第六話 騎士団
おっはよー! 今日も一日元気にいきましょー! 朝ごはんは軽く、白米にローストビーフ! もちろんサラダもあるわ! たっぷりの牛乳をごくごく飲んで、最後に果物をパクリッ!
朝の栄養は大事だもの! ごちそうさまでした! あー美味しかった! 朝ごはんの後はさんぽにレッツゴー!
王宮のお庭はとても綺麗に整えられている。湧き水のような朝の光が草木を照らし、朝露の匂いを風が運び、あたしを通っていく。
朝は好きだ。新鮮な空気と光が満ちていて、いい匂いもして、深呼吸がしたくなる。朝日に照らされる緑が美しい。
庭に植えられたお花の香りをかいで、木の香りを胸いっぱいに吸い込む。小川のせせらぎを聞いて、鳥の歌声に耳をすませる。
「うん、今日もいい朝だ、いい一日になりそう!」
少し散歩をしたら、お兄様に会いにいく。昨日元気がなさそうだったから、お花をもらっていこう。
庭師さんにお願いして、お花をいただく。オーニソガラムって名前らしい。お花を持ってお兄様の部屋へ。
今日もヴァイオリンの音が奏でられている。なんだか悲しい響きに聞こえるのは気のせいかな。
「アイリーン、おはよう。また窓から来たの? 叱られちゃうよ」
「平気です。おはようございます、お兄様。今日も素敵なヴァイオリンですね。お兄様にこのお花をあげます。かわいいでしょ?」
「僕に? 素敵なお花だね。ありがとう、アイリーン」
お兄様はお花がよく似合う。目を細めてお花を見る、まつげや瞳も美しい。
光の神様がお兄様を祝福したんだわ、きっと。とにかく笑ってくださってよかった。お兄様が元気でないとあたしも悲しいもの。
「お兄様、今日は視察の見送りにあたしも向かいますね。お気を落とさないでくださいませ」
「心配かけたね、アイリーン。僕は大丈夫だから」
あたまを撫でてくれるので、堪能する。にゃふにゃふ。しあわせ〜。
幸せを噛み締めていると、またできる侍女がやってきて、勉強の時間がくる。名残惜しくお兄様に挨拶して教師のもとに向かう。毎日勉強して、あたしえらいわー。
終わった、終わったよー! やった! これで心置きなく午後を過ごせる! まずは腹ごしらえ。勉強って何でこんなにお腹すくんだろー。お昼ご飯楽しみだな〜!
「姫さま、昼食の準備ができました」
おぉー! 今日の昼食は餃子にチャーハン、酢豚、小籠包‼︎ 全部料理長に教えてもらった料理名だ。全部美味しい! 全部大好き!
「おかわり!」
「はい、姫さま」
というのを何回かくり返す。添えるのは、もちろん白米だ。餃子うまーい! ニンニクがたまらない!
小籠包はスープとお肉の旨みがじんわりくる。生姜を添えて食べるの好きだなぁ。
チャーハンはパラパラな米粒、チャーシューと卵とネギの相性がいい!
酢豚の肉と野菜が甘いタレのもと合わさって、ご飯が進む進む。うますぎて止まらにゃい!
「ごちそうさまでした!」
あー満足満足! 食べた食べた! もうほんっとうに美味しかったー!
ありがたにゃ〜。と、ゆっくりはしていられない。お兄様を見送らなければ。
できる侍女に身だしなみを整えてもらって、正面玄関に行く。
あ、もう馬車に乗ってしまう! 駆け足でお兄様に近寄る。
「お兄様!」
「アイリーン、見送りに来てくれたの? ありがとうね」
「お兄様、お気をつけて、いってらっしゃいませ」
お兄様の表情が固くて、少し不安になったので、むぎゅっと抱きつく。大好きなお兄様の匂い、安心する。
「あはは、心配しなくても大丈夫だよ、アイリーン。僕は元気だから、ね?」
そう言って、あたしの頭を撫でる。お兄様だって、まだ八歳だ。なのに、重い責任を背負っているみたいに表情が大人びている。
あたしにできることは、こうやって励ますことくらいだから、もどかしい。
「殿下、そろそろ」
「あぁ、アイリーン、もう行かなくちゃ。ちゃんと帰ってくるから大丈夫だよ、いってくるね」
お兄様の側近で獅子族である、ライオネルが声をかけてくる。どうやら一緒に行くらしい。
少し心配だけど仕方ないので、お兄様を離す。
「晩ご飯のときにまたお話聞かせてくださいね」
「うん、いってきます」
お兄様が乗った馬車を見送る。
ただの視察のはずなのに、モヤモヤするのはなぜだろう。お兄様の表情が晴れないから? うーん、なんか違う気がする。
とにかく、無事に帰ってきますように。
空はすっきりと晴れていて、心地いいが、遠くに雨雲が顔を出していた。
さて、あたしには行かなきゃいけないところがある。ワンピースのような運動着に着替えて目指す場所は、王宮騎士団の訓練場だ。
訓練場は王宮から少し離れている。専用の建物があって、結構大きいし広い。騎士たちの寮も近くにあって、ザワザワと人の気配や音が多い区画だ。
馬車に乗って行く。もうすでに連絡はしていて、馬車から降りたところには筋骨隆々な人が待っていた。
「ごきげんよう。エヴァーヘイヴン王国第一王女、アイリーンと申します。本日はよろしくお願いします」
挨拶をするとその筋骨隆々な人が跪く。低くなると頭の上の方にある耳だったり、立派な明るい茶色の髪がよくわかる。
目は鋭く、金色の瞳だ。獅子族らしい見た目をしている。年は三十くらいだろうか、男前だ。
「ご丁寧に痛み入ります、第一王女殿下。エヴァーヘイヴン王国、王宮騎士団長を拝命しております。オルドリック・メインと申します。本日は国王陛下より、第一王女殿下をご案内するよう申しつかっております」
「ありがとう。ぜひ楽にしてくださる? あたしのことは皆、姫さまと呼んでくれるの。だからオルドリック団長もそう呼んで頂戴」
ずっとその調子で話されるとちょっと疲れそうだもの。
「承知しました。では姫さま、こちらにどうぞ。騎士たちが訓練に励んでいるところをご覧ください」
騎士団長の後について建物の中に入る。廊下を歩いていくと騎士たちの訓練の激しい音が聞こえてきた。
オルドリック団長は細やかな配慮をしてくれて、歩く速度を合わせてくれたり、ちょくちょくあたしを見て、ちゃんとついてきているか確認してくれる。
いい人だ。
揺れるしっぽが可愛く見えると言ったら怒られるだろうか。




