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魔法と旅  作者: かも
二章 学園編
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第十四話 変人

僕は気付けば男になっていた。

そしてそれを目の前の少女に指摘され初めて気付いた。

胸は前から無いような物だったが今はもう完全になくなっており、あるのは下の棒だけだ。

原因がわからない。

だが少なくともこの大陸に飛ばされる前の間は女だった。

風呂でしっかりとこの目で見た。

何があったかを振り返ろう。

まずここに飛ばされたのはあの不気味な男の魔法のせいなのは間違いない。

その時に転移以外にも何か他の効果もあった可能性。

これは大いにあり得る。

それかあの湖の水を飲んだこと。

だがその時も別に体に異常はなかった。

なら原因は一つしかない。

あの男の魔法によるものだろう。

考え込んでいる僕を見てライスが声をかけた。


「…えっとキミくん?どうしたの?なにかあった?」

「……いや、何でもない」

「で、でもなんだかすごい悩んでる顔してるよ?」

「いっつもこんな顔だよ…」


どうしたらもとに戻るのか。

恐らく魔法をかけた男以外にわかるやつはいないだろう。

だからランザ大陸に戻れるまではこの姿のまま学園生活を過ごさないといけない。

できるだろうか、男のふりなんて。

…いや今はもう気にしないようにしておこう。

今大事なのはランザ大陸に帰ることだ。

それにこの学園にいる時間だって大したことはない、直ぐに帰れる。

だから今は誰にも迷惑をかけずできるだけ男のふりをしたらいいだけだ。

またエマが声をかけた。


「…えっとキミくん?」

「うん?どうしたライス?」

「あ、あれ…顔つき変わった?…さっきより自信がある感じが」

「ははっ何言ってるんだよ、元から俺はこんな顔だよ」

「…そっか、そうだったね……?…」


とりあえずさりげなく一人称を俺にしてみたが全く指摘されなかった。

もしかしたらいけるかもしれない。

これは思ったより簡単なことじゃないか、そんなに気にする必要はないな。

安心したら眠気が…


「…ふわぁぁ……俺はもう寝ますね…」

「あ...うん…おやすみ」


ベットに入り布団を被り目を閉じた。

一抹の不安を抱えながらもなんとか眠ることはできた。


---


ふかふかのベットで気持ちよく寝ていると

工事現場のような音で無理矢理起こされた。

布団に潜り耳を塞ぐがそれすらも貫通してきた。

布団の中から鞄の中に手を突っ込み手探りで耳栓を探し耳に装着した。

一瞬まともに聞いただけだが脳が揺れた。

こんな音を朝っぱらから出してるバカはどこのどいつだと布団から顔を出し部屋を見ると。

部屋は工具の部品で散らかっており魔道具が分解された跡や部屋には焦げた匂いも残っている。

そしてそんな中で鼻歌交じりに一人楽しげな雰囲気で作業をしている少女がいた。

机に向かって熱心なライスがいた。


「…ふん…ふふーん」


なんとか作業をやめてもらわないと他の部屋から苦情が来てしまうかもしれない。

作業をやめてもらうため彼女に声をかけた。


「…ライス一旦作業止めて……」


しかし作業の音が大きいせいか僕の声は掻き消されライスの耳には届いておらず、作業をする手は止まっていない。

なので布団を投げ捨てベットから立ち上がりライスに近づいた。

背後から手を近づけライスの肩に触れようとした瞬間。


「あのライス……」


彼女にふれた瞬間何かにバチンっと手を弾かれ彼女の体から青い光が発光した。

瞬間僕の体はドアをぶち破って部屋の外に吹っ飛んでいた。

認識できないほどの速度で吹き飛ばされていた。

その音でようやく気がついたのかライスは作業の手を止めこちらに駆け寄ってきた。


「ごめんキミくん、大丈夫?」

「う、うん、なんとかね」

「ごめんね…私作業してるとどうしても周りのことに気を回せなくて…」

「…そ、そっかー…作業中なら、しょうがない…よ」


今思えば僕が旅でであった人たちは戦闘狂であったり魔道具オタクだったりがいた。

そいつらはどれも始めたらスイッチが切れるまでが長かった。

そして今回目の前にいる少女ライスは魔道具の改造マニアであった。

もしかして僕はこんな人としか出会うことができない運命なのだろうか。

そんなことを考えているとどこからかチャイムがなった。

その音を聞きライスが慌て出した。


「やばいよやばいよキミくん遅刻だよ!、授業遅刻しちゃうー!…」


そう叫びながら作業着のまま寮の廊下を駆け抜けていった。

恐らく教室に向かったのだろう。

…そういえば今日から授業があったことを忘れていた。

とりあえず部屋に戻り制服に着替えた。

制服は白を基調としており金色の高そうな薔薇が彫られた装飾が胸に飾られており、静かな印象の中に確かな品を感じられる。

…感心を受けている場合ではない早く教室に行かなければ。

教科書を鞄に詰め部屋を後にする。


---


今は教室を探しているのだが学園があまりにも大きすぎる。

中庭を一度通るだけでも小さな森の中を入らなければならず、僕が知っている学校とはあまりにも違かった。

しかも最悪なことに中庭で迷ってしまった。

ここはどこなのだろうか。

それにしてもこの辺りは自然に満ち溢れており日差しもよく通っており植物がすごく元気そうだ。


「…ここで昼寝したら気持ちいいだろうなー」


…そんなことを気にしてる場合じゃない。

今は少しでも早くここから抜け出さなくては。

そう考えているとどこからか小さいが声が聞こえた。


「…どうしたもんかね……」


