第二話 おいしい食べ物がだいすき
実は料理長とは仲良しだ。
初対面は真夜中。
お腹が空いたあたしは厨房に忍び込んで、つまみ食いをしていたら料理長に見つかってしまった。
しこたま叱られたが、夕飯だけではお腹が空いてしまうことに気づいてくれて、夜食を用意してくれるようになった。
強面だけどとっても良い人だ。
料理長はいつもおいしいご飯を作ってくれるから、料理の感想を話すため、ときどき厨房に行く。
おかげで食卓にはあたしの好物がよく並ぶようになった。にゃはは。
着いた。厨房の窓だ。厨房は一階にあるので、地面に飛び降りて窓からのぞく。料理長がいる。
窓をそっと開けて声をかける。
「オリバー料理長! 今お話できる?」
「姫さま! あぁ、大丈夫ですよ」
厨房に入ることは料理長に禁止されているので、窓の外すぐそばにある椅子に二人で腰掛ける。
オリバー料理長は声をかけるといつも嬉しそうに来てくれるからやめられない。
「今日の料理はいかがでしたか、姫さま」
「とっても美味しかったわ! 特にステーキが最高よ! 焼き加減が最高で最初はシンプルにそのまま食べたの、それからソースをつけたわ。シャリアピンソースはやっぱり美味しいわね! 以前あたしが好きだって言ってたこと覚えていてくれたの? とっても嬉しかったわ! ステーキ、お昼に三枚も食べてしまったの! 白米もたくさん!」
いつものように目は爛々とひかり、腕を目一杯広げて、美味しかったことを伝える。
オリバー料理長はいつもニコニコして頷きながら聞いてくれる優しい人なのだ。
「それはそれは、姫さまの笑顔が一番の褒美ですな」
にゃふ、ここも照れくさいなー。でも聞きたいことがあるから真面目な顔にもどす。
「それで今日はね、料理の歴史を尋ねたかったの」
国の成り立ちを学んだことで浮かんだ疑問を料理長に聞いてみる。
「そうですなぁ。自分はこの国で生まれ育ったので伝聞ではあるのですが、姫さまのおっしゃる通り、外から受け継がれてきたものが多いですね。大陸から移り住んだと伝わっていますから、そちらからでしょう。シャリアピンソースや白米の発祥地は、ハーモニー王国といって、大陸の西にある国で今も国交がありますよ」
大陸とは、あたしたちがいる国、エヴァーヘイヴン王国から広い海をへだてて北にある、とっても広い陸地である。
エヴァーヘイヴン王国は大陸の四分の一ほどの面積を持つ島国なのだ。
「大陸の西の国なのね、まだ大陸のことは勉強していないの。でも美味しいものがいっぱいあるのなら、行ってみたいわ!」
「ハーモニー王国は比較的穏やかな国なので、いつか行けると良いですね。ですが海には恐ろしい魔物が出るので、一人で行ってはなりません。海を渡るのはとても危険なのです」
むにゃにゃ。そうらしいのだ。授業で習ったのだけど、あたしはまだその魔物というものを見たことがない。
「オリバーは魔物を見たことがある? あたし見たことないの。魔物ってなんなのかしら」
「自分も見たことはないですなぁ。たまに漁師の話は聞きますが。漁師は魔物と戦いながら漁をしている強者たちですから詳しいですよ」
「漁師も魔物と戦っているのね! てっきり、騎士たちが戦うものだと思っていたわ!」
「強い魔物が出たら騎士を呼びますが、大抵の場合は漁師も戦います。そうしないと漁ができなくなりますからなぁ」
それはそうだ。魚の干物が無くなったら大問題だもの! あれ美味しいのよね〜。むにゃむにゃ。思い出して、また食べたくなる。
「お魚を食べるためには魔物を倒さないといけないのね! あたし、魔物を倒せるようになりたいっ」
青い空を見ながらそう叫ぶ。料理長は苦笑いだ。あたしは白虎族で力が強い種族だから、きっとできるはずよ!
「姫さま、訓練もせず、魔物に挑んではなりません。最近は現れる魔物が強くなっていると漁師が嘆いていました。そのせいで漁獲量が少なくなっているとも」
「大問題じゃない‼︎」
そんなことになっているとは知らなかった。どうりで最近お魚の干物がなかなか食卓に上がらないわけだ。
むむむ、これはどうにかしないといけない問題だわ。
そうだ、きっとお兄様ならもっと詳しく知っているはずだわ! 魔物について、最近魔物が強くなった理由についても聞きに行こう。
お兄様に会いたかったし、ちょうど良いわ!
「オリバー料理長、教えてくれてありがとう。お魚のために魔物について調べてくるわ! またくるわね」
「こちらこそ料理の感想をありがとうございます。姫さま、ぜひまた来てください」
料理長にさよならをすると、また壁を登りながらお兄様の部屋を目指す。
食べ物が減るなんて、そんなの看過できないわ‼︎ お兄様ならきっと詳細を知っているはずよ!




