君には強くなってもらう必要があるね
「ああ。確かにちょっと話しすぎましたわ。」
猫助はつづけて
「それで話変わりますけど、さっきあずきはんとフクロウ卿の話盗み聞きしてしまったんですけど、どうなんです?あんちゃんのこと殺した奴、殺しに行く気ですか?」
「そうだね。殺さないといけない」
あずきはおれの目を見ながらそういった。その瞳はどこか暗くどこか燃えているように感じた
「でも、今すぐに戦いに行くのはやっぱりやめておくことにしたよ」
あずきの答えに俺は安堵する
「冷静になってみれば、私たちはかなり弱いから今戦いに行ったところで返り討ちに会うだけ。それならまずは基礎的なことを強化するのが最優先だと思ってね。それでなんだけど」
あずきはわかりやすく嫌な顔をする。次の瞬間、窓が外から叩かれる。いつもなら猫助と思うが今猫助は俺の目の前にいるので、それはありえない。となれば誰だ⋯
姿を見せたのは昨日あったばかりの妖怪だった
「魔女だと思ったでしょ?残念。宗太君の修業は僕が引き受けることになったから。よろしくね」
文豪であった
近くにそびえる高い山。その頂上で俺は息を吸込んでは吐くを永遠と繰り返していた。
隣には文豪が名の通りらしく小説を読んでいるが、耳だけは俺に傾けているようで少しでも呼吸が崩れると、すぐに本を閉じて「こうしたほうがいい」と言葉ではなく体を使って教えてくる。
なんセット目かわからない深呼吸を終えたところで
「すこし休憩にしようか」
俺の体はそれを合図に急に力が抜けてしまい、膝から崩れ落ちる…。
文豪は俺のそばの切り株に座った。
「これ、意味あるんですか?あずきは俺の基礎を上げるのが最優先って言ってたんで、てっきり妖術とか妖力関係の練習かと思ってたんですけど」
俺は人間をやめてからまだ12時間も経っていない。だから真っ先に覚えるは妖怪としてのことだと思っていた。
この意味のなさそうな呼吸練習が何の役に立つか正直分からない。
「それも確かに大事なことだけど、人間としても妖怪としてもいつも冷静でいることが最も重視すべきことだよ。もし今君に妖力のことを教えたとしても、元人間である君は妖怪と戦うときになれば、恐怖が生まれてしまうだろ?そんな心情の時100%の力を発揮することは不可能だ。だから僕はまず基礎の基礎となる冷静さを宗
太君に身に着けてほしいんだよ」
「それはそうですけど、ただの深呼吸で心が変わると思わないんですけど・・」
俺は文豪に正直に思っていることを伝えれた。文豪の食い逃げを見たせいか、あずきとかよりも簡単に本音を言える。
文は「宗太君は正直者だね」と笑い
「妖怪も人間もすべての動作は酸素をもって行われる。酸欠になれば人間と同じようにふらふらして、逆に酸素が多すぎると変な達和感を感じたりと、生きていくうえで酸素を操ることが最も大切なんだよ」
文豪の言いたいことはなんとなくわかった。それと同時に、少し本の読みすぎなんだと理解した。人間も妖怪も同じと言っているが、そもそも人間は意識的に酸素を操っている者なんておらず、皆生まれた時から自然と行っている。
人間はみな呼吸を操っているなどと理想を語る文豪に俺はついていけそうにない・・・「この呼吸って数日で身につくものなんですか?」
「いや、無理だね。こういうのは日ごろからの積み重ねで出来ていけるようになるものだから」
(じゃあ、別に今習う必要ないんじゃね・・)
もし俺が教える側の立場なら基礎が完成してから呼吸を覚えさせるが、まぁ今そんなことを反論しても「その基礎の土台として呼吸が必要だから」と一言で終わる気がするので、俺は口を閉じた。
「じゃあ、そろそろ再開しよっか」|
その後、日が暮れるまで呼吸の訓練は続いた




