呂に入ってくるね。昨日は入り損ねちゃったから・・・』
実央はそう言って風呂場へ行った。その後すぐに早百合が顔を出した。
『おはよ。あれ、実央ちゃんは起きてなかった?』
『実央なら風呂に入ってるよ』
『そう。なら、あたしも入ってこようかしら』
早百合も風呂場へ向かった。うちの風呂は広いから問題無く入れるだろう。直樹はまだ起きてこなかった。
俺はなにもせずに、ただぼうっと窓の外を眺める。天気は晴れだが部屋の中でも十分に寒かった。
『・・・俺も風呂入りてぇな』
そう思った矢先に風呂場から二人がはしゃぐ声が聞こえてくる。
なんてうらやま・・・ゲフンゲフン。楽しそうだな。
直樹が起きてきた。その顔は、風呂場の声の影響であからさまに変形していた。直樹を指差して俺は言う。
『妄想禁止っ!!』
『なんでだよ?!』
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風呂から上がった実央と早百合は部屋着だった。今日は何もすることがないし、どこにも行く宛てがない。
『たまには朝風呂もいいもんね!』
だからといって風呂上がりにビールはどうでしょう、早百合さん?『ぷっはあ〜〜!』とオヤジみたいな声をだして、もはやキャラが壊れている。
『あっ、そっか、牛乳はさっき飲んじゃったんだ。買ってこなくちゃ』
実央はまた牛乳を飲むつもりだったのか。まあビールよりは定番だがな。
さてと、俺も風呂に入ろう。風呂場へ向かう俺に早百合がすれ違い様に耳打ちした。
『実央ちゃんっていい乳してるのね(笑)』
なっ!このオヤジめ!
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『ぷはっ、うまい!』
風呂から上がるまでの十数分の間に何があったんだ・・・。リビングでは俺を除く全員が酒を飲んでいた。もちろん実央もな。
テンションだけならもはや夜中だな。
ちなみに実央が梅酒、直樹がビール、早百合が日本酒だった。
『お前ら、酒好きだな』
『いいじゃない、休みの日くらい!圭佑も飲みなよ』
ほろ酔い状態の早百合に酒を押し付けられる。正直、一日がぐだぐだで終わることは予想できたが、どうせ今既にぐだってるよな。というわけで俺は冷蔵庫にあった缶ビールを一本取り出した。
『てか、なんでうちにこんなに酒があるんだ?』
『あぁ、あたしん家が酒屋でね。ちょっとぱちってきた』
なんと、早百合の意外な家業が発覚!なるほど、学生のくせに日本酒が好きなのも納得がいく。しかしこの量で「ちょっと」とはな・・・。
『圭佑〜〜っ!』
『ぐはっ?!』
実央がのしかかるように抱き着いてきた。軽くてよかった・・・。じゃなかったらこの勢いなら押し潰されて伸びていただろうな。
実央は嬉しそうに耳や尻尾を動かしている。そう、まるで猫のように。
『え、尻尾・・・?!』
『圭佑♪にゃ〜ん』
『実央・・・その耳とか尻尾とかどうしたんだ?』
いつの間にか実央に猫の耳と尻尾が生えていた。俺の問いには早百合が答える。
『あぁそれね、なんか似合いそうだなーって思ったから持ってきたやつを着けてみたの。実央ちゃんノリノリだよ』
全く・・・人の嫁で遊ぶなよな。
『圭佑ぇん・・・ぺろぺろ』
『わっ!実央!やめろって』
実央が突然俺の顔を舐めてきた。愛情表現のつもりだろうか・・・。
『や、め、ろ、っ、て、ば・・・!!!』
引きはがそうとした瞬間、実央の口が俺の口を塞ぐ。そしてその勢いで押し倒されてしまった。
『〜〜〜〜っ!』
カシャッ
『〜〜〜?!!』
必死に抵抗する中で俺は聞きたくない効果音を聞いてしまった。
『ぷはっ!直樹てめぇ〜〜〜!!!』
『はっはっは!キスシーン戴いたぜ!』
『返せ!消せ!今すぐにだ!!』
『圭佑っ』
不意に早百合に呼ばれた。何かと思って振り向くと・・・
『あたしはムービーよ!どやぁ!』
『!!!!!!!』
その後、部屋の中であるにも関わらず2時間に渡る昼越しの攻防戦が続いたことは、言うまでもない。




