沙月side
無事に聖歌さんとの交渉も終わりDDDのメンバーの意識が戻るのを待った。
一番最初に起きたのはサポだった。
さすが魔力値Aといった所か⋯。
「おはようございます、身体とか大丈夫です?」
と声をかける。
「ひぃ!?」
と言って何かしようとしていたのでミレイさんが『魔眼』を使って止める。
「この子の能力って『殻』でしょ?発動されるとめんどうなんじゃない?」
「最悪発動しても破れるので洗脳を解いてもいいですよ」
「そう?じゃあ」
と言ってミレイが洗脳を解いた。
「あれ?」
恐らく発動したつもりのスキルが発動していなかったので違和感を覚えたようだ。
「危害を加えるつもりはないので大人しくしててもらえると」
と伝えたがまぁこれだけ敵に囲まれているというのにそれは無理があるか⋯。
「大人しく待ってなさい」
と聖歌さんが命令を下すと⋯。
「えっあっわかりました⋯」
まるで洗脳されている人のように大人しくその場でしゃがみ待機していた。
「いまのが『王権』の力です?」
「ええ、眷属にはある程度命令権があるみたいよ」
王に手を出せないだけではないようなのでこれから起きる人達もこれで話を聞いてもらう。
「あれ?なんで⋯王が」
と困惑しているサポ。
「後でまとめて説明するけど今の王は私よ」
驚きの表情を浮かべながら命令に従い座っていた。
それから他の人も起きる度に同じ命令を下してその場で待機させる。
サポが早めに起きたが残りはそれほど時差はなかった。
そして最後に起きたラッキーを御してから話を開始した。
「ええっと⋯敗北者の皆さんにはこれから選択権を与えます」
と全員の前で言葉を発する。
鋭い視線がこちらを向き一部から激しい敵意を向けられる。
「まず、前提としてあなた達の王であったルーシェルは死亡しました。一応死体は丁重に保管してありますので見せる事は出来ますが⋯スキルについては眼の前の女性に移動しています」
その言葉に聖歌さんへと視線が移る。
「あんたって清水聖歌だよな?」
日本出身な上に年齢も高めだったファクトリーが質問を口にする。
「ええ、記憶を無くしてアンノウンって呼ばれてたんだけどあるスキルのおかげで完全復活してるわ」
50歳を超えているとは思えないほどの美貌を持ちながら全員に宣言する。
「アンノウンの時にはお世話になったわね、ミラ」
と言ってミラーと名乗っている女性に声をかけた。
「そ、そうね⋯」
気まずそうに目を背ける。
何やら因縁があるようだ。
「さて、『王権』のスキルは今は私が持っている。それを前提に話をするわね」
「あなた達の選択肢は2つだけです、恭順か各国への引き渡しです」
引き渡しの単語に多くの人が反応した。
彼らは一部を除いて各国からの引き抜きかもしくは自発的な売り込みなどでDDDへと所属している。
もし自国への引き渡しの場合は、自由の保障は一切なく下手すれば処刑される可能性すらあるものが多い。
「へぇ⋯俺達を脅そうってことか?」
と強気の態度を示すのはラッキー。
「脅すんじゃなくてこれはあくまでも選択権ですよ、このまま恭順するのであればDDDに戻って国家運営してもらうんですから」
と言った所で全員が固まった。
「は?戻す?えっ戻れるの?」
「ええ、だってあなた達がごっそり抜けたらDDD自体が滅びちゃうじゃないですか」
DDDにはそれなりの戦力は残っているだろうが各国からのちょっかいを牽制しつつ自治出来る力は今のDDDにはない。
DDDを維持するのであればここにいる幹部達を戻す必要がある。
「俺は新しい王に恭順するぞ」
そういってすぐに声をあげたのはファクトリーだった。
「昔、好きだった女の元で働けるって言うなら文句はねぇ」
とかなりさっぱりとした性格だったようだ。
自分の気持ちに正直とも言える。
「私もです⋯正直どこに引き渡されるかわかりませんし⋯DDDで今までと同じ生活が出来るなら従います」
とサポも恐る恐る手を挙げて発言した。
この2人はそもそもが戦闘要員ではなくバックアップ要員だったこともあり素直に従うようだ。
他の8人はまだ決めかねているようだ。
「ちなみに、恭順の場合の私達の待遇はどうなるの?」
とミラが手を上げて発言する。
聖歌さんと因縁があるようなので自身の待遇が心配なようだ。
「基本的には今まで変わらないわ、正直私が国を運営する以上色々とさせてもらうけど待遇を変えるつもりはないわ」
と聖歌さんが答える。
安堵の表情を浮かべるミラ。
「まぁあなたには個人的に色々とあるから個別で対応はさせてもらうけど⋯命までは取らないから安心しなさい」
とミラに伝える。
そしてそのまま静かに顔を伏せていた。
「納得いかねーな!」
と声高に叫ぶのラッキー。
「何が納得いかないんです?敗北者さん」
「ちっ!ふざけるなよ、勝手に王を簒奪しといて俺達に従えだ?そう簡単にいく話じゃないだろうが」
まぁ普通に考えれば王位を簒奪してそれまでの部下がそのまま従うかと言われればきっと否だろう。
スキルによる強制力があるので従わす事は出来るものの眷属としての彼らのプライドもある。
「ならあなたは王に何を求めるの?強さについてはすでに知ってると思うけど?」
と聖歌さんは強気な態度を崩さない。
「⋯ああ、あんたが強い事はわかってるよ。だけどそれとこれとは話は別だ。俺はあの王の眷属になったのであってあんたの眷属になった覚えはねぇ」
どうやら思っていたよりもルーシェルの事を気に入っていたのかもしれない。
「ならあんた達は引き渡しを希望するってことね?」
ラッキーに加えて、ドロップと堅牢も立ち上がる。
どうやら3人は反対のようだ。
「残念だが引き渡しをされるのもご⋯」
とラッキーが発言しようとした所で聖歌さんの一撃を腹に喰らい悶絶していた。
「なら恭順する気になるまで身体に教えてあげる」
そう言いながら追撃でラッキーの顔に蹴りが入り吹き飛ぶ。
そして吹き飛んだ相手に対し追撃のかかと落としを入れて下に叩きつける。
すでに気を失っているラッキーを持ち上げる。
「さて他の2人も相手してあげるわ」
そういってにっこりと笑った。
2人はヘビに睨まれたカエルのように硬直していた。
その結果の3人の末路は、言うまでもなかった。




