嘘を言っているとき、人は左上を見るんだよ
「わざわざ私を迎えに来た、というわけじゃなさそうだね」
あずきの声はいつも通りなんの感情も入ってなさそうな声をしている⋯そのせいで、怒っているのか、まだ俺が卓也を見失ったことを知らないのか判断できない⋯
「その⋯文様のやつは妖怪度4以上なんだろ?だからあずきがいないと心配で、あずきを探していたんだよ⋯」
「へぇ。私が君の考えていることが分かるのは忘れたの?」
俺は「あ」と短く言葉を漏らした。終わった、そう思った途端あずきのこの真顔は怒っているのだと見えてくる⋯⋯いや、絶対に怒っている⋯。あずきはそのまま何も言わずに、俺のもとへ近づいてくる
⋯⋯⋯終わった⋯。俺の頭の中では走馬灯が流れ、今までのパッとしないが悪くなかった人生が思い出される⋯母の日にお母さんにプレゼントを贈った時は、お母さんは泣いて喜んでくれたし、父の日に何も上げなかったときはなぜか父に怒られた。彼女がいたことは無いが、少ない友達と濃密な青春を送ることができた。いい人生だった⋯⋯生まれ変わったら俺も妖怪になろう。
「まだ殺すと決まったわけじゃないから。遠くに行かれる前に速くその文様の人を探しに行くよ」
人生を振り返り、決意に浸る俺をあずきは無情に切り捨て俺の手を握る。あずきは全速力で走り出し、俺の体はただなされるがまま、何人もの観光客に体をぶつけながら引っ張られていった
「このベンチだよね」
さっきまで俺と卓也は座っていたベンチに着くとあずきは指をさし俺に聞く。
「⋯はい。その通りです」
俺は力なくほんのりとだけ頷いて返事をする
「元気出してくれる?君が元気がなかったらこの物語、淡々と終わってくだけになるから」
「いやメタいすぎ」
俺が勢いよくツッコむとあずきは、
「良かった元気出てくれて。このまま元気なかったら、本当に君を殺して他の人を主人公にしているところだったよ」
「ちょマジメタいからやめて」
「んじゃ物語に戻るけど」
自分から振っておいてあずきは、雑に俺のツッコミを捨てる。⋯⋯まぁ殺されないとわかっただけましと考えるべきか⋯。そん不安に露の興味も見せずあずきは
「君の脳内を見た限り、卓也って人が文様を持っていたらしいけど、本当に文様なんだよね?」
「ああ。あれは絶対に妖怪の力だと思う。まがまがしかったし」
「君の友達ってことはアクティブに動き回ることもないだろうし、県内の人だから観光地も行かない。となるとご飯を食べに来たか、買い物か」
遠回しの俺へのディスで、思うところはあるも、すべて事実である以上何も反論することができない⋯
「多分ご飯じゃないかな。あいつの友達とご飯予約しててそれで、時間なくて俺から離れたんだと思う」
「ならその線で行こう。ただ怖いのが私が来るって認識して離れた場合、卓也自身も相当手ごわいことになる」
「いや⋯あいつは」
「浅田さんを見た君なら分かると思うけど、とりつきが強う場合、自我は飲み込まれているから話を合わせてくるだけで、それはもう以前の者と違う。ここで卓也を殺さなかったしてもすでに精神的なものは死んでいるんだよ」
あいつは馬鹿だ。そしていいやつだ⋯。さっきの走馬灯の中にもところどころにあいつの影が落ちている。浅田さんはまだ友達でなかったからいいものの、卓也はほぼ親友と言える⋯それを失ってしまったら俺は⋯
「君は意外と感情的なとこがあるから直した方がいいよ。じゃ片っ端からご飯屋さん回るから
あずきは話を終え振り向いて進んでいく。何も言葉が出せないまま俺はその後を追った




