第11話
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リアムが帰ってこなかった。
男たちに捕まってしまったのか、それとも、何か悪いことが起こってしまったのか・・・・・・。
フレアは幾度となく頭をよぎる不吉な考えを打ち消そうと心を砕き、結局一睡も出来ずに朝を迎えた。不安な気持ちをどうすることもできないまま、アルベルトさんとともに朝の仕込みを始めた。
「今日の昼頃には戻ってくるさ。赤イモをとるのに思ったより時間がかかって日暮れになったんだよ」
「はい。きっと、そうですよね」
フレアは自分に言い聞かせるように言った。
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リアムは街に入ってすぐにノア、ルカ、ベンと別れを告げた。1週間後にここで再会する約束をした。
リアムは赤イモを材料保管倉庫に置くと、手を洗って石窯のある厨房に向かった。
「ただいま、フレア、アルベルトさん」
「リアムっ。よかったぁ」
フレアはリアムに走り寄ると、そのまま抱きついた。涙が頬からこぼれていた。
「心配かけてごめん」
「もう帰ってこないかと心配したんだよ」
「そんなことあるわけないよ」
フレアの頭をなでる。
「さあ、仕事しないと」
リアムはフレアの頬を伝って落ちる涙を親指で拭った。
「うん」
リアムはジョバンヌさん、エリサさん、アリサさんに帰宅の挨拶をして、部屋で服を着替えて厨房に戻った。
15時頃に仕事を終えると、リアムとフレアは公衆浴場に行くことにした。今は鼻歌まじりでご機嫌な様子だけど、あんなに心配そうなフレアの顔、初めて見た。ずっとフレアのそばにいたいし、いなければならないという思いを強くした。
夕食後、いつものように2人並んでベッドに座ると、フレアがそっと手を握ってきた。
「昨日はリアムのことが心配で眠れなかったんだからね。とても胸が苦しかったんだよ」
「ごめんね、フレア。もうこれからは心配かけないし、フレアを絶対にひとりぼっちにさせない。ずーっと一緒にいるからね」
リアムはそう言うとフレアの頭をなでなでした。フレアはリアムに抱きつき、ぎゅっと力を込めてきた。リアムもそれにこたえた。
「さあ、今日はもう寝よう」
「うん」
フレアはそう返事するやいなや、リアムの口に自分のそれを押し付けてきた。
そして、恥ずかしそうに、
「おやすみなさい」
と言ってベッドに横になった。
リアムも横になって目をつむる。昨日もいろいろあった。クマに遭遇したときは本当に死ぬかもしれないと思った。でもフレアを一人にするわけにはいかないと思うと冷静になれた。
もしかしたら前世で手に入れた知識や能力を使うことができるのかもしれない。前世の自分はどのような経験、知識、能力を持っていたんだろう?そんなことをとりとめなく考えているうちに眠りに落ちた。
翌朝から赤イモを使った新製品のパン作りを始めた。初日は100個ほど作ったが、一口サイズに切ったものを試食用にお客さんに配ったこともあり、昼過ぎには売れきれるほどの人気だった。
「試食したお客さんはみんなおいしいって言ってたわよ」
エリサさんがうれしそうに報告してくれた。
「それはよかったです」
「明日は倍の200個用意できるかしら」
「はい。大丈夫だと思います」
「私たちの食べる分もお願いしますね」
「はい。アリサさんの分は、ちゃんと取り置きしておきますよ」
アリサが満面の笑みを見せた。
「ところで、ジョバンヌさん、赤イモをなんとか栽培できないかと思っていまして。計画的に収穫できれば商売しやすくなると思いますし。どなたか知り合いの農家の方はいらっしゃらないでしょうか」
「それはいい考えだね。知り合いの農家にあたってみるよ」
翌日から評判を聞きつけた客がどんどん来るようになり、赤イモパンだけでなく他のパンもよく売れるようになった。店の売り上げはいつも1.5倍近くになり、仕込みも増えて忙しくなった。ジョバンヌさんは売上が増えた分、給金を増やしてくれた。
忙しい1週間が過ぎ、ノアたちと会う日がやってきた。リアムはフレアとともに待ち合わせ場所に向かった。
「やあ、リアム、元気だったかい」
ノアがこちらを見つけて走り寄って来た。ルカとベンも一緒だった。
「みなさんもお元気そうで。もう体調は元に戻りましたか」
「ああ、もう大丈夫だよ。あの時は本当にありがとう」
3人は順々にリアムの手を握っていく。
「こちらは?」
ノアがフレアを見て言った。
「フレアと言います。よろしくお願いします」
フレアは笑顔で挨拶した。
「リアムの彼女なのかな?」
ルカがリアムとフレアを交互に見ながら言った。
「まあ、幼馴染というか、なんというか」
するとフレアがリアムの腕を引っ張って
「そうです、でしょ」
「はい。そうです」
どっと笑いが起こった。
「フレアさんて面白い人だね」
ルカが突っ込む。
「それじゃあ行こうか。今日は先日のお礼に食事をごちそうするよ」
しばらく歩くと、小さな1軒家についた。
「今ここの1階を借りててね。狭いところだけど、どうぞ」
ノアがドアを開けて招き入れてくれた。
「おじゃまします。これ僕たちが作ったパンです。みなさんでどうぞ。赤イモの入ったパンもありますよ」
「それはありがたい」
テーブルには鶏の丸焼き、野菜の惣菜、チーズなどが並んでいた。ぶどう酒と果実水もあった。
「それでは、リアムとの再会、フレアとの出会いに乾杯!」
ノアが右手でもった葡萄酒を高く掲げた。
「かんぱーい」
みんながそれに続く。リアムとフレアは果実水で祝杯をあげた。ルカがリアムとフレアに肉と野菜の惣菜を取り分けてくれた。
「ところで、皆さんは今何をされているんですか?」
「いつもは、外国で仕入れてきた珍しいものを売って稼ぐか、人でにぎわう大通りで大道芸をやって稼ぐか、だね。今は売るものがないので、もっぱら大道芸かな」
ノアが丁寧に説明してくれた。
「あの、実は、この赤イモパンが売れに売れていて、赤イモが足りないんです。もしよかったら赤イモを森に取りに行くお手伝いをしてもらえると助かるんですが。もちろん代金はお支払いします」
「それはこっちにとってもありがたい話だよ」
ノアの返答にルカとベンが深く頷いている。
「ありがとうございます。一人だと運べる量が少なくて。本当に助かります」
「みなさんも赤イモを焼いて売ったら儲かるかもしれませんよ」
「それはいい考えだね。ルカ、ベン、どう思う?」
「収入源は多いにこしたことないし、あの赤イモうまかったしね。いいと思うよ」
ルカは前向きだ。
「ようし、決まった。それじゃあ、いつ行く?」
ベンが畳みかけた。
「それじゃあ、明後日の日の出後すぐに、今日待ち合わせしたところで」
「おう」




