十話 別れ
また一週間ほど経った。
もう少しでランザ大陸での旅も終わってしまう。
ガザンとエマといれる時間はもう限られている。
今の時間帯はもう夜で僕たちはテントの中で話し合いをしていた。
「…この旅が終わったらガザンはどうするの?」
「俺か?俺はまだ行ってない大陸があるからなそこに行く」
「それが終わったらどうするの?」
「…二週目に突入だ」
ガザンは旅が終わったら旅をまた1から始めるらしい。
彼らしい回答だと苦笑する。
「エマはどうするんだ?故郷に帰るのか?」
「…うーん、私はそうだなー…最後までキミと一緒にいようかな、どうせ故郷に帰っても暇だし友達いないし」
エマは僕に着いてきてくれるらしい。
ちょっと頬が緩んだ。
「それでキミはどうするの?」
「……僕は」
魔道書を抱え俯く。
どうしよう。
僕にはまず目的なんかない。
ただ旅をしたいと突発的に思い付いたからしてるだけだ。
だからいつまでこの気持ちが続くかわからない。
もしかしたら明日にでも家に帰りたくなってるかもしれない。
どうしたらいいんだ。
なにも思考がまとまらない。
「……まだ決めてない…」
「そうか、ならどこまで行くかは決めているのか?」
「それもまだ…」
僕はこのままランザ大陸の旅が終わったらなにをしたいんだ。
このまま別の大陸に行って旅を続けるのだろうか。
周りの声が遠く感じる。
「…おい、キミ」
「は、はい」
顔を上げると目の前にガザンの顔があった。
思わず後ろに後ずさりしてしまった。
「そんなに驚くな…少し外に出よう」
「は、はい?」
テントの外に出た。
エマは留守番をしている。
ガザンと僕だけ…二人っきりは久しぶりだ。
ガザンが上空を指差した。
「あれを見ろ」
「……綺麗ですね…」
空には満天の星が輝いている。
久しぶりに星を見た気がする。
目が奪われてしまう。
「星は好きか?」
「はい!大好きです!」
「…そうか」
ガザンはなにか噛み締めるような表情をしている。
「よし、テントに戻るぞ」
「…へ?へ?」
「どうしたそんな顔をして」
「いや、え?今なにか大事な話をしそうな雰囲気だったじゃないですか?」
「ふっ俺ができると思うかそんな話?」
「……」
黙るしかなかった。
どうやっても酒癖が悪い彼しか出てこなかった。
最初は頼りになってかっこいいオッサンだったのに…もちろん今も頼りになっている。
食事も狩りもほとんどガザンがしてくれているし旅の安全な道だって決めてくれる。
よく考えればほとんど頼りっぱなしだ。
「…ガザンさん」
「うん?」
「…いつもありがとうございます」
「ははっ、なんだ急に改まって早く寝るぞ」
「…はい」
三人でぎゅうぎゅうのテントの中で眠った。
だが意外と寝心地は悪くなかった。
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「おーい朝だぞー起きろー」
カンカンと耳障りな音が僕を起こした。
「おはようキミ」
「…おはようエマ」
その後いつも通り準備体操をしてから近くの川で顔を洗い朝食を食べて荷物を纏めた。
「よし出発するぞ」
「はーい」
ガザンを先頭にしその後ろに僕とエマがいる。
いつもの陣形、いつも通りの日々。
そんなことを考えているとなぜだか胸がツンとしてきた。
終わってほしくないと思っている。
もっとこの時間が続いてほしいと思っている。
…よかったと思っている。
この二人に出会えたよかった。
自分一人では絶対にこんなに続かなかった。
まだ別れてもいないのに感傷に浸ってしまった。
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あの日から今日まで一瞬に感じられた。
ガザンが船に乗り込んでいく。
次の行き先はグランチック大陸らしい。
今日はガザンとの別れの日だ。
「じゃあな二人とも」
「うん、じゃあねガザン」
「…ありがとうございましたガザンさん」
…悲しいが別れは別れだ。
いつか来るものだから。
だがやっぱりもう少し一緒にいたかった。
船が発進した。
どんどん遠ざかっていく。
彼の姿はもう見えなくなった。
「…はぁ…これからどうするキミ?…!?」
エマがこちらに顔を向けた。
その瞬間ぎょっと目を見開く。
「キミって泣いたりするんだね」
「そりゃ…そうでしょ………」
エマが泣かなすぎるだけだ。
僕は普通だ。
別れがあれば泣いてしまう。
当たり前だ。
「それでどうすんの?」
感傷に浸る暇もないやつだ。
涙が引っ込んでしまう。
「……ふぅ……そうだね…もう一回学校行こうかな」
「キミって学校行ってたんだね」
「そりゃそうでしょ、不登校だけど」
「私はまず通ったことない」
「…」
「…」
一瞬気まずい時間が流れた。
「だったら一緒に学校行く?」
「私が?今から行けるかな?」
「行ける行ける、なんとかしたら行けるでしょ」
「適当だね、まあいいやどこまでも着いていくよ」
そうして家に帰ることにした。
こっからまた2ヶ月かけて来た道を戻る。
そう考えるとかなり長く旅をしていたように感じる。
父さんと母さんに忘れられてなければいいが。
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1ヶ月ほど経った。
今夜でテントの中にいる。
最初より体力が付いていたお陰か来るときよりも戻っているときの方がペースがいい。
これならあと一週間で家には着きそうだ。
「思ったより早く着きそうだね、どう気持ち的には?」
「んー…久しぶりに家に帰れて嬉しいが半分、将来のことを本格的に考えてて最悪の気分なのとで半々かな」
1ヶ月前は家に帰れるのが待ち遠しかったが今は全く待ち遠しくない。
逆にもっとかかってほしいと思っている。
人の心とは複雑なものだ。
「……!…ちょっと外見てくる」
「え?」
エマがテントの外に出てどこかに向かっていく。
エマの足は早くギリギリで着いていくので精一杯だった。
…なにか焦げ臭い。
嫌な悪臭も混ざっている。
ようやくエマが止まった。
「はぁ…はぁ…どうしたの急に?エマ?」
エマは遠くを見つめてぼーっとしている。
どうしたのだろうか。
「おーいエマー?」
「……キ…ミ…あれ」
手で口を抑え目は見開かれている。
声は震えなにかに怯えているような気がする。
いったい何を見たと言うのだ。
視線を向けるがなにも見えない。
だがなにかが燃えているのだけが見える。
炎がかなり大きい。
大規模なキャンプファイアだろうか。
「んー…なにあれ…大規模なキャンプファイアとか?」
「違う……っ…あ、あれは私の…村…だよ」
「……え」




