縮地
縮地とは字が如く地を縮めるような速さで動くことなのだが…。
「縮地って移動方法なんだけどな…さっきのは明らかに転移してきたように見えたんだが…」
移動した時の衝撃もなく、気付いた時には眼の前にいた。
パッとしか確認出来なかったが、その中に『縮地』というスキルは存在していなかったはずだった。
「転移系スキルらしきスキルも見えなかったし、もしかしてこれの上位スキルが転移系なんかな?」
「名前的には転移系に思えるんですけど違うんです?」
「まぁスキルって話なら転移系にあたるのか…正直移動方法って知ってる身からするとすっごい違和感」
「移動法って事はもしかしてアキラさん出来ます?」
「出来るぞ、古武術も教わってたし」
「ええ…」
とカレンが引き気味の表情を浮かべていた。
「うーん、対人戦なら使えるんだけどな」
と言って縮地の移動方法を見せる。
「なんか動き方に違和感ありますね」
「基本的に踏み込む足を相手に悟らせずに滑るように移動する方法だからな」
対人戦では役に立つのだが、モンスター相手ではほとんど役に立たない。
なぜなら踏み込む足なんか見てないからだ。
それに脚力が跳ね上がった今の状態なら、しっかり踏み込んだ方が速く移動出来る。
なので現状この移動法で移動するメリットがないのだ。
「特にこれは正面でやるとすごいんだ。横でやるとまだ割とわかるんだが…」
と言ってカレンの正面から縮地を使ってカレンの眼の前までに移動する。
一気に顔と顔が近づき、反応することが出来ずカレンはその事に気付き一歩後ずさった。
「いきなり眼の前に現れました」
と驚いた様子のカレンだった。
「そ、これが縮地の利点、足を上げないから俺が近づいてくる事に気付かず気付けば眼の前ってこと」
「それならこれがそうなんじゃないですか?転移したように見えましたけど」
とカレンは言う。
確かにカレンからは瞬間移動しているように見えたかもしれないが、この移動方法はそこにある空気を押し出す。
「眼の前に来た時にブワッと風が来ただろ?あれがなかったんだよ」
「ああ、確かに髪が揺れる位の風が来ました」
その違和感を感じていたのだが…。
「まぁ沙月に確認してからだな」
実際に転移スキルならば、かなり使えそうなスキルなんだがなぁと思っている。
丁度、狩り終わったので…そのままカナタ達と合流する為にホテルに戻る。
ちなみにアカネは未だに『電装化』用のモデル作りの最中である。
「そっちはインセクト終わったか?」
「まだまだかかりそう…まだ3つ目の途中っぽい」
「ゴーレムルートか…」
「そっちもやると…」
「やらないから」
「いや、で」
「無理だから」
やるとしたら入口から雷槍をぶっ放して爆撃スタイルでやるしかない。
コスパと共に気分も最悪である。
「そういえば沙月、このスクロール見て欲しいんだが」
「はい、最近順調ですね」
「ビースト系は酷かったからな」
そんなやりとりをしつつ『縮地』のスクロールを沙月に渡す。
スクロールを確認する沙月。
「ああ、これは…アキラさんしか使えないかも」
「えっ転移系スキルかと思ったんだが」
「転移系スキルだったら良かったんですけど…」
「これは身体系スキルです、レイスが持ってるスキルなのも納得です」
身体操作系スキルはなぜか俺担当にされる傾向がある。
『獣化』、『竜化』なんかで尻尾が生えるのだが、それを操作出来るかと言われると非常に難しいらしい。
一度触手を自在に動かしている俺にコツを聞かれたのだが、そんなの自分の身体の延長線と考えて動かせばとしかアドバイスが出来なかった。
他の人は、身体についた異物…虫に刺された時とかの少し腫れてる感覚、つまり身体にとっての異物という感覚が近いらしい。
その割には感覚はしっかり通っており、意識をすれば動かす事は出来る。
しかし、戦闘中に動かせるかと言われると否らしい。
『竜化』をした時にカナタはすぐに飛んでいたのでいけるやろと聞いたのだが、羽は肩甲骨を動かす感覚で結構いけるらしい。
まぁそれでも自由自在には程遠いらしい。
「このスキルは発動すると身体が透過状態になって指定した場所に移動出来るスキルです」
「ああ、そういうことか…」
身体を透過状態に変更してから移動してたから風圧が来なかったという事か。
「それなら他の人でも使えそうな気がするんだが?」
「うーん…とりあえず覚えて見てもらって私とミレイさんで使ってみましょうか?」
俺が『縮地』を取得してから、沙月がスキル共有、ミレイが変化能力で使用したのだが…。
「あああ…やっぱり無理ですね、これ」
「戦闘中にこんなの出来ませんよ」
との解答が帰ってきた。
そう言われて試した見たのだが…ああ、なんとなく理由がわかった。
結局転移してるのではなく移動するという事は、戦闘中にその場所を指定する必要があるということ。
戦闘中に目視が出来、その場所をしっかりと捉えながら自分で移動しなければならない。
しかもこれ、なぜ座標を指定がいるのかというと…透過状態のせいで地面を突き抜けるのだ。
指定してからじゃないと発動できないのもそのせいだ。
「移動の仕方は自身の乗ってる座標の場所をスライドするかのように指定の場所に移動する」
だからこそあの時、あの騎士は剣を抜いていたという訳だ。
この仕様も厄介で途中で座標の変更が出来ないので高速戦闘には対応出来ない。
このスライド中であれば身体自体はその場で動かせる。
確かに地を縮めている…。
名前の通りである。
「しかも透過中は攻撃も出来なければ、干渉も出来ない」
転移距離もレベルのせいか1m程度、しかもクールタイムが10分かかる。
魔力消費が少ないのは助かるのだが、なかなか実戦投入するには難しいスキルだった。
「しばらく練習が必要だわ…」
としばらく狩りの後に砂浜で練習をする羽目になった。




