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第58話

 休日の7日目。


 昨晩の食事会は楽しすぎてちょっとはしゃぎすぎたかな。でも、エリン師匠とベンの相性というか芸風があんなにマッチしていたなんて想定外だったなぁ。


 リアムがキッチンで水を飲んでいると、ベンが女性には見せられない露出多めの格好でお腹を掻きむしりながらやってきた。


「おはよう。リアム、早いな」


「おはよう。ベン。昨日は楽しそうだったね」


「まぁね。料理もおいしかったし、酒も最高だったよ。しかし、エリンさんてかなり面白い人だね。というか、ある種の変人だね。ところで、今日はなんか予定あるの?」


「う~ん。特に予定はないけど、明日から仕事だからね。休暇モードを仕事モードに変えていかないとね」


「だな」


「おはよう、リアムお兄ちゃん、ダイベンお兄ちゃん」


「こらっ、ルナ。それは言っちゃだめって言っただろ」


 ベンがルナの脇を全力でくすぐっている。


「ごめんなさい、ごめんなさい、もう言わないから、やめてください」


 なんだか毎度のお約束行事になってきてるな、これ。


 今日の朝食は当番なしで、各自でとることになっていた。だからみんなゆっくり寝ているようだ。ベンとルナと一緒にパンとミルクで簡単な朝食をとっていると、みんなぞろぞろやってきた。


「おはよー、早いね」


 早いねって言われても、もう12時なんですけど。


「リアムお兄ちゃん、今日はどこに行くの?」


 ルナが目をらんらんとさせながら見つめてきた。


 もしかして毎日遊ぶ習慣がついてしまった? これって教育上よくないよね。


「う~ん。今日は仕事の準備をしようかと思っててね」


「えー。それじゃつまんない。いつもみたいにフレアお姉ちゃんと一緒にどこかに行こうよ」


「う~ん。そうだね。じゃあちょっとだけ散歩にでも行く?」


「えー。散歩?じゃあ、一緒に散歩する犬が欲しい。名前はポンタにする」


 そう言えば木彫りの犬の名前ポンタだったっけ。仕方がないな。ルナの用心棒にもなるかもしれないし見に行ってみるか。


「わかったよ。見に行くだけだからね」


「うん。わかった。見てから買うね」


 それ、わかってないってことだから。


「じゃあ、準備できたら行こうか」


「フレアお姉ちゃん呼んでくる」



 アルゼ市場に向かう道すがら、いつものように、ルナはフレアと僕の真ん中に入って手を握り、うれしそうに交互に見上げている。そして、ときどき、両足を上げてぶらんぶらんとぶら下がるのがお気に入りだ。


 元気になって本当によかったね。ルナ。


「リアムお兄ちゃん、犬ってどこで買えるの?」


「市場で聞いてみようかと思ってたんだけど」


 何人かに尋ねてようやく店に辿り着くと、たくさんの種類の犬がケージに入れられて所狭しと陳列されていた。


「ルナちゃんはどの子がいいの?」


 どちらかと言えばフレアの方が興味津々のようだ。


「う~ん。ポンタはどこかな?」


 ルナはぐるっと見回すと、


「あっ、ポンタがいたよ」


 と言って奥にあるケージのところに駆けていった。ほんとだ。ポンタにそっくり。あの木彫りの犬、本物がいたのね。


「この犬がいいの?」


 フレアが興奮気味に訊いている。あなたって本当にわかりやすい。気に入ったんだね、この犬。


「じゃあ、これ買おうか」


「うん。ポンタでお願いしまーす」


 これポンタじゃないと思うけどね。まぁ、ルナがそう言い張るならそれでいいんだけど。


 ケージや必要なものは夕方までに届けてもらうということで、ポンタだけ先に連れて帰ることになり、ルナはポンタにつながれたリードを持ってご満悦のご様子。フレアもリードを持ちたかったようで、何度か言い出しそうだったけど、大人なんだから我慢しないとね。


 ポンタを連れて家に帰ってからが大変だった。夜遅くまでポンタの取り合い合戦が勃発したのだ。


 休日最終日はある意味大混乱で幕を閉じたのでした。



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