お金は返してもらうからね
「あずき様。朝でございます」
「あ?⋯⋯うっせーな。しばくぞ⋯ボケ」
「申し訳ありません。それでは本日のご予定はすべてキャンセルでよろしかったですか?」
「⋯あほなこと⋯言うな。それで得れるはずだった利益は⋯すべてお前が自前で用意できんのか?」
「いえ、それは⋯」
「⋯なら⋯起こしきれ⋯お前の⋯仕事だろ」
「左様です。では失礼いたします」
俺は細心の注意を払いあずきを抱え階段を降りる。頭の位置が悪くないか、俺の体が熱くないか。一つでも間違えれば俺が死ぬのは目に見えていた⋯
「あずき様、お風呂が沸いております。どうぞ御入浴を」
あずきは無言で地面に降りる。「どけ」と俺の足をどついて部屋から俺を追い出した。
数日前の俺ならあずきのこの態度にイライラしていただろうが、今の俺は殺されなかっただけ感謝という感情しかなかった。
あの後俺は1時間ほど無言で殴られ続けて、気絶したところでようやく殴るのをやめてもらえた。
少しして目を覚ますと、あずきの怒りは少し落ち着いていて、一枚の契約書にサインすればお金のことは忘れてあげると言われたので、内容も見ないまま俺は死に物狂いでサインした。その後は一言も会話を交わさないまま眠りにつき、今に至っていた
「この感じでいいんだよな⋯。」
正解は分からない。だが、現状最適な解だろう
キッチンからあずきが好きそうなお菓子を両手いっぱいに掴み、二階へ上がった。
十数分してあずきが、二階に戻ってくる
俺はあずきの第一声に全神経を傾ける。あずきは口を開いて
「お風呂ありがとね。気持ちよかったよ」
「はい、なら良かったです」
「なんで敬語なの?」
「謝罪の気持ちと言いますか⋯」
「別にもう怒ってないし、普通の喋り方でいいよ。君が敬語話すとなんか違和感するし」
あずきはもう怒っていないとのことだった。表情から嘘ではない気がして、俺は張りつめていた気を少しだけ抜く。
「このお菓子の山どうしたの?」
「あずきが好きそうだったから」
「へぇー優しいね」
あずきはそう聞くと遠慮なくポテチの袋を開け、つまむ。
「これ初めて食べるけど、結構おいしいね。一つ食べていいよ」
あずきは俺にポテチを向ける。それはおいしかったが、あずきがこんなに機嫌が良いことに恐怖を覚えてきた⋯⋯履歴書の内容はやっぱりマグロ漁船だったんじゃ⋯だから最後に俺に優しくしてくれるのでは⋯
⋯いや、シンプルに死亡保険の可能性もありえるな。死亡保険は自殺とかガンじゃなかったら、最短で即日保険金が下りると聞いたことがある。俺の情報を勝手に使いオンラインでもう登録を済ませているなら、俺はいつ殺されてもおかしくない⋯
「大丈夫殺さないよ。君には生きてあの金額を返してもらうから」
「⋯となると、マグロさんでしょうか?」
「いや手当だよ」
ちょうど呼び鈴が鳴った




