第十二話 冷静
……一度冷静になるんだ。
焦って変な思考になるな。
一度深呼吸。
すー…はー…
…僕は別に犯人を殺さなくたっていい。
僕がするべきなのはエマよりも先に犯人のもとに行って制圧すること。
そしてその犯人を警護団に引き渡し、その後にエマを見つけて説得すればいいだけだ。
それになにより僕とエマはまだ犯人の情報はほとんどわかっていない。
わかっているのはあの犯人が残したであろう旗の絵とエルフの心臓を狙っているということだけ。
だからまだ焦らなくても良い。
一度落ち着いてなにからするべきか考えるんだ。
…結局は情報を集めなくては。
エルフの心臓のことはもうわかっている。
だから今収集すべき情報はこの絵だけだ。
手当たり次第に聞いてみるしかない。
宿の外に出る。
まずはあそこの人からだ。
「あ、あの」
「…あん?」
「こ、この絵について知りませんか?」
日記に描かれたその絵を見せる。
しかし
「…うーん…知らねえな、見たことがないな、こんな絵は」
「…ありがとうございます」
礼を言いその場をあとにする。
その後も通りかかる人全員に聞くが情報は一つも手に入らなかった。
「…はぁ…」
夜になったので宿に戻った。
どうしたものかと頭を悩ませる。
この絵にはまずどういう意味が込められているのだろう。
…蛇?と狼?の様なものが対立しているような構図。
これに一体どんな意味が。
……一度現場まで戻ってみよう。
もしかしたら大事ななにかを見落としているかもしれない。
「…ふわぁぁ」
…その前に今は一旦睡眠だ。
そのままベットに飛び込み目を閉じた。
朝になった。
荷物を纏めて宿をあとにした。
馬を借り現場に急ぐ。
流石に移動に時間を掛けすぎていてはエマより先に見つけれないと思ったので渋々馬を借りることにした。
なぜ僕が馬を借りるのが渋々なのかと言うと。
僕が乗馬がとんでもなく下手くそだからだ。
幼い頃両親に何度か馬に乗せてもらったがその度に馬上から吹っ飛ばされたのを覚えている。
そのせいで足を骨折したこともあった。
なので今回はできるだけおとなしめの子でお願いした。
そうして早速乗ってみると、少し暴れたが言うことをしっかりと聞いてくれる。
ふぅ…よかった。
早速進んでみる。
中々の速度が出ている。
今まで徒歩で旅していたのがバカらしくなるほどだ。
これなら今日の昼までには現場にもどれそうだ。
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そうして着いたのだが。
死体も家ももうなにもなかった。
旗だけがでかでかと置かれていた。
警護団だろうか?
いや、それなら旗を残しておくだろうか?
それに家を壊す必要もない。
もしかしたら犯人たちは一度ここに戻ってきていたのかもしれない。
いつ来たのか、どこから来たのか足跡を探す。
下に視線をやると足跡を見つけた。
それは村があった場所のすぐ近くの森に続いていた。
これを辿れば…
足跡を辿っていく。
しかし途中で途切れていた。
しかもダンジョンの前でだ。
「…なんでこんなところにダンジョンが」
もしかしてここにやつらが…
もしそうだったとしたら話しは早い。
さっさとダンジョンに入ってボコボコに締め上げて警護団に引き渡す。
これで解決だ。
「…ふぅ」
前回のダンジョンではエマがいた。
しかし今回は僕一人。
魔物の相手をしながらやつらの相手もしなければならない。
そんなこと僕にできるだろうか。
…いや弱気になるな。
エマよりも早く捕まえるんだ。
エマを人殺しにはさせない。
入り口の魔方陣に手をかざし魔力を込めていく。
だが反応がなにもない。
「…え?」
入れない。
いくら試しても一向に入れる気配がしない。
前のダンジョンならこれで入れたはずだ。
なんだこれはただのダンジョンではないのか。
その後入り口を叩いたり魔法で破壊を試みたが全部意味がなかった。
どういうことなのだろうか。
なぜ入れない?
なにか魔力以外に注がないといけないものでもあるのだろうか。
ダンジョンについての知識は全くないので皆目検討もつかない。
一度帰ってからこれからのことを考えよう。
馬にまたがり宿に帰ろうとした瞬間。
ガサッと後方の茂みから音が聞こえた。
「…誰ですか?」
問いかけには返事が返ってこない。
獣?
いや獣にしては気配が無さすぎる。
魔物?
