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魔法と旅  作者: かも
二章 学園編
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十六話 特待生

目を覚ますと既にライスは居なくなっており時間的には遅刻確定だった。

なっちゃたもんはしょうがないので優雅に学園に向かう準備をして寮の自室を後にした。

もう既に日は傾き始めており相当眠っていたことがわかった。

まあでもどうせこれから1年は自習しかないのでなんの心配はない。

これから治していけばいい。

ということで早速上級魔法の特訓をするために中庭に入った。

今回は前回とは違い迷わないように入口の近くの木に縄をくくりつけて自分にもくくりつけているのでこの縄を辿れば帰ることができる。

なので前回のように迷うことはもう無いだろう。

さて人の声も聞こえなくなったのでここならいいだろう。

魔法書を取り出し上級の欄を見ていく。

今使えるのはギリギリ中級までなので上級となるとやはり最低でも2ヶ月は要するだろう。

さて、どうしたものか。

攻撃魔法か治癒魔法か悩みどころだが。

とりあえず使い道がなくなることがなさそうな治癒魔法にしておこう。

攻撃魔法はもう既に十分あるしそうしよう。

早速特訓だ!と意気込んだが別に近くに傷ついた生物は居ない、自分を傷つけようともしたが怖いのでやめた。

なので結局攻撃魔法を特訓することにした。

どうせならかっこ良さそうなやつを選ぼう。

こういう魔法をするにはまずイメージが大事なのだ、その魔法の説明をしっかりと読み込むのが大事だ。

えーとどれどれ


「水系統の魔法、ボルトライトニング、とりあえず名前から推測してやってみよう、一応危険です…」


すごいな、公式に販売されていた魔法書なのにここまで適当だとは買い手をなめているとしか思えない。

もしかして上級魔法使いが少ないのはこんなものしか売っていないからではないのか。

まあしょうがないので想像でやってみる。


「すぅ……ふぅ……」


一度呼吸を整える。

ボルトライトニング、名前から分かるのは雷ということだけ、イメージ、イメージは…黒い雲からの1本の光の柱。

だが手元には雲はない、なので杖を雲だと仮定する。


「ふぅ……」


杖に腹の底から魔力を流し込む、ゆっくりと魔力を練り込んでいく。

魔力は十分貯まった。

後はイメージを現実にさせるだけ。


「……すぅ……ボルトライトニング!」


唱えた瞬間体に電流が走った。

杖を掴んでいた腕には魔力から変換された電撃が集中し腕の内部から破裂しそうな衝撃が襲った。


「……がっ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛」


漏れ出た電撃により皮膚は焼け指先の感覚が無くなった。


「はぁ…はぁ………っ…ぐっ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛……ヒーリング!ヒーリング!ヒーリング!」


ヒーリングを何重にもかけるがあまり効果はない、痛みは引かず堪えきれず涙が溢れてくる。


「ウ…ウォーターボール」


水の玉を召喚し腕を浸けた。

じわじわと痛みが広がっていくが同時に痛みが分散されているような気もする。


「はぁ……はぁ……」


ようやくまともに呼吸ができる。

体の力が抜けその場に仰向けに寝転ぶ。

この魔法は生身の人間に扱える魔法ではないことが分かった、生身では衝撃に耐えられず腕がボロボロになってしまう。

しかも未完成でこれだ、完成した時の衝撃なんて想像もしたくない。

腕が痛いヒーリングも意味がない。

だがちょうどよかった、治癒魔法の丁度いい実験体ができた。

この傷は中級までじゃ治せない、だが上級なら治せるかもしれない。

少し計画変更だ、今から習得するのは上級治癒魔法にしよう。


「ふぅ…ふぅ……よし」


傷ついた右腕に傷ついていない左腕で触れる。


「ホーリーヒール」


左の手のひらから淡い緑の光が発光しじわじわと傷が治っていくはずだった。

しかし


「いたい!いたい!いたい!いたい!」


傷は治らず痛みが明らかにますます増していく。

1度治癒魔法を中断しもう一度水に浸ける。

治癒魔法なのに痛みが増していく、意味が分からない、魔法書を確認する。


「えっと…注意、下手くそな治癒魔法だと逆に体を傷つけます」


これは習得するまでに相当骨が折れそうだ。


「ホーリーヒール!ホーリーヒール!ホーリーヒール!」


痛い、痛いのにやめてしまうと心が折れそうだからやめることができない。

中庭の中心で叫び続ける。

そんなことをしていると


「うわ、なにしてるのキミくん…」

「……あ、ライス…」


ライスが軽蔑と心配の半々の顔でこちらを見下ろしている。

腕の痛みよりもこの視線の方が痛い。


「なあ、ライスってそういえば何年生なの?」

「私?私は二年生だよ、しかも特待生」

「…そうだったんだ、えっとじゃあ上級魔法って使えるよね?」

「うん、そうだね、でも最近使ってないから今使えるかは知らないよ」

「なら使えるんだったら教えて」


手を合わせ崇めるようにお願いする。


「…まあいいよ、でも1個条件つけていい?」

「うん、なんでも聞くよ」


ライスは口角をにいっと上げ口を開いた。


「なら私の彼氏のふりしてくれる?」

「…へ?」


時間が止まった。

思考が止まり目が点となっている。


「なに?もしかして駄目なの?なら教えないよ?」


そう言われようやく思考が動いた。


「い、いや喜んでやらせていただきます、お願いしますライス様」

「よしよし、では教えてあげよう」

「や、やった」


やばい勢いで受け入れてしまった、てか彼氏のふりってなんでそんなことをするんだ。

僕は一応中身は女のままなのに。


「いくよー、しっかり見ててよ」

「う、うん」


ライスは目を閉じ手を掲げた。

そして1度深く深呼吸をし、息を吐き終えると目をカッと見開いた。

するとライスを中心に風が吹きあれ辺りの木々は揺れ鳥が飛び去っていく。

そして発動される。


「フレイムノヴァ!」


空に辺り一面に火球が現れ上空に登って行く。

木々を抜け上空に制止した。


「弾けろ!」


そう叫んだ瞬間火球の一つが爆発しそれに合わせ他の火球も連鎖爆破していく。

唖然としてしまう。

今まで自分が使っていた魔法とは比べ物にならない規模だ。

しかしそれよりも驚くのはライスは杖も使わずに手1本であの規模の魔法を発動している。

息を飲み込む。


「どうだった?できてた?」

「え、あ、うんすごかったよ」

「よし、じゃあ今からできるまで特訓だね」

「え?」


そこからライスのスパルタ特訓が始まった。

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