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魔法と旅  作者: かも
一章 ランジ大陸
8/16

八話 酒

6日目

今日は珍しくすっと起きれた。

外を見るとまだ夜か朝か微妙な時間帯だった。

ガザンとエマの様子を見てみるとまだ寝ていた。

なので散歩に出掛けよう。

昨日は阻止されてしまったので今日はのびのびと行かせてもらおう。

準備体操をして体の準備は万端。

ローブを羽織り外に出た。


「…さむっ」


ここら辺は暖かいと聞いていたがやはりこの時間帯はまだ寒い。

そう思いながら町を歩いていると学生を見つけた。

学生はローブを羽織っており、恐らくだが魔法学校の生徒だ。

魔道書を持ってどこかに急いでいるようだ。

自分も学校に行っていたことを思い出す。

行っていたと言っても二年ぐらいで不登校になってしまったが。

そう考えればうちの親はかなりやさしかった。

自分が不登校になった後でも変わらず接してくれていた。

やりたいことにも挑戦させてくれた。

それが今これか。

………


「…ぬわあああっ」


手で頭上を振り払う。

嫌な考えがよぎってしまった。

…やっぱり宿に戻ろう。

…朝なんて嫌いだ。


宿に戻るとエマはまだ寝ていたがガザンは起きて準備体操をしていた。


「…この寝坊助」


そういえばガザンの過去の話は1度も聞いたことがない。

狩りが得意な村で育ち、料理ができ、戦闘ができ、手先がまあまあ器用なことしか知らない。

彼の今しか知らない。

気になる、過去の彼はどんな人でどんな人生を送ってきたのか気になってしまう。

…今聞くのは止めておこう。

自分から言わないってことはもしかしたら聞かれたくないことなのかもしれない。

………


「…ふぅ」


またネガティブな状態に入りそうだった。

旅を初めてから昨日までこんなことは1度もなかったのにどうして急にまた出てきたんだ。

手が震えている、自分の心の弱さが嫌になる。

深呼吸だ、深呼吸をするんだ。


「すぅ…はぁ…すぅ…はぁ…」


なにか別のことを考えよう。


---


「ふぅ…ふぅ…ふぅ…ふぅ…」


結論として筋トレをしている。

今は腕立て伏せ中だ。

体を動かすことによって脳をそちらに集中させ考えることに力を向けさせないようにした。

結果としては大成功。

でこれ多分筋肉痛になるやつだ。


「……うわっ…なにしてんの人の部屋で…」


筋トレに夢中になっていてエマが起きていたことに気が付かなかった。

筋トレを中断する。


「おはようエマ良い朝だね」

「うんおはよう、私は最悪の朝を今更新したよ」


タオルで汗を拭う。

朝に体を動かすのは案外気持ちが良いことが分かった。

これからは早く起きたら筋トレとかしておこう。


「あの汗くさいし、着替えるから早く出ていってくれる?」

「………はい」


とぼとぼと部屋を後にした。


汗を拭き服を着替え荷物を纏めた。

ガザンとエマは既に宿を後にしていた。

慌てて追いかけるように町の門に向かう。


「はぁ…はぁ…二人とも…早い…」

「キミが早く起きたくせにのんびりしてるからだよ」


その後町を出た。

相変わらず町の外は緑かぽつんと一軒家があるだけで代わり映えしない。

たまに商人とすれ違うだけでなにも変わらないただただのんびりと歩いている。


---


そうして1ヶ月ほど歩きようやくナイス国を抜けガン国にたどり着いた。

1ヶ月ずっとただの平原を歩き、夜になるとテントを立て眠る。

そんなことを繰り返していた。

だが意外にも飽きは来ない。

むしろ普段話せないことも話せたり、普段していないことをして中々に良い時間を過ごしていたと思う。

ガザンには食べられる木の実やキノコを教えてもらい、エマからは剣術の特訓相手にされたりした。

中々に有意義だった。

今はたまたま見つけた湖で水浴びをしている。


「……ふぅぅ」

「キミあんまりオッサンみたいな声出さない方がいいよ、年頃の女の子が、えいっ」

「わっ!」


気持ちよく水に浸かっていると

水を顔に掛けられた。

やり返さなければ。


「ウォーターボール」


無数の水の塊をエマに向かって放った。

エマはその全てを体に当たる寸前に手で弾いた。


「ふふんっ、まだまだだね」


ドヤ顔をこちらに見せつけてくる。

完全にこちらに他の手はないと思っている顔だ。

その油断が命取りだ。


「…隙あり!」


エマに飛び付いた。