いや魔物だとしてもこんなに近づいたのなら隠れずに襲いかかってくるはずだ。
それならもう人しかない。
手を茂みに向ける。
「…もし正体を見せないのなら攻撃しますが構いませんか?」
「………」
そう言うと茂みから現れた。
黒い服を着た男が。
手には杖を持っており目がギョロギョロと不気味な動きをしている。
男の手がピクリと動いた。
一瞬過ぎてはっきりと見えなかったがなにか魔方陣のようなものが描かれた紙を付けられた。
男はこちらに杖を向けボソボソとなにかを呟いている。
「っ…!」
剥がれない。
それなら本体を狙うしか。
そう思い魔力を練り込んだ瞬間。
なにか唱え終わったのか男は、はっ!!!と叫びまばゆい光が僕を包んでいく。
「……ファイヤー…」
こちらが魔法を唱え終わるよりも早く男の魔法?の効果が発動した。
一瞬にして体に異変が起こった。
「がああああああああ」
体が震え脳みそが震えている。
その負荷に耐えられず僕は意識を失ってしまった。
最後に見えたのはその男の片方の手の甲にあの旗の絵と同じものが描かれていたことだ。
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ようやく目を覚ました。
なにをされたんだいったい。
頭が痛い。
しかももう夜ではなく朝になっている。
日差しが強くて目を開けるのが辛い。
「…くっそ…!?」
目をなんとか開き辺りを見渡した。
すると僕がいたのは森の中などではなく砂漠のど真ん中にいた。
「これは…いったい…」
あの男の魔法のせいか?
いや、そんなことよりも今ここがどこなのかを知りたい。
荷物も馬も近くにあったので僕だけが対象の魔法ではないと言うことだけがわかった。
馬にまたがり一つの方向に進んでいく。
にしても暑い。
一時間ほど歩いているが全く景色が変わらない。
馬も少しずつ元気がなくなってきていた。
少しずつ水はやっているが暑さがきついのか頭は垂れ、進む速度も遅くなってきた。
一度どこかで休憩を取りたいが取れそうな場所がどこにも見当たらない。
…酷だがもう少し頑張ってもらうしかない。
もう一時間ほど進みようやく緑が見えてきた。
湖があり休むならちょうど良さそうだ。
馬もそれを見て元気を取り戻したのか顔が前を向いてきた。
「おつかれ…ありがとう」
着いた。
馬から降り頭を撫でてあげる。
しかし嫌そうに手を振り払われた。
「……」
こいつはいつか馬刺にして食べてやる。
その後馬に水を飲ませ水筒に水をたっぷりと入れておいた。
水は魔法で生み出せるのだがやはり天然の方がうまく柔らかく感じられる。
天然水はやはり最高だ。
まあそんなことは今はどうでも良い。
それよりもここは本当に街や人があるのだろうか。
まずどこの大陸なのかも気になる。
ガザンに見せてもらった地図では少なくともランザ大陸とスペル大陸には砂漠はなかった。
それならここは後の三つのどれかなのだが。
全く手がかりがない。
やはり前に進むしかないのだろう。
馬にまたがり前に進もうとする。
だがその瞬間木から伸びていたツタが馬に絡み付いた。
「……!?」
ツタは僕の腕をつかみ馬上から吹っ飛ばされ砂漠に放り出されてしまった。
「…っ…げほっげほっ」
砂漠をごろごろと転がる。
口の中に砂が入ってしまった。
全然美味しくない気持ち悪い。
それよりもなんだあれは。
ツタはうねうねと不規則に動いており動きが読めない。
あれも魔物なのだろうか。
立ち上がりローブに着いた砂を払う。
さてどうやって相手にするべきか。
燃やすか?いや燃やしたら馬にも被害がいく。
それなら…
「ウィンドカッター」
手が空を切る。
すると魔力が混ざった風が素早くツタに向かっていく。
ツタは綺麗に両断され馬の拘束が解かれた。
…しかしすぐさま再生し馬に逃げる暇を与えなかった。
ツタを狙っていてはだめだ。
完全に殺すなら栄養を蓄えている木の根元ごと殺さなければ。
だったら
「アイスランサー」
唱えた瞬間氷の槍が目にも留まらぬ速さで木を貫通した。
そして氷の槍が通った跡は植物も砂漠も完全に凍っていた。
多少馬も凍っていた。
しかしツタは木と一緒に完全に枯れていった。
馬の足が動けるようになったらすぐに移動しよう。
ここじゃなにが起こるかわからない。
そうしてまた前に進み始めたのだがすぐに砂漠の終わりが見えてきた。
それ以外にもなにかが見えた。
塀で囲まれている…街だ。
ようやくだようやくしっかり休憩できる。
そう思っていたら突然目の前で地面の砂が盛り上がってきた。
砂の壁に囲まれた。
「…え?」
意味がわからないまま砂に生き埋めにされた。




