第54話
休日の3日目。
「今日は天気がいいからお出かけしようか」
「わーい。どこに行くの?」
「お馬さんに乗って近くの森まで赤いもを採りに行くよ」
「お馬さんに乗るの?赤いも?楽しみだな」
ルナのはしゃいでいる姿を見ていると心が和むなぁ。
「お弁当を作ったらすぐに出発するよ」
「私、サンドウィッチ作るね」
まるで家族の休日の光景のようだ。
「おいで。ルナ」
先に馬に乗ると、フレアが持ち上げたルナを受け取って自分の前に座らせた。
「フレア、手を貸して」
馬の背まで勢いよく引き上げる。
「出発進行!」
「おー」
ルナは早速いつものお気に入りの歌を歌い始めた。催促するように振り向いてリアムとフレアに笑顔を見せる。リアムとフレアもルナのかわいらしい歌声に続いた。
フレアが記憶を失っているにも関わらず、こんな幸せな気持ちになれるなんて、思ってもみなかった。
「さあ、着いたよ」
森の入口の目印になっている大木の木陰で昼食をとることにした。
「フレアお姉ちゃんが作ったサンドウィッチ、とってもおいしいよ」
「ありがとう」
楽しそうに微笑むフレアにつられてリアムの顔もほころぶ。
昼食を済ませると、馬の手綱を引いて歩いて森に入っていく。すぐに赤いもが自生しているのを見つけた。
「ルナ、この葉っぱがついている茎の周りを掘って、それから茎の根元を掴んでゆっくり引っ張るんだよ」
リアムが引き抜くと大きな赤いもが4つほど連なって姿を現した。ルナが隣の茎を一生懸命引き抜こうとしたが、うんともすんとも動かない。見かねたフレアが手を貸した。
「わあ、たくさんとれた。赤いおいもさんだ」
ルナのうれしそうな顔を見ているだけで幸せな気持ちになる。
持ってきた麻袋に赤いもを30本ほど詰め込んで馬背に取り付けると、先ほど昼食をとった場所に向かって歩き出した。
ルナがうとうとし始めたのでおんぶすると、すぐに肩口から寝息が聞こえはじめた。
「リアムにちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな」
フレアの声から緊張が伝わってくる。頬と耳が赤く染まっていた。
「うん。いいよ」
「あのね、ええと、私とリアムは、その、結婚の約束をしてるって、本当なの?」
「この前も話したけど、昔のことを無理に思い出したり、縛られたりしなくていいんだよ。大切なのは今のフレアの気持ちだから」
「うん。それはわかってる。でも、きちんと知っておきたいの。ダメかな?」
「結婚を約束したのは本当だよ」
「そう、だったんだね。教えてくれてありがとう」
「でも、今のフレアが気にすることはないからね」
「うん。でも、どうしてリアムはこのことを黙っていたの?」
「何も覚えていないのに、いきなりそんなことを言われたら、フレアが苦しむと思ったから。それだけだよ」
「優しいんだね」
フレアのまっすぐな眼差しはリアムを捉えて離さなかった。




