第四話 家族で晩ご飯
食堂についてみれば、まだ誰も来ていなかった。晩ご飯はできる限り家族みんなで食べる決まりになっている。
「姫さま、こちらにお座りください」
「ありがとう」
引かれた椅子に腰かける。カトラリー類はすでにセットしてあって、ワクワクしていると、お兄様が到着だ。
椅子から降りてご挨拶。
「セオドアお兄様、おかえりなさいませ。視察、お疲れさまでした」
「ただいま、アイリーン。昼間、僕を探しに来たと聞いたよ、留守で悪かった。なにか用があったかい?」
なんだかお兄様は疲れているように見える。でもあたしに笑顔を見せてくれる、さすがお兄様。
「少し魔物についてお尋ねしたかったのです。ユビキタス館長に聞いてきたので、あとでお話ししますね!」
魔物についてと言ったとき、お兄様は少しおどろいていた。でもすぐに優しい表情になって、頭を撫でてくれる。
「そうか、あとで聞かせてくれ」
「はい! お兄様の視察のお話も楽しみにしています!」
頭なでなでを堪能していると、お父様とお母様が到着された。お兄様と二人で挨拶に向かう。
「父上、母上、無事に視察より戻りました」
「おかえり、そしてお疲れ様。視察の話は食事中にでも聞こうか。無事に帰ってきて何よりだ」
「お帰りなさい、セオドア。公務ご苦労様でした。少し疲れた顔をしているわ、今日はゆっくり休みなさいね」
「はい、ありがとうございます。父上、母上」
次はあたしの番だ。教師に合格をもらったカーテシーをしっかりとお披露目しておかなくては。
「ご機嫌麗しゅうございますか、お父様、お母様」
「ご機嫌麗しゅう、アイリーン。カーテシーが上出来よ、素晴らしいわ。よく頑張ったわね」
「ご機嫌よう、アイリーン。さすが僕とエレオノーラの娘だ」
にゃふふ、身体を動かすのが得意でよかった! お父様はあたしを抱き上げて、たかいたかいをしてくれる。
「キャハハッ! うにゃー!」
お父様やお母様たちを上から見るのは楽しい。お母様もお兄様も笑っている。
あたしの次にお兄様もたかいたかいをしてもらって、席に着く。いよいよ晩ご飯の始まりだ。
次々に料理が運ばれてくる。晩餐会では順番に料理が出てくるけど、家族だけの晩ご飯ではいっぺんに出てくる。
テーブル一杯に並べられる料理を見るのが一番ワクワクするの。
「う〜ん、美味しいっ! トマトの旨みと野菜のハーモニー、ハーブの香りが食欲をそそるわ! 最っ高に美味しいミネストローネね! あたしこれ大好きっ!」
「ハハッ、アイリーンは本当に美味しそうに食べるね。見ていてとても楽しいよ」
にゃふふ。照れるにゃ〜。
「とっても美味しいから当然の結果ですわ、お父様。うちの料理長は凄腕ですから! アイリーンは毎日幸せですっ!」
実はオリバー料理長もこの場にいる。いつも壁際に立っていて質問すると答えてくれる。
料理の不手際がないように、何かあれば対応できるように控えているらしい。
食べる人の笑顔を見るのが好きなのもあるんだって、この前言っていた。
だからここぞとばかりに褒めておく、オリバー料理長がいなくなったら、大変どころの話ではない。
あたしの幸せが減ってしまうから、未然に防ぐためアピールしておかないと!
「こちらのローストチキンも絶品だわ、エド。臭みがなく、ソースとの相性が抜群にいいわ。これはご飯が止まらないわね」
「エリーの幸せそうな顔を見るのが僕の幸せだ」
「もうっあなたったら」
お母様がデレた。エドモンドお父様はエレオノーラお母様のことが露骨に大好きだ。お父様が猛アタックしてお母様と結婚した話はとっても有名で、劇にもなったらしい。
お母様が照れながらすごい勢いでたくさん食べている。
獣人は人間より、よく食べる。あたしもお母様ほどではないけどたくさん食べる方らしい。
お兄様よりたくさん食べてるし、下手をするとお父様より食べているかもしれない。
それにしても本当にこのローストチキンは美味しい!
小ぶりのチキン丸々ひとつがあたし用だ。切り分けてもらい食べる、グレイビーソースが美味しすぎて止まらない。
ローストチキン、白米、ミネストローネのコンボがたまらない!
「アイリーン、お口の周りが汚れてるよ」
「んむ、ありがとうございます、お兄様」
隣に座っているお兄様があたしの口を拭ってくれた。ついつい夢中で食べると口の周りが疎かになっていけない。
「ふふ、家族みんなで食べると、とても美味しく感じるね」
「はい! あたしもそう思います!」
お兄様とニコニコ笑い合っていたら、お父様とお母様も微笑んで、食堂が柔らかく温かい雰囲気に包まれた。
美味しい美味しいと家族で言いながら食べていたら、あっという間に食べ終わってしまった。
これからは食休みのお茶をいただきながら、一日の報告だ。




