家族っていいなぁ
「初めまして」
その妖怪は愛嬌のある笑顔で頭を下げる。俺はつい頭を下げてしまうが、あずきは全く頭を下げない。寧ろリボルバーの銃口を女の頭に向けて離さなかった。
「あずきさん。あなたに危害を加える意図は一切ありませんので、どうかその武器をおさげしていただきたいです」
「私がそんなこと信じるとでも?」
あずきは瞬き一つせずにずっと、引き金に指をかけている。女の妖怪は両手をあげる
「この通り私は一つも武器を持っていませんので、ご安心ください」
「じゃあ、何が目的なの?」
もちろん、俺たちが勝手にこの妖怪の居場所に入ったのだから、あっちが俺らを殺しに来るのは分かる。だが、殺すのが目的でなければ、なぜこいつが俺らの前に現れたのか、わからない
「それは、もちろん、家族の安定のためです」
「家族の安定?」
聞き返したのは俺だった。
「はい」
女の妖怪は俺を直視して返事をした。だが、その顔からさっきまでの愛嬌が嘘のように消え、真顔で俺を見ていた。
「私は母として、自分の娘たちを守ってあげなければならなかったのですが、夫が浮気をしたことが原因ですべておかしくなってしまったのです」
「それで、自分の娘を殺したんでしょう?」
「少し短絡的になってしまっていますが、結果としてあずきさんの言う通り、私が自らの手でわが娘を殺すことになってしまいました」
女の妖怪は視線を下にずらした。顔には悲愴感が漂っていた。
「で、言い方が悪くなるが、お前の家族は安定ていなくなってしまったわけだが、ならなんで「家族の安定のため」になるんだ?もう遅いんじゃないか?しかも俺たちはその夫とも全く関係ないし」
「お前は黙っていてください」
俺の声が終わった刹那、女の妖怪が食い気味で俺を睨みながそういった
「つまり、男が悪いんですよ。性欲が強く、目先の利益のために他人を簡単に裏切る。男が死ねば良いんです」
女は俺を睨みつけた。次の瞬間に部屋のいたるところからあの純白の手が現れ俺たちを取り囲んだ。




