演舞
その後、沙月は食事と休憩した後に二回戦!と言いながら戻っていった。
「それで後は何かやることはあるか?」
「特にはないので買い物でも楽しんできていいですよ」
と恨めしい顔でミレイに見送られて買い物に向かった。
そこから宛もなくブラブラするのもなということでダンジョンに潜っていたのは内緒である。
「ってか最近のドロップ運いいな」
「確かにまさかあの短時間でスクロールが落ちるとはね」
さすがに2時間で深く潜るわけにもいかず40層で狩っていたのだが…。
「まぁ問題は誰が使うんだって話だな」
「『反射』だからな」
これが文字通りの反射であればなんの問題もないのだが…この反射はダメージを反射するスキルなのでダメージがなかったら何の効果もないのだ。
つまり障壁なんかで防御したら何も意味がない。
あくまでも受けたダメージを相手に反射するスキルだ。
しかもダメージはそのまま受ける。
「まぁ悪くはないスキルだとは思うが使い勝手はあんまりよくないな」
「確かになぁ」
とまぁ落ちたスキルに文句を言っても仕方ないのでそのまま会場に戻り控室へと向かう。
道中でスミレとツバキとすれ違う。
他のメンバー達も一緒だ。
スミレとのすれ違いざまに…。
「ガンバレ」
と応援の言葉を送りスミレも静かに頷いていた。
不安はなくなっていたようだった。
控室に入ると死にかけの沙月を目撃した。
目にタオルを乗せてソファに横になっていた。
「もう何も見たくないです~」
と音を上げているようだった。
「後は開始まで待機でいいのか?」
「後はお任せですからね」
とミレイが答えた。
演出プランなどは素人に手が出せるものではないのでアイドル達の運営会社にまかせている。
沙月達の仕事はどちらかといえばライブ開始前までの諸々が仕事であり始まってしまえば解放されると言って良い。
「ちなみにアカネも向こうで待機中ですよ」
「あいつもライブやるのか?」
「いえ、今回はパーソナリティーです」
ああ、そういう事…。
「あっでも電波とかは遮断されるんだろ?」
「アランがいるので問題ないです」
「ああ、なるほど…そういう仕掛け」
「ねぇ…最初の演舞二人にやってもらわない?」
「ああ、そうしますか…もうちょっとつかれましたし」
と先ほどから説明してくれている沙月はずっとソファに横になったままである。
相当疲れているようだ。
「演舞?」
「はい、ダンジョン内ってわかるように最初に派手にスキルを使ってもらいたいんですけどそれを二人にまかせてます」
「は?」
「はい?」
氏名されたのはカナタとカレンであった。
「ええ、そんな急に言われても…」
「人前でなんて恥ずいんだが…」
「『龍化』と『獣化』位なら見せて大丈夫ですから派手めにお願いします」
と有無を言わさず決定事項にされていた。
「そういうのはサキが適任だろ」
「えっサキさんならそこで寝てますよ」
と指を指した先には椅子を並べて寝ているサキがいた。
机で隠れて全く見えなかった。
「器用な寝方してんな…」
「お偉方の相手がつかれたそうです」
という訳で2人の演舞を行うことになった…ちなみに開始30分前である。
慌てて衣装を用意してということもなくこのままでいいやろとというノリで演舞を行うことに…。
「最初にお互いに変身して…」
「ブレスぶっ放すからそれを躱して後は流れで」
という雑な段取りを立ててから始まった演舞だった訳だが…。
やりすぎである。
そもそもノリノリで舞台で変身とか言いながら『龍化』と『獣化』を行い観客を沸かせブレスをぶっ放したのをカレンが目にも止まらぬスピードで躱した上に影から飛び出してくる演出まで行っていた。
熱狂よりも皆食い入るように見つめ最終的にカナタの吐いたブレスと突風の如きスピードでぶち抜いてかき消して演舞は終了となった。
何度でもいうがやりすぎである。
「あれ大丈夫ですかね…」
「まぁ大丈夫やろ、みんな驚いて声を失ってるみたいだけど」
「私もやりたかったかも…」
とランは不穏な呟きをしていた。
観客は凄さのせいで声も出せなかったらその後は歓声はすごかった。
会場全体が声で振動しているかのようであった。
「はーい、みなさん。おはこんばわー!アカツキアカネでーす!」
というアカネの挨拶が響く。
プログラムを投影するかのようにアカツキアカネの3Dモデルが舞台の上に現れる。
「新作!?」
「新作衣装だ!」
「嘘だろ…くっそやべぇ今はお布施できない!!!!」
などなど色々と声が響いていた。
ちなみに俺は2階席の立ち見という名の関係者席である。
体育館のような構造になっているのでVIP席などが存在しないのである。
まぁ気密性を大事にしているのでそのあたりは仕方ないのかもしれない。
そもそもライブができるように改造するのもそれなりに大変だったといっていたので文句は言えない。
ちなみにお偉方が右袖の2階席で観覧中である。
観察していると…。
「すごくないですか?あの幕アラクネの糸で作ったんですよ」
と沙月がやってきた。
ちなみに会場前に裏手で打ち合わせをしていたのでそこから移動してきたようだ。
外から会場を開けてしまうと効果が切れてしまうので会場内の出入りは不可能となる。
まぁさほど長い時間ではないので大丈夫だろう。
そこんところは客にも周知してある。
「後はもう、フリーです。観客5000人でこれって事は1万とか2万ってどうなるんですかね…」
「超大変なんじゃないか?」
今はアカネがフリートークで回している。
「今後やる時は丸投げでいいですね…大変過ぎます」
「一度やれば段取りはわかりますからね…出資だけして手伝いに収めましょう」
ミレイとサキも続けてやってきた。
「お疲れ」
「はぁ…スキルの効果で疲れないはずなんですけどねぇ…気疲れですかね…」
「まぁ許容範囲もありますしそもそも精神的疲労には効果が薄いですから」
「リフレッシュポーション飲めばいいんじゃないか?」
「いやぁ…気分は晴れますけど…」
「薬に頼るのはちょっと」
「もう終わりましたしね…この疲労感も味わっておきますよ…」
と三人とも疲れてはいるようだがやりきったという顔をしていた。
「あと、疲れてないとなにさせられるかわかんないんで」
という沙月の言葉に全員が静かに頷いていた。
そっちが本命か…。
そしてようやくトークが終わり、スミレ達が登場する。
ここからは、スミレ達のステージである。




