ダンジョン症候群
俺と母(聖歌)に向かい合う形でサキとアイラさんが座っている。
サキの視線が完全に下の方を見ているのは気になるがまぁ直視が出来ない事は、母には伝えてある。
「そんなに緊張しないでいいわよ、私のファンみたいだけど今の私もファンでいてくれるの?正直手も汚しているし色々変わっちゃってるけど」
と伝える母(聖歌)。
「そんなことありません!聖歌様は聖歌様です!」
「様をつけられるような人間でもないわよ、まぁ気楽に話せるように慣れていって欲しいわね」
「が、がんばります…」
「なんかあなたは他人の気がしないのよね…会ったことないはずなのに」
「私もなんですよ…なんででしょう?」
と顔を見合わせて悩む2人。
「お互いにヤバイ男に捕まったからじゃない?」
「「えっそこ?」」
実際の所はアイラさんは母(京香)と波長が似ているのかもしれない。
ちょっとポンコツな所とか結構似てるところがある。
「あんたの元旦那も相当ヤバイわね…」
「そっちも相当だと思います…」
とお互いの体験を共有してお互いに引いていた。
「一応、あの男生きてはいるのよね?」
「まぁ投獄中って話だったけど」
「殺ってこようかしら…」
とボソリと呟いていた。
「そんなリスクを冒す価値なんかないだろ」
「それもそうね」
刑務所に入って殺してくるリスクを冒す必要はない。
そんな事で罪を冒す価値すらない男だ。
それに殺るつもりならすでに俺が手を下している。
「さてここからは女子だけよ、あんたは出ていきなさい」
と言われる。
「ええ…」
「ほら、いったいった!」
と言われて部屋を追い出されてしまった。
ちなみに部屋には婚約者全員が集められていた。
「何の話をするか怖すぎるんだが…」
まぁしかし聞き耳を立てるのも無粋と思い気分転換に浜辺にでもいくかと思い歩き出した。
「ねぇ…」
と静かに声をかけてきたのはスミレだった。
「お、おうどうした?」
何やら気まずそうな表情を浮かべているが何かあったのだろうか…?
「ちょっと話があって…散歩しない?」
というお誘いだった。
スミレと散歩と言いながら浜辺に出てきた。
ここまでは終始無言という訳ではなく、色々とDDDの連中の話なんかもしていたのだが、どこか上の空なのが気になっていた。
このままなのも拉致があかないなと思い
「なんかあったか?」
と声をかけた。
少し下を俯き一呼吸入れてから言葉を発した。
「あーしさ、正直もう終わったと思ってたんだ」
そんなことないだろって否定する事も出来たがここは黙って聞く事にした。
「病気の事もトラウマの事も、現代で生きていくにはほんと向いて無くてこのまま一生妹の世話になりながら朽ちていくんだなって…」
妹は別に世話をしてるつもりはなかっただろうが、それは受けてによって印象は変わるだろう。
2人と関わりのある俺達にしてみれば妹は姉を協力して生きていければいいなと思っていたと思っているが…客観的に見れば依存と取られても仕方ない面もある。
「そしたらさ、アキラと再会してまさかハワイまで来てアイドルまでやってしかもあの有名なDDDの人にまで勝っちゃうんだよ…正直実感沸かなくてさ」
目を瞑り一呼吸を入れてから…
「夢を見てるみたいなんだよ…」
その言葉には少し涙ぐんでいるせいか色々な想いが詰まっているようだった。
「どうしたんだよ、改まって」
「人間ってさ…環境が豊かになると色々と考えちゃうのよ、特にこんな夢みたいな生活してるとさ」
何かあったのだろうか…言葉の節々に引っかかりを感じる。
「見ないようにしてた訳じゃなくて…予兆はあったと思う…気づかない位にはずっと激動の日々だったってだけ」
「一体何があった?」
「ここ数日モンスターを狩りにいってなくて気付いたんだけど…私のダンジョン症候群の症状がひどくなってる」
いつの間にかスミレは肩で息をしていた。
「はぁ?」
「恐らく、このダンジョン症候群…レベルに応じて取得しないといけない経験値が増えてる…今もシルバーに海でモンスターを狩ってもらってるんだけど全然足りないみたい…」
息が荒くなりその場に倒れそうになるのを近寄って支える。
「ごめん、最初は疲れだと思ってたんだけどここ数日で一気にきたんだ…」
「もっと早く言えよ!今からすぐに狩りにいくぞ!」
「違うの…これ根本的な問題でさ…恐らくレベルを上げれば上げた分だけ症状が重くなる…」
「それじゃ…経験値を稼いでレベルを上げたら…」
「そう…いつか限界がくる…だからさ枠を考えたら新しいクレアが来たわけじゃん、だからさ…」
「ふざけるなよ!!」
と声を荒げる。
「最後まで責任取るっていっただろ、勝手に諦めるな、対策は考えるからとりあえずその状況を治すぞ」
スミレとパーティを組む。
「シルバーはどこで狩ってるんだ?」
「多分、セーブポイントの近くで…」
「じゃああっちにはいないな」
バッグから槍を取り出し海に向かって雷槍を放った。
海を割りモンスターを薙ぎ払っていく。
それによって一気に経験値が入ってきているはずだった。
「ありがと、楽になった…」
「辛いなら俺が一生経験値稼ぎ付き合ってやるから。生きる為になんでも利用してみろ」
「ばーか、利用したくないから申し出たっていうのに…」
最初のバーカだけ聞こえたが後半に小声で何かを呟いているが聞き取れなかった。
「一度面倒見るって決めたんだから最後まで面倒みてやるよ、あきらめろバーカ」
「わかったわよ、全く…昔からこうって決めた事は譲らないんだから…」
今後の事も含めて沙月に相談に行くことになった。




