二話 出会い
旅を始めて2日目
ガザンから旅をするなら日記を付けた方がいいと言われた。
今までの経験を書いておくことで、同じ場面に出くわしたときの対処法を見れて便利らしい。
なので今日から日記を付けることにする。
参考としてガザンの日記を見してもらおうとしたらそういうのは恥ずかしいからだめだと断られた。
見た目によらず可愛い所もあるものだなと少しギャップ萌えをくらった。
そして今日はガザンから狩りを教えてもらった。ガザンはどうやら狩りを得意とする村で育ったらしく幼い頃から食べ物は自分の手で採っていたらしい。
村の教えでは魔法を使った狩りは体の動きが鈍るため体ひとつで捕まえろと言われて育ったらしい。
そして実践を見してもらった。
結果はガザンはしっかりと鹿を捕まえていたのだがそのやり方はあまりにも身体能力頼りで僕じゃできないようなものだった。
一応試してみたが獲物に翻弄された。
そんなこんなで結局狩りは僕に向いていなかったので釣りを教えてもらうことにした。
近くにあった岩に座り腰までの深さの川に釣糸を垂らす。
川の流れる音や風で木が揺れる音が聞こえる。
落ち着く。
「…あっ」
ぼーっとしていたら釣竿をなにかに引っ張られる感覚がした。
ガザンはその様子を見て僕に声をかけた。
「かかったぞ、おもっいきり引っ張れ!」
おもっいきり引っ張った。
全身の体重を使って後方に倒れ込むように
「ふがー!」
急にストンと竿が軽くなった。
川から釣糸は出てきており恐らく釣れたのだろうが体が反動で後ろに吹っ飛んだ。
勢いのままゴロゴロっと転がっていき大きな木に背中を痛打した。
「…いててっ」
痛打した箇所をさすった。
そしてどんな魚が釣れたのかを確認する。
しかしその正体はただの長靴だった。
最初はそういう形の魚かとも思いかぶりついてみたが皮の味がした。
その後昼過ぎまで釣りをした。
釣れた物の内訳としては魚3匹、長靴などの他の旅人が捨てたであろう物が5つ釣れた。
初めてにしては中々やるなとガザンに褒められた。
嬉しい。
そういうガザンは途中釣りをしていなかった。
釣りざおをそこら辺に置きそこら辺にあった木の枝の先端をナイフで削り尖らせそれを使い魚を10匹捕獲していた。
途中僕も川に入り仰向けでプカプカ浮いたり、水魔法の特訓をしたり遊んだ。
久しぶりに外で遊んだ。
服は濡れ、汗をかき、体は疲れただけどすごく楽しかった。
魚は昼食に食べ、残った魚は血抜きをしたりして保存して夜に食べることにした。
その後荷物を纏め鞄に詰め込み先に進むことにした。
そしてなんとガザンはこの辺りの探索のついでに僕に着いてきてくれることになった。
旅のスペシャリストが一時的だが仲間になるのは旅初心者の自分としてはかなり頼もしく感じる。
「あとおまえが一人だとすぐ魔物に殺されそうだからついでに面倒を見てやる」
「へ?この辺りって魔物とか出るんですか?」
「!?…ああ、おまえそんなことも知らずに旅をするとはすごいな」
ガザンはまじかこいつと言う顔でこちらを見ていた。
数時間歩きようやく山の頂上に着いた。
ガザンは余裕そうだったが僕はヘトヘトになっていた。
その場に仰向けに倒れ込む。
見上げるともう空は暗く月が顔を出していた。
久しぶりに満月を見た。
相変わらず綺麗な形をしているな、とその姿に目を奪われているとガザンが口を開いた。
「…今日は満月か…」
「…どうかしました?」
「今日は焚き火の火を消すなよ」
「え?わかりました…」
なぜそんなことをガザンが言ったのか僕はよくわからなかったがとりあえず言われた通りにしておく。
その後ご飯を食べた。
普段ならこのまま火を消してテントに入り眠るのだが今日はそれをしなかった。
ガザンはどこから取り出したのかわからないハンマーを取り出した。
僕の体と同じぐらいのでかさのハンマーだ、それを持ってガザンはその場に仁王立ちでなにかを警戒している様子だった。
僕が何をしているんだろうと思いながら見ていると後方の茂みからガサガサと音がした。
昨日みたいにまた人だろうかと振り返ると、茂みからその何かが飛び出してきた。
それはゴブリンだった。
ゴブリンは僕に一直線に襲いかかってきた。
不意を突かれた僕はゴブリンの攻撃に反応できなかった、だが
「…え?」
ゴブリンが手に持っていたこん棒で僕を叩こうと振り下ろそうとした瞬間ー
「ふんっ!」
ガザンがゴブリンよりも早くハンマーを振り下ろしていた。
ゴブリンはぐちゃっと潰れ血が辺りに散らばった。
当然目の前にいた僕にもその血はかかった。
恐る恐る見下ろすと先ほどまで動いていたそれが模様のようになっていた。
動けなくなっていた僕にガザンは
「大丈夫か?攻撃は当たっていないよな?」
と声をかけてくれただが
「…うぇっ…げっ……おえっ」
僕はその場で嘔吐してしまった。
あまりのグロさに先ほど食べた魚が胃から逃げていく。
「大丈夫か?あのゴブリンになにかやられたか?」
「…だ、大丈夫です、ちょっと…こういうのを見るのは初めてで…慣れてなくてつい」
「…そうか…」
ガザンは優しく背中をさすってくれた。
数分ほど介抱してもらいなんとか気持ちを落ち着かせることができた。
「…ありがとうございます、さっきより気分は良くなりました」
「安心しろ、いざとなったら俺がいつでも守ってやる」
その後も魔物からの襲撃はあったが主にガザンが撃退し僕は後方から魔法で援護をしていた。
援護をしたと言ったがほとんど魔物に当たっていなかった。
そうしてその夜はなんとかやり過ごした。
朝日が昇ってきた。
ガザンはふぅと一息着いてその場に座り込んだ。
僕ももう魔力切れを起こしてしまい体が限界だった。
そんな僕を見て嬉しそうな顔をしたガザンが僕の頭に手を添えワシャワシャと撫でながら口を開いた。
「よく頑張った!お前もこれで立派な旅人だ!」
「は、はい…ありがとうございます」
強引な手付きで少し頭が痛かったが、それでも嬉しかった。