恐らく男の声がする。

そちらの方に向かって足を進める。

木々の枝を躱し茂みを抜け声の位置に辿り着いた。

そこには大きな剣を背中に携え、右目に眼帯を着けた男がいた。

顎に手を当てなにかに悩んでいるようだった。

男がこちらに気付き顔をこちらに向けた。

目があった。


「……」

「……」


男は剣の柄に手を掛けこちらを警戒している。

その男が放つ空気はあまりにも異質だった。

肌で感じとるとピリッとだったりドロッとしておりこれより先に進めば死ぬと脳を経由せずにわかるほどの威圧感が出ていた。

男が口を開いた。


「…誰だお前は」

「…お、俺はここの学園の生徒…です」

「嘘をつくな…俺はお前みたいなやつこの学園で見たことがない…お前制服を着ているがもしかして誰かから奪ったのか?」


更に威圧感が強くなった。

声を出そうにも体が震え力が入らない。

口を開かない僕のその様子を見た男は剣を抜き


「返答は無しか…なら斬るぞ」

「…っ…ぼ、僕は…今日初日なんです!」


それを聞いた男は剣を背中の鞘に戻した。

先程から放たれていた威圧感も無くなった。


「はぁ…はぁ…」


額の汗をぬぐう。

しかしもう威圧感はなくなったと言うのに汗が止まってくれない。

男が口を開いた。


「…そうか…それはすまないことをした、せっかくの初日だと言うのに気分を害してしまってすまない、もしお前の気が晴れるならこれで俺を斬ってくれ」


男は澄ました顔でズボンのポケットから小さなナイフをこちらに差し出し、斬れと言った。

意味を理解した瞬間今度は謎の冷や汗が全身から出てきた。

思わず動揺してしまった。


「は、は?は?、な、何を言って」

「俺なんかの命では物足りないだろうが斬ってくれ、こんな安っぽい男の命一つで許してほしい」


先程の雰囲気とは打って変わって今度は意味がわからないほどネガティブな言葉が出てきた。

ど、どうゆうことだ。

本当にさっきと同一人物か。

全体的にしゅんとしており背も猫背になっており表情も暗くなっている。


「え、えっとそんなことしませんからそれしまってください」

「そうか…これでは物足りないか、ならこの大剣で…」

「だから、殺す気がないって言ってるんですよ!」


男はその声に驚き更にしゅんとしてしまった。

三角座りで土をいじり始めた。

なんだか本当に申し訳なくなってしまう。

どう声をかけるべきか分からないがとりあえず男の肩に手を添え。


「あ、あのさっきはすいません…」

「…なんだ」

「さっきは大きな声出してごめんなさい」

「…気にするな、こちらこそすまない、初日で楽しみにしていただろうに…」

「いえいえ、今のだってちょっとした挨拶だと思えば」

「お前はこんな挨拶を見たことがあるか?」

「……」

「やはり死ぬしか」


男が首にナイフを近づけていく。


「だからそれをやめろー!」


そうして一度落ち着いて話ができるまで一時間ほどかかった。

落ち着きを取り戻した男が口を開く。


「俺はこの学園で二年生のラインだ、お前は?」

「えっと俺はキミって言います、この学園の一年生です」

「そうか、それでキミ、お前は何に困っているんだ?」

「あ、はい、俺ここに来たの始めてで教室にいきたいんですけど中庭で迷っちゃって、それでここから声が聞こえたんで助けてもらえないかなって思って」

「そうか迷子か、奇遇だな俺も今迷子だ」

「……」


長い沈黙の時間が流れた。

しょうがない教室までは自分で行くしかないか。

立ち上がりラインに背を向ける。


「えっとそれじゃあ僕はこれでライン先輩」

「まあ待て教室に行きたいならここにいた方がいい」

「えっとそれはどうしてですか?」

「聞こえないか?この音が」


耳を澄ませてみるとどこか遠くからガサガサといった茂みを掻き分けている音が聞こえる。

しかもとんでもない速さでここに近づいている。


「こ、この音はいったい」

「これはだなー」

「あ、兄さん」


その瞬間茂みから小柄な少年が現れた。

その少年を見てラインは穏やかな雰囲気になった。


「サイン、やっとか」

「やっとかじゃないよ兄さん!また遅刻じゃないか!しかもその隣にいる人は誰!」

「こいつはキミって言ってな今日からこの学園に通うことになったらしいぞ」

「…初めましてキミって言います」

「初めまして僕はサインって言います、そこにいる兄さんとは双子の兄弟です」


ラインの兄弟か、しかし似てないな。

見た目は瓜二つどころか逆だ、間反対だ。

兄がかっこよさに全振りしているとしたら、弟の方は女と間違えるほど華奢だ。

ほんとうに兄弟か疑ってしまうな。

そんなことを考えているとサインがラインの手を引っ張り。


「兄さん早く教室行くよ」

「ああ、行く行く」


その二人の後ろを追いかけようやく長い中庭を抜け出すことができた。

学園の校舎に着くことができた。


「じゃあなキミ」

「はい、ありがとうございました」


校舎に入っていくラインとサインに向かって感謝を伝えた。

これでようやく教室に、と思っていると朝とは別のチャイムが鳴った。


「ん?なんだこの音?朝と違うような」


チャイムが鳴り終わった瞬間教室から一斉に生徒が食堂に向かっていた。

まさか…今の音はもしかして。

そんなことを考えているとその廊下から一人僕のもとに向かってきてそいつは僕の目の前で止まった。

ライスだ、しかもなにやら冷めた目付きをしている。

何を言われるのかと怯えているとライスが口を開いた。


「…キミくん、もうお昼だよ」

「………」


こうして初日から大遅刻をした。

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