君も人間失格なんじゃない?
「頼んでくれないなら荒っぽい手段に出るしかないけどいいの?」
「それは怖いねえ。あずきちゃんを敵に回したら僕なんかすぐお陀仏だろうね」
「私が人と妖怪の考えていることを読めるの忘れてない?君は今「それでもやるきは無い」って考えてるみたいだけど」
「そりゃもちろん。僕が好きな人のことなら何一つ忘れたことはないよ。あずきちゃんが見てくれると信じて頭の中では本当のことを言ったんだよ。あえて言葉に出さないのは日本人らしくていいだろう?」
あずきは浅くため息をついた。
「じゃあ魔女の場所はどこにいるか分かる?」
「それは知ってるよ。あの子にはたまにお金借りてるから頻繁に連絡してるよ」
「私の子になにしてんの」
あずきは怒りというより呆れといった顔で、眉を下げた。俺はさっきから会話についていけず、ずっと口を閉ざしていた。それを察してかあずきが俺の顔を見ながら、手を文豪の方へ向けて
「紹介が遅れていたね。この人は文豪。私のもと仲間で妖怪だよ」
「え、妖怪?!」
俺は思わず声を荒げてしまった⋯。文豪は俺を笑いながら
「そうだよ。僕は妖怪さ。けど人間にとてもよく似てるから間違えられるんだ」
またパイプを深く吸って
「僕が何の妖怪かわかるかな?」
俺に質問してきた。
あずきがこいつのことを文豪と呼んでいたし、最初から小説みたいなのお書いていたから間違えなく本か文字にかかわる妖怪。俺は頭の隅から隅まですべて巡らせる。それでもまったくそれに関係した妖怪が思い出せない⋯。
「こいつは妖怪だけど、出来方が私や猫助とかとは違って、昔の人物とか動物とか概念が畏敬や尊敬とかの強い思いを受けていた者がそのまま妖怪になるタイプだよ」
あずきそういい終わると、さっきの店主が無理やり作った笑顔でメロンソーダとシフォンケーキを運んできた。
「それも妖怪なのか?」
「前も言ったけど、妖怪を幽霊系だけだと思ったら間違いだよ。人間と動物以外はすべて妖怪と思ってくれていい」
「そ、だから僕も妖怪ってこと。文豪に関係してたら大体できるよ」
あずきがシフォンケーキを口に運ぶ。俺も最初に頼んだコーヒーをすすった
「じゃあもうそろそろ、魔女の家に連れてってもらおうかな」
今頼んだはずのシフォンケーキとメロンソーダは空になっている。俺達三人は席を立つ
「よし、じゃあみんなダッシュ!!店主につかまったら何とかしてね」
「そういうと思ったよ⋯」
あずきは肩を落としながらも、出入り口のガラスをリボルバーで打ち壊す⋯
この文豪という男⋯人間じゃないのはよくわかったが、もし人間だったとしてもこれでは「人間失格」だろう⋯




