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魔法と旅  作者: かも
一章 ランジ大陸
6/16

六話 思い出

とうとうアイス国を抜けナイス国に入った。


最初のほうはまったく景色は変わらずただの平原が続いていた。

しかしある程度歩くと自然以外にも少しずつ家が見えるようになってきた。

ふと大きな影が僕たちを包んだ、見上げてみる。

すると竜が僕たちの頭上を通過していた。

なんだあれはあんなの見たことない。

竜を指差し


「ガザンさん見てください!あんなところに竜がいます!」


竜を見て興奮しない人間なんていてたまるか僕が興奮しているようにエマも同じように鼻息荒く興奮している。


「あー、あれはな、恐らくだが将軍の使い魔だろう」

「将軍?使い魔?」


初めて聞く単語が色々出てきた。

だがなんとなくかっこいいことはわかる。


「そっそれはどういうものなのですか!」

「ごほん…将軍は各大陸にいて全部で七人いる、そしてそいつらは纏めて七大将軍と呼ばれている。この七大将軍の役割はそれぞれが統治している領地の治安を平穏に保つことを仕事にしている。それ以外にももし他の大陸との戦争が始まった場合は戦場で部隊を指揮しなければならない。そしてそんな将軍になれるようなやつはみな強く…変人で厄介なやつばっかりだ。」


ガザンはまるで将軍と嫌な思い出があったのか少し歯切れが悪かった。

まあ旅を長くしているとそういうこともあるのだろう。


「もし将軍と会ったとしても関わるなよ、話しかけられたとしても絶対に関わるな、あいつらは百害あって一利なしだ」


ここまでガザンから念押しに注意されるのは初めての経験だ。

そんなに念押しされると余計に何があったのか気になってしまう。

まあまた今度聞くとしよう。


「で、では次は使い魔を」

「あー…使い魔の話はまた今度にしよう、それよりももうこの辺りの町につきそうだ」


前方に視線を向けると石でできた大きな塀が建っていた。

塀の近くにはこの町の門番と思われる甲冑を着た男が二人いる。

ガザンが僕とエマを制止し一人で門番に話しかけた。


「入っても大丈夫か?」

「ああ、その前に荷物検査をさせてもらうぞ」


鞄の中身やポケットの中を探られ異常がないとわかれば許可証を貰った。

門を通してもらい町の中に入れてもらった。

町の中は賑わってはいなかったが様々な店が並んでいた。

魔道具や魔道書等の魔法関連だったり、武器や防具等が色々と売っていた。

露店ではその土地で有名な料理だったりが売られていた。

見て回るだけでも1日が終わりそうなほど大きい。

とりあえず今日は宿で一夜を明かすことにし、明日の朝まではそれぞれ自由行動をすることになった。

ガザンは魔道具を見に行きエマは町の外に出て剣の特訓をしに行った。

その間僕は


「あ゛ー暇だ゛ー」


僕は町を出て平原に寝転がってなにもしていない。

たまに鞄を開いては定位置に戻る、それを繰り返している。

ふと辺りを見てみる。

辺りでは5歳から6歳くらいの子どもたちが追いかけっこをしている。


「いいなー…楽しそー…僕も久しぶりに遊びたいなー……よし」


僕はその場から立ち上がり子どもたちの方へ駆け寄った。


「あ、あの僕も遊びに入れてくれないかな?」


子供たちは最初びっくりしていたが快く仲間に入れてくれた。

鬼ごっこをすることになった。

子供たちには悪いが旅で鍛えられた僕の体力を舐めないでほしいね。

ボコボコにさせてもらうよ。


「はぁ…はぁ…」

「こいつ俺らより年上なのにめっちゃ体力ねえぞー」


子どもたちの体力を舐めていた。

まさか鬼ごっこで6歳ほどの子供に負けるとは思わなかった。


「…ちょ、ちょっとは手加減してよー」

「よえー年上のくせにだせー」


ガキ大将ぽい子供に煽られる。

今の発言忘れるなよクソガキ、これはまだ第一形態だ。


「今からが…本気だから…」


羽織っていたローブを投げ捨てる。

ウォーミングアップは終わり、さあここからが第2形態、お遊びは終わりだ。

ここからがショーの始まりだ。


「はぁ…はぁ…まってぇ」


負けた。

第2形態を使ったとしても負けてしまった。

そのまま力尽きるように倒れ込んだ。


「姉ちゃん口ほどにもねー」

「くっ…」


腹が立つが敗者に口無し、ここはおとなしく子供たちに煽られるしかない。


「しかも脱いだ割には最初より遅かったし」

「ぐっ…」


このガキ大将!

