獅子王ハルカside
獅子王ハルカの実家は、由緒ある空手道場であった。
小さい頃から祖父に鍛えられ同年代では敵無し、上級生であっても相手にならないほどであった。
祖父曰く、道場を継がせてもいいほどの逸材と言われていたのだが…10歳になった時にようやく長男が産まれた。
つまり私にとっては弟にあたる。
もちろん跡取りとしての道にも興味はあったが、私は現代では演舞としての価値が尊重される空手よりももっと実戦的な武道に興味があった。
跡取りの役目がなくなり、他の武道を積極的に学ぶようになった。
子どもの身というのは吸収力も早く、何より私には才能があった。
生まれ持っての恵まれた身長としなやかなバネ、そして強靭な精神力。
そして私には他の人とは違う大きな身体的アドバンテージもあった。
空手家ではなく、武道家として大成するのにそれほど時間はかからなかった。
18歳の頃には数多の格闘技を納めていたので後は実戦という事で自衛隊へと所属した。
訓練は非常にきつかったが私にとってはそれほどでもなかった。
同期が何人も辞めていく中で私は頭角を現していった。
しかし、大きな問題があった。
実戦機会が無かったのだ。
自衛隊はあくまでも防衛の為の組織…実戦訓練はあっても自身の身につけた武術を実戦する機会はなかった。
実戦したのは言い寄ってくる男達の鼻をへし折るのに使った位だろう。
文字通りにへし折った奴もいたが女に負けたと言うのが嫌だったのか特に咎められることはなかった。
この頃から男に対する印象はあまり良くなかった。
特に軽薄にも私に声をかけてくるような男には心底嫌気が差していた。
その後も強さを求めてあらゆる訓練へと参加したレンジャー資格もそれこそ特殊作戦群にも参加した。
女なのにとか女のくせにとか嫌というほど聞いた言葉だったが…それは私にとっては称賛の言葉であった。
「くだらんやつらだ」
幼少期に男のように育てられたせいで抜けない男言葉も今ではよく馴染んでいた。
部隊を任される事も増え、直属の部下達には特に何も言われなくなったが、未だに私に対して言い寄ってくる男達が多い。
「まぁ隊長綺麗ですからね、自衛隊の中で1、2っていうか2を知りませんけど」
「ほんと自衛隊じゃなくて女優とかそっち方面にいけばよかったと思いますよ」
と冗談交じりに同じ女性であってもからかってくる始末だ。
「正直争うのが烏滸がましいレベルですから、女性隊員達は諦めてますよ」
といわれてしまう。
自身の容姿を誇ったことは一度もない。
それこそ幼少期から空手、そして格闘技に明け暮れ私に言い寄ってくるような男は皆無だった。
「軟弱な男に興味はないからな」
「ならいっその事、隊長に勝った人と結婚すればいいんじゃないですか?」
この部下のいった一言に光明が見えた気がした。
男には興味がないが、子どもには非常に興味がある。
それこそ一から自分好みに育てられるというのは…それは良い…。
ならばこそ相手は厳選しなければいけない。
自身が遺伝により恵まれた肉体を持った以上、自分の子どもにも恵まれた肉体を与えてやりたかった。
しかし、今まで男を下に見ていた反動で自分より弱い男に身体を許す気には到底ならなかった。
自分より強く、そして優れた肉体を持つ男…それを見つけることこそが私にとっての目標となった。
しかし、この目標が高く険しい事を徐々に知ることになった。
すぐれた格闘家や武道家であっても現代ではそれはあくまでもルールに則ったものだ。
ルールの上での強さなどなんの強さの指標にもならない。
私が求めているのは純粋な強さだった。
一度求めてしまった以上妥協するのは性に合わず、最悪見つからなければ独身を貫いてもいいとすら思っていた。
正直、自分の認めた相手以外には用はなかった。
自衛隊内でも何度か階級の上の人材や強いと言われるような人に訓練と称して実戦を行なったのだが…残念ながらお眼鏡に叶うような人物はいなかった。
そんな事を繰り返しているうちに男漁りだの、バトルジャンキー等という不名誉な通称を使われるようにもなったが…まぁそれもさしたる問題ではない。
それに別に見境なく挑んでいるわけでもないのに男漁りと言われる筋合いはない。
そんな折にダンジョン災害が起きた。
自衛隊内でも階級が上になっていた私はすぐに現地に隊長として派遣された。
未曾有の大災害と今尚呼ばれるほどの災害によって多くの命が失われてしまった。
助けられない命、いくら強くなったとしても災害には勝てないのだと無力感に襲われながらも懸命に人を救っていった。
自然には敵わないという自分の弱さを認めたくもないという思いがあったのかもしれない。
昼夜を問わず、静止を振り切り救助活動に明け暮れた日々だった。
そんな折、災害場所でダンジョンを見つける事になったのは必然だったのかもしれない。
崩れた建物を撤去し行方不明者の捜索をしている時にダンジョンの入口を発見した。
なぜこんな所に洞穴が…という思いもあったが、中に人がいるかもしれないという思いから臆せず進んだ。
そして中で襲ってきたスライムを迎撃してから報告に戻った。
恐らく、この時だろう…私にはあるスキルが授けられていた。
その後は、救助活動を続けていく中で私はあのダンジョンという存在に心が惹かれていた。
自分の中で湧き上がるなにかを抑えられずにいた。
そしてその後ダンジョンの調査を任された時も真っ先に志願した。
その後ダンジョンを優先で攻略する部隊が編成された時にも私は真っ先に志願してダンジョン攻略にのめり込んでいった。
◯あとがき
ハルカsideの話がもう一話ありますが他の話を挟んだ後になります。
ここまでならまだ西園寺達が警戒するほどではないのですが…。
悪癖はもう1話の方で明らかになります。




