君はもう君だけじゃないんだよ
「あずきさん。今そのような行動をとるのは危険です。友人として私はあなたが冷静な行動をすることを望みます」
「黙って。あなたは所詮金融屋。私が死んで欲しくないだけでしょ?お金はしっかり返すんだから私のことをとやかく言う権利はないでしょ」
「そういいますけど、今現在彼は無事であって、これ以上彼にもあなたにも危険が無いのは私の調査で明らかです。深追いはするものではありません」
「ならあなたは仲間を殺された私に黙って何もするなって言いたいわけ?」
「端的に言えばそうです。あなたが復讐したところで何も得られるものをありません。それよりも、人道を思うなら猫又の猫助さんの体の供養などをなさるべきでしょう」
「猫助は本人の許可があって殺したんだから、供養するにしても今である必要はない。今すべきは宗太の仇をうつことだよ。私は今殺意があるけど、この強さの殺意がいつまで続くかわからない。それが風化してしまう前に戦うべきだよ」
「これ以上は私が言えることはありません。ただ、警告ですがまだ復讐に行くとおっしゃるなら実力行使もありますので」
「へー面白い脅しだね。やってみればいいんじゃない?」
朝、あずきと聞きなじみの無い男の声がやかましく、俺は目を覚ます。
見れば鬼の形相のあずきが、フクロウを肩に乗せた紳士風の男にリボルバーを向けていた⋯
「⋯起きたんだ」
俺は寝起きでまだ視界がぼやけるので、目をこする。あずきとフクロウの紳士はどちらも俺の顔を見つめ
「一度彼とも話し合うべきだと思いますよ。それでもまだ行かれるようなら、私は全力を挙げて止めに行きますので⋯」
そう言うと、フクロウの紳士はそっと窓からどこかへ消えていった。
なぜいきなり殺し合いが始まりそうになっていたのか、俺には全く理解できず寝ぼけて見間違えたのではともう一度強く目をこする。するとあずきの鬼の形相の顔が悲しみを孕んだ表情に変わっていた
「⋯どうかしたのか?盗み聞きで悪いけど、金融屋とか聞こえたから借金どうのこうので首が回らなくなったみたいなやつか?」
「⋯⋯⋯」
あずきは目をちょっと動かすだけで口を開かない。それは答えないというよりかはちゃんと伝えるため、頭で言葉を先に作っているといったような感じだ。
その状況にさすがに俺も不安を感じ始め「結構やばいやつなのか?」と少し引きつった軽口をたたく
あずきはそこでようやく口を開いた
「単刀直入に言うね⋯君は今日の深夜2時ごろ誰かに殺された」
「え」
口からはその一文字以外出てこなかった。
俺は生きている⋯それを言おうとしたものの、あずきが冗談を言っているようには到底思えない顔色なので何を言えば良いかわからない。それを察してかあずきは
「現在の状況として君は今生きている⋯妖怪として」
「⋯⋯⋯妖怪としてというと?」
「人が死ぬときは肉体が壊れるか魂が壊れるかなんだけど、君はまず肉体が壊れてその後に魂が壊れかける寸前のとこだった。だから君の体に猫助の魂をそのまま入れた後、体は無理やり妖力で回復させた。だから今君は今、宗太1割、猫助9割の魂で生きている」
あずきの声は、どこか申し訳なさを含んでいた。それがなぜなのか、俺にはわからない
「魂を入れた猫助は⋯死んだのか?」
俺はそれだけが知りたかった⋯




