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15、実央の笑顔

文化祭当日。



実央はめずらしく緊張しているようだった。楽屋内で立ったり座ったりと落ち着かない様子だ。



『あー、どうしよう・・・どうしよう』



あ、独り言まで始まった。



『実央。ちょいちょい』


『? なぁに?』


『深呼吸〜〜スーーハーー』


『すぅ〜はぁ〜』


『落ち着いたか?』



実央の頭をなでてやる。さっきとは違うまったりした表情で、『ふにゃぁ』などと言っている。



『お前は猫か。それより、もうそろそろスタンバイの時間だろ?』


『わ、わ、ほんとだ!着替えなきゃ。じゃあまたね、圭佑!』



実央はいつものポニーテールを揺らしながら部屋を出て行った。舞台では髪下ろすんだよなぁ。ポニーテール好きにとっては少し残念でもある。



『さてと、俺も着替えるか』


―――――――――――――――


舞台上でのことはあまり覚えていない。



ただ、観客は実央の迫真の演技に圧倒されていた。正直、俺も見とれてしまって台詞がいくつか飛んでしまい、下手なアドリブでカバーした。



芝居が終わっても拍手がなりやむことはなく、急遽カーテンコールもした。



俺たちの作った演劇は最高のできだった。


―――――――――――――――


『お、すごい量の差し入れだな』



楽屋にもどると袋いっぱいに詰められた差し入れがたくさんあった。



『わー!すごいすごい!だれがこんなにくれたんだろ?』


『クラスの仲間や見てた人たちの気持ちだよ。実央のこと見ててくれた人がこんなにいたんだな』



実央は袋の中からみつけたプリンを見て満面の笑みを浮かべていた。



俺はこの笑顔が見たかった。心から喜ぶ実央の笑顔。昔の記憶がなくたって、今が楽しければ満たされるはずだ。思い出はこれから作ればいい。



『・・・で、俺のはないのか?』


『・・・そうみたいだね(笑)』



おいおい、クラスメートからもきてないのか。俺忘れられてるのかな・・・。



『よし!今夜は――『実央ちゃーーーん!!』』



不意に早百合が乱入。このやろー俺の台詞に重ねやがったな。



『実央ちゃん!これから打ち上げいくわよ!今回の主役は実央ちゃんだから絶対よ』



そう言って実央"だけ"を引っ張って行ってしまった。一人残された俺・・・。



・・・やっぱり俺忘れられてるな。



俺は早百合たちを追って打ち上げに行くことにした。


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