犬は狼の子孫なんだよ
「お前戦えるのか?」
一度あっただけだが見た目が猫であったり、あずきより話やすそうだったことで、そこまで戦えると思っていない。猫と犬どっち派というのは人類永遠の論争で、人間から見ていつも戦っているとはいえ、あの大柄は黒い犬と、俺と同じ程度の細い猫助では体格的に黒い犬に軍配があがる。
「当たり前やであんちゃん。わい見たいな仕事のやつは命を狙われることが多々あるんで、そん時の自衛の力くらいは持ち合わせてるんやで。まぁ、あずきはんには到底かないっこありまへんが」
「今の私のなら猫助の方が強いんじゃないかな」
「そんあご謙遜を。まぁ話はこれくらいにして、あの犬が言ってた黒い犬でっか?。思ってたよりちょいよでかいんでないですか?」
「私も黒い犬は見つかったらいいな程度だったから」
猫助は手で黒い犬との距離を測ると俺の体をがっしり掴み地上に下ろした
「へ?お前がなんかやってくれるんじゃないのか?」
「あんちゃん何言うてまんねん。ワイら二人でおとりやで」
犬の咆哮はまたすぐに響いてくる⋯。足音がちかづいてきていた
「この犬は正面から戦うんはあきませんわ」
猫助が4足歩行の猫の姿に戻り、走り出す俺もそれに続いて走って行くが、4足歩行の猫は速いもので俺と猫助で距離ができ始めていた。
「あんちゃん。もうちょっこし速よはしれんか?全然追いつかれてまうで」
「そういわれても2足歩行じゃ限界ってものがあって⋯」
「ほなあんちゃんも4足歩行になればええがな」
「秒で捕まってお陀仏だよ」
走りながら振り向けばさっきまで姿すら見えていなかった黒い犬が数メートルのところまでやってきている。
「ほらあんちゃん、目の前の角曲がるで、あずきはんのオーラ見えてるからそこまでいけば安心や」
猫助が右に曲がり、俺も犬にかみつかれる寸前のところで右に曲がった。
いきなりの方向転換であったにもかかわらず、犬は器用に体をくねらせて右に曲がってくる。
そこで、待ち構えていたあずきは再び犬の顔面を殴った。が、殴られた犬は数秒止まったのみでまたすぐかみつきかかる。あと少しあずきが俺と猫助を屋根に持っていくのが遅れていたら確実にどちらかはかみつかれていた
「さっきより効いてないっぽいけど、大丈夫なのか?」
すこし息が崩れた俺がそう尋ねると、あずきは珍しく考えた顔をして
「黒い犬が角を曲がってきた時、あいつは顔面と腹部を妖力で固めていた。一回目に殴った時はそんなことしていなかったから学習したってことだね。妖力量では完全にあっちに武があるし⋯⋯」
「ほならワイが体力使いきる前に、あずきはんとワイで畳みかけるしかないんちゃいます?」
「それにかけるしかなさそうだね」
「ってことは俺の役目は?」
「それはもちろん君の得意分野だね」
「⋯おとりだな」
あずきは俺をかづぎ300メートルほど離れたところで俺を地上に下ろした。
途端、黒い犬の咆哮が飛んでくる。
犬に見つからないように方向を何回か変えながら離れたせいで犬がどっちから来るのかわからない。
「俺も妖怪ならこんな役以外もできるのになぁ⋯。っま、そうなったらそうなったであずきからどんな役を押し付けられるやら
てんてんと置かれたさびた電灯が辺りをまばらに照らす。
暗闇もあいまってただの暗がりがどれもが黒い犬に見えてくる。
「来たか⋯」
その中の一つこちらに向かってくる影が見えた
どんどん近づいてくる。俺は作戦通り角を曲がった。
曲がった先を走っていると、もう後ろから犬の上がった息が聞こえてくる
犬が充分近づいたと思ったところで再び角を曲がった。黒い犬ももちろん曲がる。
だが、曲がった先で何もせずただ立っていた俺を犬は睨むだけで襲ってこなかった。
犬は慎重に俺に近づいてくる⋯ゆっくり大きな口を開いたところで、俺の影からあずきが飛び出し一撃を与えた