エマは突然のことで体勢が崩れ尻餅をついた。


「ぶー」


そして口の中に含んだ水を顔にぶっかけた。


「ふっ…隙あり」


かっこよく決まったと得意気になっていると。

エマが立ち上がりなにやら笑っている。

顔は笑っているのだが怖い、明らかになにかが違う。

なにかやられる。

身構えていると


「ふんっ」


足を掴まれ尻餅をついた。

エマは笑顔を崩さず

そのまま湖の端から端まで引きずられた。


「ごぼ…ごぼ…ごぼごぼ」


い、息が…で……


---


目を覚ますとガザンに説教されているエマがいた。

だがエマは全然効いていない様子だった。

不満げな顔で全部受け流している。

するとガザンがカバンからハンマーを取り出しエマに視線を向けた。

それを見たエマは即座に正座になり態度を改めていた。

この光景にも慣れてきた。

今僕はテキパキと撤収作業を進めている。

1ヶ月もしているおかげか片付けるのも早くなり旅慣れしてきたなと実感が沸いている。

そうしてガザンの説教は撤収作業が終わるまで続いていた。


「ひぇぇ……」


エマは泣く寸前まで説教されていたらしく進む前からもう既に満身創痍になっている。


「おーいエマ立てる?」

「足痺れた…立てない…おぶって」


なんと情けない。

童話のエルフは聡明で知的な種族だったが、エマは全く似ていない。

身体的特徴以外全部がそこら辺の六歳児と変わらないぐらいだ。

…だがそういえばエルフは寿命が長かったはず、その分精神の成熟も時間がかかるのではないか。

……まあ今こんな考察したってなんの役に立つのかわからないまた後にしよう。

エマをおぶりガザンの後をついていく。

エマのあの出会ったときのクールな感じはどこにいったのやら

今ではもう


「キミ遅いガザンに置いてかれちゃう早く早く」


なんて子供のように急かしながら髪の毛を引っ張ってくる。


「はいはい、急ぐ急ぐ」


---


そんなこんなで街にまで辿り着いた。

ガン国の街はナイス国とは比べ物にならないほどでかく、街の中心には一際目立つ城が建っている。


「あ、あのガザンさんあの城はなんですか?」

「あれか?あれは恐らくだが将軍の城だな」


おお、流石将軍こんな立派な城に住んでいるなんて。

目を輝かせながらエマと僕が見ていると


「…おい、あそこには絶対に近づくなよ、なにがあろうとも」

「…はい」


その後街を見て回ろうしたらガザンに止められた。


「待て、今日はこの街で泊まる気はない、このまま街を抜けて次の目的地に行く、わかったな?」

「…わかりました」

「えー…この街結構楽しそうなのにー」


エマがぶーぶーと文句を言いながら後ろをついてきている。

それにしてもなにかガザンは急いでいるような気がする。

その理由がなんなのかはわからないがこんなに苛立ちを隠せていないガザンは初めて見た。


そうして入ってきた門から反対側の門につき街を後にしようとしていると

ふいに後ろから声が聞こえた。


「……ガザン!」


その声を聞きガザンが一瞬体がビクッとしていた。

顔を真っ青にし振り返った。

そこには袴を着て飄々とした雰囲気の男がいた。


「やあやあ久しいな、十年ぶりか、なあガザン」

「…俺はお前なんて知らない」

「心外だなあ、元旅仲間に向かってそんなこと言っちゃう?てかまだ根に持ってるんだね」

「当たり前だ」


震える拳を握りしめなんとかガザンは自制している。

顔からは今にも殴り掛かりそうな気迫が溢れ出ている。

謎の男が袴の胸元からなにかを取り出した。

出てきたのは僕にはよくわからないがラベルが金ぴかで高そうな酒だった。


「……お前これ」


ガザンの目の色が変わった。

先ほどとは違い嬉々とした表情に変わっている。

そんな様子を見て謎の男が口を開いた。


「これで許してくれるかい?」

「…はっはっ!なにを言ってる俺は元々怒ってなんかいない!」


謎の男の肩に手を回し酒を受け取っていた。

こいつは本当にさっきとおんなじ人物なのか?


「そうだガザン仲直りのついでに今日は僕の家に泊まって行ったらどうだい?」

「ああ、そうしようお前となら良い酒が飲めるからな!そこの二人も良いか?」

「ああ、人数は多い方が楽しいからね!」


なぜか謎の男の家に泊まることになった。

エマは終始意味がわからないという顔をしていた。

僕もなにが起こっているのか全くわかっていない。


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