急襲
翌日、早朝に同じように目を覚ます。
「習慣は続けているようね」
「おかげさまで」
そういって2人で外に出て準備運動を始める。
「ずっと続けていたのね」
「これを辞めたら繋がりが消えちゃう気がしててなぁ」
戸籍上の繋がりもない聖歌との繋がりを維持するには聖歌から教わった鍛錬だけだと考えていた。
「馬鹿ね、今のあなたの肉体自体が私との繋がりでしょう?」
「維持してなかったら何を言われるかわからなかったから⋯続けていてよかったよ」
実際、ここまでこれたのもこの肉体があったからといっても過言ではない。
沙月の力が無かったとしてもこの身体能力はダンジョン探索においては大きなアドバンテージを持っていた。
「まさに理想の肉体といってもいいわね⋯長年の結晶ね。ボクシング以外でもやれたんじゃない?」
「格闘技系は出禁状態だったし、他のスポーツ系やるには遅すぎたからね」
実際、他の格闘技系であってもやれた可能性はあった。
しかし問題を起こした選手を使うような団体はなかった。
高校時代にスポーツをやっていれば⋯とも思ったが、精神的ショックも大きくそういう道に進む気はなかった。
「まさに宝の持ち腐れだったわね⋯」
「いま、がっつり探索者として芽が出てる以上宝は有効活用してるよ」
「古武術は教えていても人を傷つける技は教えてなかったものね」
「基礎も基礎だったからなぁ人を傷つける技術は教わってない」
「これからはがっつりと教えてあげるわ、さぁ構えなさい」
という訳で準備運動後に実戦で訓練を行う。
母の持つ技術の伝達という名のシゴキを受けて終わった頃にはボロボロであった。
「身体で覚えるのが一番なのはわかるけどさすがにやりすぎじゃない⋯」
「立てる時点でまだまだよ、この後、あいつらのシゴキもやるからそれに参加すればいいわ」
「了解⋯」
とりあえずシャワーを浴びるのだが⋯。
「一緒に入る?」
「遠慮したいんだが⋯」
「照れなくてもいいでしょ」
シトリーといい母といい、勝手に入ってくるのはどうかと思うんだ。
「やっぱり良い身体に仕上がってるわね」
「この歳の息子の身体をジロジロみるのはどうかと思うけど」
スキンシップが過剰かと思われるが、実はこれは昔からである。
「息子の身体の状態を把握するのは親の義務でしょ?」
「昔からそうだったけどもこの歳になってまで続ける必要はないと思うけど?」
「これのおかげであなたの身体は歪みも何もないのだから感謝して欲しいわね」
姿勢なども矯正されていたので肉体においては完璧に仕上がっていた。
確かに感謝ではあるのだが、この歳⋯しかも久しぶりだという事もあって気恥ずかしさが湧いてくる。
いや、シトリーのせいで若干麻痺してるからか⋯徐々に慣れてしまった。
「さすがホテルのお風呂ね、2人で入っても充分な広さがある」
「家の風呂もデカかっただろ」
「お風呂は命の洗濯だもの⋯なんなら私のアイテムボックスのお風呂はずっと入ってたわよ」
風呂好きは遺伝か⋯。
ここにも繋がりがあったな。
その後、全員で朝食を食べる。
相変わらずの食いっぷりに作ってる側としては嬉しいのだが⋯。
後片付けを手伝いたいとサポがやってきた。
「別にいいんだぞ?」
「いえ、手伝います」
お客様扱いをしてるつもりはないのだが、どうしてもこういう事をさせるのは悪い気がしている。
ちなみにクレアも手伝いに参加している。
「あいつらと一緒にいるのは気まずいので⋯」
まぁ裏切った以上それはそうか⋯。
そんなこんなで片付けから戻る。
ちなみにDDDの連中はシゴカれ中である。
俺も参加するかと思い支度をしていると沙月に呼ばれた。
「どうした?」
「ちょっと不味いことになってるみたいなのですぐにDDDに戻ってもらったほうがいいかもしれません」
「まじ?」
という訳ですぐに全員を呼び出して話をすることになった。
「ゲイルから連絡が入りまして出来るだけ早く戻ってきて欲しいそうです」
とレインが伝える。
「何かあったのか?」
とドロップが問いかける。
「私達の不在に気付いたようで他国からの侵攻があったみたい」
「どこから情報が⋯」
「出処よりも先に戻ったほうが良いわね」
と母が即断する。
「私もその方が良いと思います」
と沙月も賛同する。
しかし『王権』が使えない以上、戻る手段は一つしかない。
「私と後2人が同行しますので、残りのメンバーを決めてもらっていいですか?」
「了解よ、っていってもこっちのメンバーはほぼ決まりだけどね」
という訳で非戦闘員であるサポとファクトリーにクレアは留守番確定。
あちらの事後処理があるのでレインは同行。
そして残される事になったのは⋯。
「スノウはお留守番よ、ロシアが絡んでるみたいだし同郷とやるのは嫌でしょ」
と言われて留守番が確定していた。
まだ信用回復してないようだ。
実際、あそこの因縁を聞いていないのでどういった経緯があったかしらないのだが⋯。
「それでこっちは誰がいくんだ?」
とあちらとは別でメンバーを選定する。
「私とカレンにミレイさんです」
とすでに決まっていたようだ。
「移動にあたって私とカレンは必須ですけど対人戦闘だとミレイさんが強すぎますからね⋯」
という訳で俺の出る幕はなかった。
「気をつけろよ⋯」
「基本的にダンジョンから出ないので大丈夫ですよ⋯クールタイム終わったら戻ります」
との事だった。
母の元にいく。
「3人のこと頼んだぞ⋯」
と言伝をする。
「任せなさい、私の命に代えても守るわ」
と心強い母の一言を頂いた。
そして10人を見送る事になった。




