文豪ってのは死んでから名前が知られていくもんだよ
その日、私は陰鬱な雲を眺めていた
正確な雲の名前は知らないが、気分が陰鬱なためその雲の色、形、香り
すべてが陰鬱に感じた。
もっとも、事実的に言えば雲なんかなかったが。
青い青い黒い空。そこに白鯨が泳ぎ、巨大な体をゆったり動かしながら私を見つめ近づいてきていた
その瞬間、目視した。陰鬱の起因となる少女を。
少女の髪色はまるで私をあざ笑っているかのように純白であった
まぶしい白で私は⋯
「うーん。ちょっとやっぱり違うかなー。あずきちゃんはどう思う?」
外套を羽織った男はパイプタバコをふかしながら小説を書き、それを俺とあずきに見せる。あずきは
「特に興味ない。それよりも文豪、このコーヒ代って君持ち?」
「やっぱりあずきちゃんは冷たいねー。まぁそれがいいんだけど。今回は僕が出すから何杯でも飲んでいいよ。あと、あずきちゃんの家来をやらされてる君も遠慮せず何か欲しいものあったら頼んでね」
俺は「ありがとうございます」と言われるがまま遠慮せず追加でコーヒーをタッチパネルで注文する。あずきは「メロンソーダフロートとシフォンケーキをホイップクリーム増量して注文して。ここのシフォンケーキおいしいから君も食べた方がいいよ。」とすがすがしい顔で俺に言った。さすがにそこまでの大胆さを俺は持ち合わせずただ苦笑いで終わらす。
「それで本題なんだけど」
あずきがのんでいたコーヒーを机に置く
「文様を使いこなせるレベルの妖怪から命を狙われてるから、それを倒すため力を貸してくれない?」
「うーん。ごめん無理」
文豪はあずきの頼みをいとも簡単に断る
「理由は?」
「無理やり理由付けをするなら僕にまで危険が及ぶ可能性があるからかな。本音を言えば、めんどくさいだけかも」
「お金なら払う。君の力が必要なんだよ」
あずきは真っすぐ文豪を見つめ頭を下げる。文豪はすこし困ったような顔で
「実は今、お金は必要じゃないっていうか持ちたくないんだよね⋯」
文豪は乾いて笑った。その後ろで「みかさ」とネームプレートが張られウェイターが商品を持ってやってくる。さらにその後ろ、ぷんぷん顔を赤くして店主と思われる大男がフライパンを強く握ってこっちを睨んでいた
「失礼いたします。ご注文のメロンソーダフロートとシフォンケーキホイップクリーム増量になり⋯」
「失礼、みかさちゃん。この人は俺が接客するから大丈夫だよ。あと、入り口の鍵を急いで閉めてきて。ダッシュで」
店主に言われウェイターは走って入り口の鍵を閉める⋯店主はぎろっと文豪を睨んで
「お久しぶりですね、お客さん。ようやくお金払う気になりましたか?今までのつけ57万3千348円。きっちり払ってもらうまで今日は逃がしませんからね」
店主はフライパンを大きく振りかぶって「ごゆっくりどうぞ」と無理やり鎮めた声で言い放ち奥へ戻った
「⋯ね?。つけがたまりすぎちゃってもし今お金もらったら全部あいつに奪われちゃいだから⋯」
文豪はまた乾いて笑った。その笑顔が全く頼り者にならないものの笑顔だとわかった
文豪のアイディアを思い浮かんだのはたった4日前なのでこの後どうするのか全く決まってません




