第十一話 翌日
「ふぁ〜おはよー」
「キュア〜」
目を覚ましたあたしは、ドラゴンに挨拶する。シミみたいなやつは……お! 薄くなってる、やった!
ツルツルとした肌触りのドラゴンを撫でたら、抱えて一緒にベットから出る。
「姫さま、おはようございます。よく寝ておられましたね」
「おはよう。あたしどのくらい寝てた?」
「だいたい十五時間くらいでしょうか」
おぉ〜、けっこう寝てるねそれは。
朝食をお持ちしますね、と言って侍女頭は準備してくれる。昨日は眠すぎてあんまり食べられなかったから、もうお腹ぺこぺこだよ。
「うわ〜! いい匂い!」
デミグラスソース、赤ワインにバターの香り。煮込みハンバーグだ! やったー! 料理長、ありがとー!
「いっただっきまーす!」
熱々の煮込みハンバーグ、しっかりフーフーして食べる。
ふはふは、もぐもぐ、ゴクン。
「ん〜! おいしいっ‼︎」
お肉のじわ〜とした旨みとソースの旨みが絡まって、ほっぺが落ちる〜!
こうなったらもう夢中。ソースを絡めてハンバーグを口に入れる。
おいしい! おいしい! と言いながら、ハンバーグを一個食べ終わる。
「あ〜もうなくなっちゃった」
一個なんてあっという間だ。幸せだ。もっと食べたい。
「大丈夫ですよ、料理長がいっぱい作ってくれましたから」
「ほんと⁉︎ やったー!」
「ふふっ、いっぱい食べてくださいね。料理長も姫さまを心配していましたから」
「そうよね、心配かけちゃった。うん、いっぱい食べて、もう元気って伝えなきゃ」
ちゃんとサラダも食べたよ。サラダの中にフルーツも入っていておいしかったなぁ。
煮込みハンバーグをおかわりして、白ごはんも頼んで一緒に食べる。
ん〜! おいしいんだなぁ、これが!
結局煮込みハンバーグは五個食べた。おいしいから仕方にゃいのだ。にゃはは。
「ごちそうさまでした!」
「たくさんお食べになられて、お元気になられたようで、私共も安心いたしました」
「心配かけてしまってごめんなさい。いつもお世話してくれて、ありがとう。おかげで元気になったわ!」
「もったいないお言葉ですわ」
侍女頭は目尻を下げて微笑む。心からあたしを心配していたことが伝わって、心がポカポカする。
あ、そうだ、ドラゴンは何か食べたかしら。
見ると、キュア〜! と言いながら、果物を食べている。おいしいのね、よかった。
「姫さま、両陛下から落ち着いたら執務室に来るように、と言付けられております」
「お父様とお母様が?」
「はい。両陛下も姫さまがお元気なお姿を確認なさりたいのでしょう」
「そうね、あたしも会いたいわ。ドラゴンもどうすればいいか、相談したいし」
あたしは両親に会うため、着替えを侍女頭に手伝ってもらう。いつもの動きやすいワンピースだ。
傷の消毒もしてもらった。獣人は傷の治りが人間より早いから、後少しで治る。
満腹になったことで大事なことを思い出す。
「ハッ、そうだわ、お兄様はどうなったの⁉︎ 無事なの⁉︎」
「命に別状はありません。騎士団長が救出に向かい、今は自室で休まれています。怪我は軽いのですが、発熱しておられます」
「そうなの……」
「詳しいことは両陛下にお尋ねください」
「そうね……」
お兄様……早く元気になられるといいのだけど。
ドラゴンも一緒に行くけれど、騒ぎになりそうなので籠に隠れてもらうことにした。
両親の執務室に向かうとき、部屋の扉の前にいた護衛がリナであることに気づく。
「リナ、あなた休まなくて平気なの?」
昨日あんなことがあったのに、もう勤務しているなんて驚きだ。
「お気遣い頂きありがとうございます。一度休みましたので問題ありません。団長より、姫さまの護衛を任されております」
「そう、よろしく頼むわね」
「はっ」
流石にタフだわ。騎士団の方も大丈夫なのかな。怪我人でたと思うけど。
廊下を見渡すと襲撃されたからか、護衛が増えている。王宮もいつもより慌ただしい気配がする。
立て続けに王族が襲われたのだから、いろんな人が動いてくれているのだろう。
両親の執務室に向かうあいだ、たくさんの人に声をかけられた。
「姫さま! ご無事でなによりです」
「姫さま、もう休まれなくてよろしいのですか?」
「姫さま、大変なことになって、さぞお疲れでしょう。あとは我々大人にお任せください」
「もうすっかり元気ですわ! ご心配おかけしました」
みんなあたしのことを心配してくれる。あとは任せて休んでくださいと、口々に言ってくれる。
この国は優しい人が本当に多い。だからあたしもこの国に貢献したいと心から思うのだ。
たくさんの人と言葉を交わしていたら、執務室に着くまで、いつもの倍は時間がかかってしまった。
付いてきてくれた侍女頭が入室の許可を取ってくれる。
「お父様! お母様!」
「あぁ、アイリーン! 元気な姿をちゃんと見せておくれ」
「騎士から話は聞いています。よく魔物から逃げ切りました。こんなに傷を作って……頑張りましたね」
両親に駆け寄って抱きしめ合う。
お父様もお母様も、目を潤ませてあたしを抱きしめ、頭を撫で、ほっぺをさする。
あたしは魔物から逃げているときお父様、お母様にとても会いたかったのを思い出して、号泣してしまった。
「あぁ、怖かったねアイリーン。もう大丈夫だ。父さまがそばにいるからね」
お父様はあたしを抱っこして、あやしてくれる。泣き止もうと思ってもなかなか止まらない。こんなに泣いたのは本当に久しぶりだ。
お母様にも抱っこしてもらって、やっと落ち着いた。
「アイリーン、昨日のこと話せますか? あなたが見たことを知りたいのです」
「無理はしないでいいからね」
「大丈夫です。話せます」
いっぱい泣いてスッキリしたあたしは、昨日のことを話しだした。




