第十五話 最悪の1日
ライスとは別の教室らしく食堂で別れた。
チャイムが鳴り昼休みが終わる。
生徒は皆椅子に静かに座っている。
しかしどこかそわそわしている者も多数いた。
やはり新しい生徒が来るとなるとそちらに意識を持っていかれるようで今か今かと待ちわびていたらしい。
そしてその新しい生徒が僕だ。
今は教室のドアの前で立っている。
チラリとドアの隙間から教室の中を見た。
生徒は全員で50人ほどおり全員が男だった。
すると突然後ろから女の人に声をかけられた。
「あ、お前かうちのクラスの編入生は」
「はい、えっと…あなたは?」
「私はここのクラスの担任、モエギだ、これからよろしく」
「よろしくお願いします、俺はキミと申します」
「そうかそうかキミか、お前それにしても初日から昼登校なんていい度胸だな」
「す、すいませんこれにはちょっとしたわけが」
「まあそんなことはどうでもいいな」
「えぇ…」
「よしじゃあキミ、私が教室の中から合図出すからそれ聞いたら入ってこい、わかったな」
「はい」
「あと、自己紹介は長くしろよ、授業時間減らしたいから」
「は、はい」
今の会話で分かったがこの女はまるでやる気がない。
モエギが教室の中に入っていった。
すると生徒達は編入生と勘違いしたのか盛り上がったのだが、担任だと分かった瞬間一気に沈んでいったのがドアの隙間から見えた。
「お前ら…流石にその反応は私でも傷つくぞー……まあそんなことより…お待ちかねの編入生に自己紹介をしてもらいたいと思いまーす…ではどうぞー」
合図が来たので教室のドアを開ける。
教室に入り教壇まで歩き、生徒達の方に顔を向け口を開いた。
「初めまして、ランザ大陸から来ました、キミ・グラスノーと申します、これからよろしくお願いいたします」
自己紹介を済ませ頭を下げる。
しかし教室は先程の盛り上がりとは一転、あまりにも静かだった。
何事かと頭を上げ様子を見てみる。
すると理由が何となく分かった。
ここにいる全員がおそらく女の子が来ると思って期待していたが、実際は男が来てしまい期待を粉々にされ落ち込んでいるのだと思う。
こんなのを見せられるとなんだかこちらが申し訳なくなってきてしまう。
「…じゃあキミ、お前の席はここの一番前な、文句は受け付けるつもりはないからな」
「…はい」
こうして僕の学園生活が始まった。
そして最初の授業なのだが校舎の外に出て学園の中庭に入った。
そして開けた場所につきモエギが口を開いた。
「じゃあキミここで魔法どのくらい使えるのか見せてみろ」
僕の手に杖が渡された。
辺りを見ると他の生徒達からなにかを試されているような視線を感じる。
モエギは相変わらずめんどくさそうだが。
杖を使うのは初めてなので上手くいくかは分からないがやるしかない。
杖をそこにあった岩に向け、魔力を杖に込めていく。
「アイスランサー」
槍の形をした氷塊はシュンと空気を切り裂き岩に着弾した。
岩は粉々に吹き飛び辺りの地面は槍が放つ冷気によって凍っていた。
「…いい威力出てたね…もしかしてもう中級までは使える感じなのかな?」
モエギは少しギョッとした顔をしながらこちらに近づいてきていた。
「はい」
「そっか、一応聞くけどもしかして独学とかなのかな?」
「はい、旅をしてる時に」
「なるほどね…」
顎に手を添えなにか考え込むようにしていた。
なにか閃いたのか顔をこちらに向けた。
「よし、キミは今日からずっと自習だ!」
「…えっとそれはどういうことですか?」
「この学年で教えてるのは初級までだからね、使える魔法が中級ってなるとキミはこの学年の間は自習しかない!独学で魔法やってこい!一応詰まったら私のとこにこい!」
なぜだかモエギのテンションが上がっていた。
そしてテンションの高いモエギは他の生徒を連れ教室にスキップで戻っていった。
そこには呆然とした僕だけが取り残されていた。
とりあえず自習ということで魔法が書かれた本を部屋に取りに行こうとしたのだが案の定迷った。
「どこだ…ここ…」
なぜだか分からないがさっきから同じところをぐるぐるとしている気がする。
さっきこの木に目印をつけた気がするのに目印がどこにもついていない。
しかもさっきから聴こえる音がだんだん大きくなっている気がする。
「…っ……がっ…」
頭が割れるように痛い、立つことで精一杯だ。
「あ…」
それに耐えきることができず僕はその場で意識を失ってしまった。
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意識を取り戻した。
風の音びゅうびゅうとうるさい。
一度辺りを見回してみた。
とりあえず今分かることはなぜか箒に乗って空中にいるということだけだ。
「うわああ!?」
「あ、やっと起きた?君寝過ぎだよ」
まさかの光景に驚いていると箒を操縦しているであろう人が箒に対して垂直に立っていた。
「だ、誰?誰ですか?」
「ああそっか自己紹介がまだだったね私はミリっていうの、よろしくね」
「…えっとこれは今どういう状況ですか?」
「今はね空を飛んでるところだよー」
そんなの言われなくても分かっている。
僕が聞きたいのはどうしてこんなことになっているのかだ。
「えっとミリさんどうして今はこんなことに?」
「君が中庭で倒れてるのを見てね、助けたんだよ」
「そうだったんですね、ありがとうございます」
「うんうん、まあもとはと言えば私の魔法の効果のせいで倒れたんだけどね」
「は?」
空気が凍った。
「私があの中庭の入り口に魔方陣置きっぱなしにしちゃっててね、それで多分君がたまたまそれを踏んじゃったのかな?とりあえずごめんね私の魔法がすごすぎたせいで」
かな?じゃないが。
この女あまりにも気にしてなさすぎる。
なんなら少し自慢をしているようにも聞こえる。
「……」
「まあとりあえず君は多分一年だよね?」
「…はい」
「じゃあ寮まで連れていってあげるね」
「あ、はい」
今の脳みそではとてもじゃないがこの人の相手は無理なので適当に全部頷いておいた。
やがて寮の入り口についた。
「お疲れー」
「はい」
「これからはもっと足元を見ながら歩くようにしなよーじゃあねー」
ミリは手を振り箒にまたがりどこかに飛んでいってしまった。
にしても今日は散々な1日だった。
学園初日だと言うのに中庭で迷ってお昼から登校して大遅刻をするは、変な魔法のせいで意識を失うわ。
今日は疲れをしっかりとるためにも眠ろう。
自室の前まで来てドアを開けた。
すると朝の工事現場のような音がまた鳴り響いていた。
「ふん…ふふーん…」
「……」
ライスがまた魔道具の改造をしていた。
僕はそのまま扉を閉めて耳栓を付けベットに向かった。
そして泥のように眠った。