すると眼鏡の子が


「い、いや今のはきっと手加減してくれてたんだよ、そ、そうじゃないと負けるはずないよ」


……………

カバーしてもらったのだと思うが、それが一番効いた。

僕の中の大事ななにかが崩れた気がした。

立ち上がり服についた汚れを払い、腰に手を当て目の前の子供に指を指し


「そ、そうだし、い、今のはただ手加減しただけだし」


声が震え視線を向けられず目には少し涙が溜まっていたと思う。

僕の人生今までで一番情けない瞬間だと思う。

ローブを拾い子どもたちの方へ向き直し


「つ、次は負けないからー」


そう捨て台詞を残しその場を逃走した。

路地裏に入り


「はぁ…はぁ…」


息を整え状況を整理する。


「ひ、ひいいいいっ」


手で顔を覆ってしまう。

な、情けない子供に負けて捨て台詞を吐いて逃げるなんて。

顔が暑くて今にも破裂しちゃいそうだ。

こんなふうに変な奇声もあげてしまうし。

………いや逆に考えるんだ。

もしかしたら子供たちの目には颯爽と現れ遊んでくれたかっこいいお姉さんに映っていたのでは。

確かにそれはあるかも…でへへ。

そうだきっと僕の考えすぎだ。

そうと決まればもう一度見に行ってみようかな。

先ほどの子どもたちと遊んだ場所に戻った。

木の影に隠れチラッと様子を見てみる。

眼鏡の子が一人でいた。


「おっやっぱりまだいる」


…あれ?でもなにか様子がおかしい。

尻餅をついて怯えているような。

奥になにかいる。

薄目で見てみる。


「っや、やだ…助けて…」


ゴブリンだ。

ゴブリンが子供に襲いかかろうとしている。

すぐに飛び出し子どもの元に駆け寄る。

手に魔力を集め風を纏め刃の形に変える。


「ウィンドスラッシュ」


風の刃がゴブリンの腕に直撃した。

腕はすっぱりと切断され血が飛び散っている。

子供を抱え少し距離を取る。


「えっ…えっ?…」

「大丈夫?怪我はしてない?」

「う、うん…」


ゴブリンは恨めしそうにこちらを睨んでいる。

だがそんなのは関係ない、子供に危害を加えようとしてたんだ同情の余地はない。


「じゃあね、ウィンドスラッシュ」


次は首に目掛けて放った。

風の刃はゴブリンの首を狂いなく捉え切断した。

辺りを確認し他にゴブリンがいないことを確認してから子供をおぶって町まで運んだ。

道の途中で子供は何度も泣き止んで泣き出すを繰り返していた。

町に着いたので子供を下ろした。

宿に帰ろうとしていると子供に服の裾を捕まれ


「あ、あの…一人じゃ怖くて…家まで連れてって」


…自分もこの頃はこんな感じだったのだろうか

手を握り隣を歩いた。

空はもう暗くなっていた。

子供の家につき


「あ、ありがとうございます…お、お姉さん」

「いつまでもびくびくしないでよ、ほら笑って」

「うん…」

「じゃあね少年」

「うん…またねお姉さん」


子供が家に入っていった。


「ふぅ…」


ひいいい

よかったーボロでなくて

ほんとはただ強がってただけで自分も怖かったとか言えないよー

額から変な汗が流れてきた。

ま、まあでもこれでかっこいいお姉さんに見えたはず。

宿に帰ろうと踵を返した。


「お、お姉さん!」

「へ?」


先ほどの子供が家から出てきていた。


「ど、どうしたの?」

「い、家に今誰もいないの、えっとだからお母さんが帰ってくるまで…一緒にいていてほしいです」


まさかまだ子供のお守りをしないといけないとは思わなかった。

その後子供の母親が帰ってくるまでにご飯を食べさせお風呂に入れた。

ようやく母親が帰ってきたようだ。


「母さん!」


子供は母親に気付くと勢いよく抱きついた。

母親は優しそうな顔をしている。

顔だけですごく母性を感じさせられる。

母親と子供に礼を言われ気分が良くなった。

子供の方に振り返り手を振った。


「お姉さんまた来てね」

「うん、また来るよ、忘れないでね」


約束をしてから背を向けた。

町を歩く。

町からはもう一つも声が聞こえない。

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