アイテム鑑定石A
焼き肉を堪能して店を後にした。
結果的には永年無料パスポートという待遇とダンジョン食材の卸先をゲットしてきたそうだ。
目の上のたんこぶであった老舗の問屋がいなくなったおかげで成り上がってきたオーナーだったらしく一番欲しかったのは有力な探索者達とのコネクションだったそうで渡りに船だったようだ。
「そんなによかったのか?」
「こちらにとっても都合が良い相手だったんですよ」
沙月達から話を聞いた限りでは、新興企業の社長らしく非常に考えが柔軟であり、こちらの納品する食品の出処は問わないという条件が非常に魅力的であった。
ダンジョン産の食品は検査を受けたのちに産出されたダンジョンの検疫を受ける必要がある。
残念ながらハワイにはその検疫場がない為、産出ダンジョンの検査が受けられていない。
その為、今まで産出した食品はほぼ自分たちで消費するか、お裾分けという程で氷川さん達に渡していた。
しかし、こちらの社長さんはどこで産出したものであっても検疫場を通った物であればOKという了承を頂けた。
という事は、渋谷ダンジョンで産出した物じゃなくても検疫場を通してしまえばOKだということだ。
ぶっちゃけた話をすれば沙月のアイテムボックスがあればどこの検疫場であっても通す事は可能だが、それは不義理だと思っていた。
もし何かしらの問題が起き産出先の偽装が判明した場合に卸先に迷惑がかかるからだ。
その可能性については沙月がすでに見つけていた。
【アイテム鑑定石A】沙月でも作るのが非常に難しく、大量の魔力を消費するという点が1つ、そして大きな問題は材料である大魔石含めモンスター達のレアドロップを要求される点が1つ、そして大きな問題が1つ。
「ゴーレムのレアドロップ【心鏡】が必要なんです」
俺とカナタでゴーレムを狩り続けていたが、ドロップしたのは1つだけの超レアドロップ。
作成出来たのも一つだけだがこの鑑定石にも使用上限があるので気軽に使えるものではないので今後、【吸魂玉】などがドロップした時に備えて極力使わないようにしている。
これを使って鑑定できないアイテムは現状存在しない。
そしてこのアイテムの厄介な点として産出ダンジョンと階数まで表示されてしまう点だった。
「私と同じような固有スキルを持っていてかつそれがアイテム限定だった場合は、バレる可能性もありますし何よりこれを作れる人がいたらバレちゃうので」
と可能性が低いが可能である以上は、納品出来ずにいるアイテムがかなり存在していたが、それを了承してもらった上で納品のOKを貰ったとのことだ。
「もちろん、しっかりと契約を結んで来ましたし契約内容については私達とオーナー以外でには口外しない契約になってます」
「抜かりないな」
という訳でタンスの肥やし否、沙月のアイテムボックスで肥やしになっているアイテムの納品先が見つかったという話だった。
そして引っ越しの準備にいくかという話になったのだが。
「そういえばアキラさんは呼び出しが入ってますよ」
「えっ!?俺?」
「はい。西園寺さんからです」
と俺は引っ越しにはいかずに西園寺さんからの呼び出しに応じる事になった。
今日は、会議室ではなく執務室に案内された。
呼ばれたとはいえ、念の為に扉をノックする。
「ああ、入っていいよ」
そう、言われて恐る恐る入る。
入るとそこは仕事場のようで机が5つあり、一つには氷川さんが座り、もう一つは以前話した事があった園崎さん、それともう一つにはアリーナさんが座って忙しそうにしていた。
そして西園寺さんが座る机へと向かう。
「なにやら呼び出されたので来たんですけど何かありました?」
「大した事でもないからいつでも良いっていってたんだけどね」
「まぁこっちにいるのもいつまでになるかわかりませんから」
「それもそうね」
といって手元にある書類を置き立ち上がり、横の来客スペースらしき場所に移動する。
「仕事楽になったって聞きましたけど…?」
傍目で見る分には全員余裕が無さそうである。
「ここ数日は楽だったわよ…溜まってた業務を割り振ったからね、相対的にかなりの仕事量が減ったわ」
「これで?」
「器ってねいっぱいになったら溢れるじゃない?でも器が空いたら入れるのがこの国の文化みたいね」
「ああ…なるほど」
増員したおかげでかなりの業務量が緩和した結果、空いたならと他の業務を入れられた訳か…南無…。
「まぁおかげで今日からまた帰宅は日を超えそうよ…笑えるわね」
ここで笑おうものなら何を言われるかわからないので必死に顔を繕う。
「これでも昔は森でこっちでいうスローライフをしてた民なのよ?ひどいと思わない?寿命が減りそうよ」
「それはエルフ的ジョークな感じです?」
「ははは…」
乾いた笑いが出る。
「絶対この国はエルフと相容れないわ。恐らく、死ぬまで働かされる」
と愚痴をこぼす…日本とエルフ…日本的には何百年も働かせる種族ってめちゃくちゃ助かるのでは!?と考えてしまったが、目の笑っていない彼女にそれを言う事はなかった。
そんな無駄話をしてる間にアリーナさんがやってきた。
「ご無沙汰しています…アキラさん」
「アリーナさんも…なんかやつれてません」
以前は、パッと見儚い感じの雰囲気を出して神秘的だった彼女だが、今では残業続きで疲れたOLのような感じになっていた。
スーツのせいかもしれないと現実から目を逸らす。
「今日来てもらったのは、アキラさんに個人的に依頼がありまして…」
「俺に個人的に依頼?」
「絵画のモデルになってくれませんか?」
「はい?」
どうやら…アリーナさんの固有スキルに関係した依頼だったようだ。




