僕は30分以上呼吸しなかった人に出会ったことがないよ
「58.59.60はい。息吸っていいよ」
60になった瞬間、俺は勢いよく息を吸った。論理的には深く吸ってを繰り返した方が早く呼吸を整えれるが、そんなこと考えていられる状況ではない。がむしゃらに浅く息を吸い続けた
「はい、5秒たったね。はいもう一回」
俺は言われるがまま口をかたく閉じ鼻をつまむ。もうこの瞬間でも酸素は足りていなかった。
正しい呼吸法の次に必要なのは低酸素状況での呼吸配分。山に登ると文豪はすぐそんなことぬかした
何秒止めるかも決まっているわけじゃなく、文豪が俺の限界を見ながら決めているようでさっきから何度も限界スレスレ⋯いや、天国が見えている⋯
「そういえばさ、もしかしたらあずきちゃん忘れてるかもしれないから教えてあげて欲しいんだけど、妖怪連合で決めていた妖怪の強さの基準が変わったらしくて、加盟している妖怪は今月までに測りなおさないといけないんだよ。それでもう加盟しているあずきちゃんはもちろんなんだけど、宗太君ってまだ連合に加盟してないよね?加盟してなかったら妖怪退治の資格が与えられないのはもちろんだけど、すこしでも変なことしたらすぐ怪しまれて逆に連合から退治される妖怪に指定されるから申請してきた方が良いよ。それで加盟する時、君も強さを測る必要があるんだけど、君まだ妖怪になったばっかりで戦い慣れてないから何か武器を使った方が良いと思うんだよね。あずきちゃんみたいな間合いの外から攻撃できる銃系が良いかなって思ってたんだけど、よく考えたらあれはあずきちゃんの緻密な妖力操作で成り立っている強さだからまだ君には難しいと思うんだよね。他に剣とか盾も考えたんだけど、君は運動経験が無いから扱うのは厳しいと思うんだよ。それで何か君はいい案とかある?強さによって受けれるサポートとか自由度とかかなり変わるから実力より一つ二つ上を取って欲しいんだよね。強さの測定は今回みたいな規則の変化が無い限り、一年に一回望む妖怪だけができるんだけど、それは加入した時より格段に難しくなるから逆に実力より2,3下がってしまう子もたくさんいるんだよ。あ、もう息吸っていいよ」
口を極限まで広げ、おそろしく強く息を吸う。さっきまでは無かった肺の痛みが出てきた⋯
俺は切り株にもたれかかり、腹に手を当てながら文豪を睨んだ。
文豪は全く申し訳なさそうな表情を見せずただ笑った
「ごめんねー喋ってたら君が息止めてるの忘れてたよ」
俺は雷のように息を吸った。
「一回休憩を入れたほうがよさそうだね」
文豪は外套の内からパイプタバコを取り出し、葉を入れて人をつける。
甘い香りがした。その甘い香りは雷の呼吸をしている俺の灰に侵入し、俺はおもわずむせ返る。
余計呼吸が苦しくなった
「それで君は何か好みの武器とかある?」
俺は10秒ほど呼吸に専念して、ようやく考え始める。
出てきたのはさっきすらっと否定された銃だけだ⋯




