治療方法
とりあえず沙月への相談も必要だったが、それよりもまずは経験値ということで海に潜ってシルバーと一緒に狩りまくる事にした。
『経験値倍加』のスキルを持つ俺がいればとんでもない速度で経験値を稼ぐ事が出来る。
それから数時間狩る事で、衰弱しかけていたスミレの様態は大分回復していた。
「ごめん、ありがと…でもこれを続けるのは…」
「これくらい大した事じゃないさ」
といって俺とシルバーは水気を払っている。
正直、今の位の経験値を稼ぐのはそれほど面倒な事ではない。
しかし、改善しなければ悪化の一歩を辿るのは間違いない。
「これでどれくらい持つ?」
「恐らく2日持つか持たないかって所、シルバーで誤魔化せば1~2日誤魔化せるか次第って感じ」
アイラさんの時と同じように毎日稼ぐ必要があるようだ。
しかしあの時とは違い、ある程度貯めておけばいいという訳ではなく経験値を取り込むという行為そのものをスミレは必要としている。
「狩りまくればもっと伸びるのか?」
「いえ、多分大量に取り込んでも3日で何もしないとダメになるわ、今回もそれに近かったもの」
ここ数日は纏まって狩りをすることはなくシルバーで誤魔化していたそうだが衰弱の症状が一気に来たようだ。
「経験値を稼ぐだけなら俺が付き合えばいいんだけどなぁ…根本的に治療しないとだな」
衰弱の症状に怯えるだけでもストレスだろうし、今後何かあって稼げなくなった場合なんかに命に関わる。
2人で話していても予防策は思いついても解決策は思いつかないので、うちの知恵袋に相談に行くことにした。
まだ話しているのかと思いチャイムを鳴らす。
カレンが扉を開き出迎えてきた。
「大丈夫だったか?」
「大丈夫といえば大丈夫ですけど…」
と気まずい表情を浮かべていた。
中に招かれて入ると…全員死屍累々という状況だった。
「屋内でなにしたんだよ…」
「同じポーズで10分耐久っていうのを繰り返してみんなはまだ合格が出来てないの」
「ああ、あれか…」
覚えがあったのでこの状況になっている原因も気付いている。
「なんでちゃんと育ててないの」
と母から怒られてしまった。
「それは幼少からやらないと効果がイマイチだろ…」
「何を言ってるのいくつからやっても効果はあるわよ」
と人体の事に関してはとんでもない知識量を持っている母に言われてしまったら従うしかない。
ちなみにクリア出来たのはカレンだけで他は苦戦しているようだ。
まぁカレンは似たような事を教えていたのでそれが活きたのだろう。
「悪いんだが、ちょっと喫緊で相談があるんだ」
という俺の言葉でこの地獄の現状から解放され全員胸を撫で下ろしていた。
ちなみに1人だけ母の指導ということで喜んで受けていたサキは除く。
スミレも後から入ってきて一緒に座る。
そしてスミレの症状を説明する。
「それは深刻ですね…」
沙月が呟く。
身体の態勢がおじいちゃんのようになっているが深刻そうな表情を浮かべている。
多分身体をあちこち矯正したせいで痛いのだろう。
ちなみに残りのメンツはカレン以外は寝っ転がって身体を休めているようだ。
「それってダンジョン症候群よね?経験値ってことはええっと確か[経験値渇望症]だったかしらね。治療法あるわよ」
「「「えっ!?」」」
という母の言葉に3人が驚きの声を上げた。
「まぁ正確には私がそうだったっていうことなんだけど」
「「「えっ!?」」」
またとんでもない事実が飛び出した。
「対症療法は知っての通り経験値を稼げばいいんだけど、完治させるならここのダンジョンで出るのかは知らないけど40層以降に出現する植物系のモンスターのドロップ品を飲めばいいわ」
「40層以降…倒しやすさを優先して狩っていなかったのが裏目でしたか…」
「元々ドロップが渋いから、頑張って狩らないと落ちないわよ」
なるほど…ダンジョン由来の病気はすべてそこに治療薬がある訳か。
40層までいけとはなかなか酷な事を言うもんだ。
「基本的に10層起きにドロップ品が良くなるのだけど40層から下は特別ね」
「もしかして魔力欠乏症も?」
とミレイが口にした。
「ええ、それも治療薬あるわ…まぁ一応高ランクポーションで無理やり治す方法が主流みたいだけど。あれはあんまりおすすめしないわ」
「そうなんですか?」
「治療の実績は低魔力者だけでしょ?あれも多分治ってないわよ」
という驚きの事実であった。
「あれは魔力欠乏症の症状を魔力をMAXにして維持することで無理やり症状を抑えてるだけだもの、下手すると数年後しに再発するわよ」
それを考えるとカレンの場合は、『超回復』で完治させたという事か…。
まじで『超回復』様々である。
「その知識はどこから?」
「バアルに聞いたのよ、元々50層まで行ったのも病気を治したくていったんだもの」
バアルが知っているということは…。
「待ちなさい、ワタクシは知らないわよ」
とシトリーが現れて補足してきた。
正直シトリーの知識はあまり当てにならないのだが…。
「ああ、バアルの場合は独自で調べたらしいわ…なんなら不明なアイテムを持っていったら効果を教えてくれるくらいには博識だったわ」
「こっちの悪魔様は全然アイテムとか把握してなかったのにな」
シトリーはその辺りの知識が乏しかった。
「そんなの調べる必要がないほど過疎ってたもの」
と遠い所を見ながら答えていた。
悪魔にとってもダンジョン運営はそれなり色々やらないといけないようだ。
「とりあえず一度調べてくるか…」
「あーしも行く」
とスミレが言い出した。
「別に待っててもいいんだぞ?」
「あーしの事だものそれになんとかせっかく自分でなんとか出来るならなんとかしたいし」
と覚悟は決まっているようだ。
「あら、今更気付いたけどあなた、アキラがぶん殴った子ね」
と何やら思い出したようだ。
それはあまり記憶に残してほしくなかったやつだ。
「あの時は、母共々…」
「あれはあの馬鹿が悪いのよ、それにしても面白い縁ね…あれ?でも…」
と言葉に詰まったかと思うとスミレを引っ張って耳元でなにやら呟いていた
そしてスミレの顔がどんどん赤くなる。
「一体何言ったんだよ」
「べつにーもし良ければ私も手伝うけど?」
「いや、カレンは借りてくけど後は大丈夫だ。しっかり鍛えてあげてくれ」
という言葉を発した瞬間にサキ以外がとんでもない顔を浮かべていた。
母がずっといられる訳では無いので鍛えられる時には鍛えておいてもらいたい。
そしてスミレにカレンとツバキを連れて43層以降の探索に向かう。
最悪いなければ他のダンジョンも検討しなければいけない。




