人材発掘
彼女が到着を伝えるとドアが開く。
「弁当、到着しました。こちらの方は運ぶ手伝いを買って出て頂きご同行頂きました」
と俺の状況を説明してもらった。
俺の眼の前に大柄な女性がやってきた。
自分より大きい女性はミレイで慣れているが…ミレイよりもさらに大きい。
しかもがっちりとした骨格のせいか余計に大きく見える。
自衛隊の制服に身を包んでいるせいもあるが、かなりの威圧感を感じる。
「それは申し訳ないことをしたわ…感謝を…」
と言って頭を下げてきた。
「いえ、一人で運んだら中身が崩れそうだったので手伝っただけですので」
「そう…そう言って…ありがとうございます」
と俺から弁当を受け取り、弁当を机に置いて、そして頭を下げてきた。
「そこまで感謝されたら申し訳なくなりますから気にしないでください」
「いえ、これは別のお礼です。それにしても何か格闘技をされてたりしますか?」
「ええ、ボクシングを少々…後は独学で色々と」
「そうですか…」
といって口に指を当てながら少し笑っているように見えた。
「それでは失礼します」
「ありがとうございました」
と先ほどの彼女からも頭を下げられながら退室した。
それから元の部屋に戻る。
「はぁああああ、緊張した」
「そんなにですか?」
「ああ、ってか緊張の理由はあの女性自衛官だな…すっげぇ迫力だった」
「アキラがそんな威圧感を感じるほどの女性自衛官ですか…」
と何やら考え事をしているミレイ。
「まぁとりあえず無事に仕事はこなしたよ」
と言って椅子に腰掛けると…。
突然、唇を奪われる。
ほんの数秒だったと思うが…。
「おい…時と場合…」
「考えた結果ですよ、ちょっと癒しが欲しくて」
まぁ誰もいないし大丈夫だろうけど。
「まぁこれくらいならいいか…」
「ならもう一度…」
「あっ」
とそんなことをしていると…。
カレンが勢いよく扉を開けた。
「「「あっ!?」」」
3人が声を上げた。
「ちょっ姉さんずるい!」
「そっちは数日一緒にいたんでしょ!これくらい許される…」
と言って誤魔化すミレイ。
そこにぞろぞろと他のメンツも入ってくる。
ここで話は切り上げておかないとめんどくさいことになりそうである。
「スミレ達はどうだった?」
「ああ、緊張はしてたみたいだけど、ってかあんたはいかなくてよかったのか?」
「まぁ伝えることは伝えてあるし、それに他にもいるんだろ気まずい」
スミレとツバキだけなら別に行ってもよかったのだが、以前ツバキが所属していたグループのメンバーもいるなかに男の俺がいくのは変な疑いを持たれても嫌なので遠慮した訳だ。
「ってかサキはともかくとして沙月は何してるんだ?」
「ああ…沙月は…」
と噂をしていると沙月が戻ってきた。
「あああああ、お腹空きました、疲れました、アキラさん頭撫でてください」
といいながら俺の膝に座ってきた。
余程疲れたんだなと思い頭を撫でる。
「へへへ…癒されますね…」
「そりゃよかった」
こんな事で良ければと思いやっているが突然背後から悪寒が…。
ミレイも含め他3人も訝しい目で見られてしまった。
おい、そんなしーらないみたいな顔をこっちに向けるな!ラン!
「はっ!?私は一体何を!すみません…すぐどきます!」
といって突然立ち上がる沙月。
「まぁ別にいいんだが、何してたんだ?」
「受付をしながら優秀なスキル持ちを捜してました」
ライブ参加者の受付業務の補助をしていたそうだが、その過程で『叡智』を使ってスキルの確認をしていたそうだ。
「受付中ならじっくり見ても咎められませんから」
という訳で全参加者をチェックしていたそうだ。
今日のライブ参加者は、会場の都合上でもあるが探索者限定である。
つまりスキルなどを確認することができる訳か…。
「そういえば魔力無しや、まだ魔力に目覚めてない人があの空間に入るとどうなるんだ?」
「どうもなりませんよ。元々日本は規制されてますけど発展途上国とかだと入り放題ですからね、特に害はありません」
「じゃあなんで18歳以上からしか魔力測定しないんだ?」
とカナタが疑問を提唱する。
「これについては西園寺さんから聞いた話でもありますけど18歳より早く魔力測定による魔力の覚醒を行うと魔力値が低くなる場合があるそうです」
「それは切実だな…」
低魔力値の身としてはその苦労は身にしみている。
「その魔力の覚醒っていうのはあの測定用の石でしかできないんだよな?」
「はい、基本的にあの魔力の鑑定石がないと魔力は覚醒しませんしスキルも使えません…途上国では広場に放置してる国もあるので覚醒しようと思えば赤ちゃんでも覚醒自体はさせられます」
なるほど…若い内に覚醒させると低魔力値になる弊害があるから普通の国家では規制してる訳か。
魔力値の高さはそのまま国力に直結する以上そんな愚策はとらない訳か。
「魔力の覚醒をせずにモンスターを狩った場合は?」
「何もありません、レベルも上がりません。ただドロップ自体はします…まぁなので覚醒させずに子どもにモンスターを狩らせてる国もあったりしますね…」
その話題については社会問題にもなっていたから俺でも記憶にある。
貧困層はダンジョンに潜って金を稼いでいるって話だ。
「まぁそもそも小さな子どもではスライムを倒すのも一苦労ですからね、あまり良い手段ではありません」
と沙月はばっさりと言い切る。
「小さい特に魔力を覚醒させても魔力値が低いまま固定されてしまえば元も子もありませんから…それにダンジョンが求めてる条件には知性が必要なのである程度の年齢になるまではダンジョンには入ってこないでほしいというのが本音なんじゃないですかね」
と沙月なりの予想を話す。
「確かに…赤ちゃんや幼児が入ってもエネルギーは吸収できないし不要って訳か」
「そういうことです」
と解説をしながら弁当をかけこんでいる辺り余程疲れたようだ。
「それでいいヤツはいたのか?」
「うーん、うちのパーティには不要ですが組合にスカウトしても良さそうな人材はかなりいたので西園寺さんには伝えておきました」
「へぇ、それであの業務過多の状態が解決すればいいが…」
と全員が可哀想なものを見るような顔を天井を向けていた。
「ああ、そういえば一人気になる人がいましたね。海外の人でしたけど」
と沙月がポツリとつぶやいた。
◯あとがき
沙月が見つけた有能なスキル持ち。
『マルチタスク』
・自身とは別の意識を作り出し複数で思考と動作が可能
『固定』
・自身の触れたものをその場に固定するスキル(自分も動けなくなる)
『士気高揚』
・パーティメンバーの士気をあげる
『テクスチャ』
・自身の姿に他の人や物の姿を貼り付ける(一定時間及び衝撃で解除)




