聖歌side
『超回復』を取得してから自身の身体に何が起きているのかわからなかった。
そもそも回復とはどこまでを指すのか分からなかった。
通常の回復魔法やポーションではある一定以上期間が過ぎた傷は治らない。
それが世界の常識だ。
しかしこの『超回復』というスクロールが見つかったのはつい最近であり効果の検証があまり進んでいない。
顔のやけど痕が消えた上に頭の半分以上がやけどによって髪が生えない状態だったというのに髪まで生えてきたのだからその回復力には驚くしかなかった。
そして顔等の回復が終えた後に脳の回復に移ったのか恐ろしい勢いで魔力の減りを感じていた。
『無敵』スキルやその他スキルを併用運用していると減り自体は感じる事はあるのだが⋯ここまで減るのは初めての経験であった。
回復中に溢れ出る記憶と共に失われていく魔力⋯。
そして魔力枯渇による頭痛が起きるよりも先に魔力が空になり意識を失った。
意識が戻った気がしていた。
『超回復』と『回眠』の効果だろうかかなり回復が早かったように思える。
そして溢れ出る記憶。
脳の損傷を元通りにするとはまさに奇跡としか言いようがない。
そして蘇る記憶⋯アンノウンと呼ばれる前の私の半生の記憶。
自身の波乱万丈とも言える人生がようやく完成したような気がしていた。
周囲に気配を感じて目をあける。
そして眼の前にはアキラが立っていた。
こちらを心配そうに覗き込む顔⋯成長したというのにそういう仕草なんかは変わらないのか⋯。
私は生まれながらのショートスリーパーだ。
短時間の睡眠で充分な睡眠が確保出来る体質だった。
そんな事もあってからベッドではなくリビングなどで寝ている事が多々あった。
多忙な毎日ということもあって睡眠を取る時間はバラバラ昼間に寝ている事も多かった。
そんな時に目を覚ますとよくアキラが顔を覗き込んでいた。
聞いてみると死んだように眠っているから心配になるそうだ。
そして私は、いつも⋯。
「おはよう」
そういってアキラを抱きしめた。
大きくなり以前のようにすっぽり胸に収まるという事はなかったが温もりはしっかりと感じ取れた。
「生きてて良かったよ」
これが私達親子にとっての目覚めのルーティーンだった。
そして2人で涙を流した。
まさかまたアキラに会えてしかも抱きしめる事が出来るなんて⋯本当に奇跡に感謝だ。
それから互いに本当の再会を涙を流して喜んでいたのだが⋯ハッと我に返り。
他の人に見られているという事に気付き互いに身体を離し繕う。
「記憶戻ったんだな」
「ええ、凄いわよね⋯まさか本当に治るなんて」
「感動の再会に水を差してしまい申し訳ないのですが⋯急ぎ対応したいことがあります」
「ええ、構わないわ」
名残惜しさもあったがこちらの問題を放って置く訳にもいかない。
「『王権』スキルで眷属化してる人達の件です」
それから眷属化してる連中の説明を受けた。
「そういうことなら私があいつらを使って国家運営をすればいいってことね⋯良いわ」
アンノウン時代の記憶だけではこの即決は出来なかった。
しかし、今の私は清水聖歌としての記憶を持っている。
正直非常に興味深いと感じていた。
「良いのですか?」
私の即決具合に相手も困惑してる様子だったが、アキラだけはまぁそうなるよなみたいな顔をしているのは少し笑ってしまった。
「ええ、王様になるなんて経験そうそう出来ることじゃないもの⋯そうかなるなら女王になるのね⋯歌姫とは呼ばれていたけど一気にランクアップした感があるわね」
以前の私は歌姫と呼ばれていたが女王とは呼ばれていなかった気がする。
顔が童顔だったこともあり女王というキャラではなかったというのもあったのかもしれない。
「それでスキルについても詳しく伺いたいのですが⋯」
とスキルの詳細について尋ねられた。
「ええ、良いわよ。ただ私もスキルを正確に把握してる訳では無いから私が分かっている機能として説明するわ」
と自身の持っているスキルについて説明する。
大方の戦闘スキルなどはあちらでも把握しているようで説明は省いた。
『叡智』スキルがそこまでの性能を持っている事に感心しつつ叡智で網羅出来ていない部分を話す事になった。
『色欲王』
このスキルは、非常に強力な能力ではあるが色々と制約が存在する。
まずスキルを接収するには好感度が必要になる。
私に対する好感度が高くないといけないので出会ってすぐに奪う事は不可能だ。
「モンスターからでも奪えるんですよね?」
「ええ、私の所持スキルの多くはモンスターから接収してるわ⋯まぁ非常に面倒なんだけどね」
モンスターから接収するには好感度を上げなければいけない。
『錬金』スキルでモンスター用の餌を作成し数日かけて同じ個体の好感度を上げ続ける必要がある。
「自分で飼育したペットからスキルを奪う感じね」
「そう聞くとなかなかヤバイことしてる感じですね⋯」
それにスキルのレア度によっては好感度をMAX近くまであげないと取得することが出来ないのでかなり手間だったりする。
「人間から接収するよりは簡単だけどそれなりに面倒だったりするわね」
「私達からもスキルを接収出来るという事ですよね?」
聞きにくそうにこちらに尋ねる彼女に素直に答える。
「ええ、出来るわ。ただこのスキルにはある仕様があるからそこも説明するわね」
このスキルには重大な欠点も存在する。
この欠点のせいでスキル取り放題といかないのが難点な所でもある。




