狐狗狸さん
ひらがなの書かれた紙の上に顕現したのは狐、狗、狸の体格はでかく、体毛は酷く汚く伸び切っている。
爪は歪に曲がり、見た目から獣であることがすぐに理解した。
「私は犬、猫助は狸、君は狐を頼んだよ」
あずきは短く伝える。すぐに動き出したのは猫助だった。猫助は以前の大きさの半分ほどまで体を大きくすると、狸に体当たりをぶつけ自分ごと校庭に吹き飛ばした
俺は念のためにと持ってきておいた、ほうきとちりとりで構えてみるも、その体格差にしりすぼんでしまう⋯。
大丈夫⋯俺は二宮金次郎を倒したんだ⋯動物程度ならどうってことない⋯⋯
狐は動物のくせに妖艶な顔をしている。まるで俺なんかには一切臆していないかのように
「使って」
視界の端ですでに狗との戦闘を始めていたあずきが俺に何かを投げる。受け取るとそれはリボルバーであった。
あずきは心配して俺にこれをくれたのか、それとも目の前にいる狐はこれが必要なほど強いやつなのか⋯⋯
心気から負けを感じている俺はそんなひねくれたことを考えてしまう
俺は震える手で狐に銃口を向けた。狐は煽るかのように「コン」と可愛く鳴いて見せる
引き金を引いた。弾は明後日の方向へ飛んで行った。狐は待っていたかのように距離を詰めて俺に体当たる。俺は扉を突き破って教室の外まで吹き飛ばされた。
背中からぶつかったので何とか立つことができた。もし正面から当たったり、扉ではなく壁に当たっていたら、かなりまずかっただろう⋯。
「コン」
また狐が可憐に鳴いた。俺はすぐさまあてもなく走ってその場を逃げる。狐も負けじと追いかけてきた
廊下、階段、俺は逃げ回る。だが狐の方が速く、狐の手は少し、また少し近づいてきていた。
それを感じ取り俺は咄嗟に見えた女子トイレに曲がった。入ってすぐ見えたその光景は昨日見たはずのものとはだいぶ変わった姿となっていった。
「なんだこれ⋯床に穴開いてんだけど⋯」
「コン」
振り返る。狐の前足が俺を蹴りつける。よろめき穴に落ちそうになるも、なんと個室の扉につかまり体を保つ。狐はうっとりと俺の目を見続けていた
「色仕掛けなら無駄だぞ⋯。どうせなら行為アリの美人局くらいしてもらわねえと」
「コン」
狐はただ、静かに鳴く。
俺は体を立て直し、再び狐に銃口を向ける。さっきよりはましなもののまだ手は震えていた
「昔読んだ小説に「緊張しても結果が変わらんと言わんより、緊張せずやったほうが身体の力を最大限使えるはずだから、本能的な人間なら決して緊張などしないはずだ」って文があったんだよ⋯⋯やっぱり小説家は理想しか語んねぇな」
狐は俺を見たまま鳴かなかった。
俺は深く呼吸する。もし戦って良い結果を出せるとしたら、ここだと本能がそう言っていた
その時、トイレの扉が一斉に開く。
出てきた光景に俺は絶句した
赤ちゃんちゃんこと青のちゃんちゃんこを着た異様に太った幼児が二人二足歩行で歩いてきたのだ




