肉
その後、食事を取った後に休む事になったが終始スミレから睨まれていた。
完璧に治したというのに心外である。
終わった後に、すぐに風呂に入りにいったのだがその後は俺にずっと警戒の視線を向けておりカナタの影に隠れている。
「せっかく治したのにこの扱いはひどくねーか?」
「いやアレを体験したらそうなるだろ、正直同情するわ」
とカナタが答える。
スミレは訝しい目で見てくる。
心外ではあるが仕方ない。
男の俺がいない方が話せる話しもあるだろうと思い会話もそこそこに眠りについた。
早朝外に出て運動しているとスミレがやってきた。
「足めっちゃ楽になってたありがと…」
「だろ?」
「でも、もうあれは嫌…特に触手!!」
「あれでやると効果高いんだけどなぁ」
「ダメ!絶対!」
「はいはい」
そんなやりとりをした後にキャンピングカーに戻っていった。
ある程度身体を動かしてから戻ると沙月とカナタと仲良く話していた。
昨日後々、しばらく起きていたようだったのでそれで仲良くなったようだ。
「朝飯は俺が用意するわ」
せっかくの良い空気なので食事は俺が担当することにした。
キッチンで準備をしていると…。
「1人寂しく食事の準備?」
「1人じゃないぞ、お前がいるだろ」
「そんな事いってもワタクシは手伝わないわよ」
「そう言って皿を並べてくれるんだからなんだかんだ優しいよな」
「フンッ」
少し拗ねてしまった。
まぁいつもの事である。
なんだかんだと手伝ってくれるので思ったよりも早く準備が終わり料理を運ぶ。
「今日はミートスパのホットサンドな」
「美味しい…」
スミレにも好評であった。
少し距離が戻ってきた気がする。
そしてオーク狩りを開始する事になったのだが…。
「あのずっと気になっていたんですが皆さんのレベルっていくつなんでしょうか?」
「44だな、あんまりいい数字」
「44…それだとパーティを組んだらドロップ品とか落ちなくなるんじゃないでしょうか?」
「ああ、それについては今からやりますね」
そういって沙月が『パーティマネジメント』のスキル説明と併せてレベルリンクの話をする。
「チートみたいなスキル…」
「未だにこのスキルのスクロールのドロップないよなぁ」
「落ちても提供するのは悩みますけどね…」
割と俺達のパーティの根幹をなすようなスキルなので外部に流出させるのは怖い。
DDDでもこのスキルの存在は知っていたがドロップには至っていなかった。
アレス曰く、特殊個体のモンスターのドロップ品なのでそもそも狙う事が出来ないそうだ。
という訳でレベルの問題は改善したが15レベルでオークが狩れるのかという話になるのだが…。
「かなり身体能力が落ちた感じがするけどいけるか?カナタ」
「余裕」
俺はオークスレイヤーを取得しているので余裕なのだが…カナタは大丈夫かと心配したのだが結果的には心配無用であった。
「やっぱりランクアップしたスキルは破格だな」
「だな、レベルは下がっててもスキルの火力は変わらんし」
俺の『特攻』スキルとカナタの『龍化』でゴリ押しすることが出来た。
後ろから沙月の援護も入れてもらったが特に危ない目に合うこともなく順調に狩りと続けていた。
ちなみに経験値をスミレに集約しているので4人分の経験値が溜まっている。
なんならすでに1レベル上がっていたりする。
このペースだと後2位上がりそうではある。
ちなみにオーク肉に関してはすでにドロップ済みである。
「キロ10万超えの肉…」
とスミレが驚愕していた。
ダンジョンドロップの肉は多くあるが、一番需要が高いのがオーク肉である。
ちなみに一番高い肉はホーンブルと呼ばれる牛型のモンスターがドロップする肉なのだが、このモンスターは30層を超えてしか出ない上にかなり強い。
狙って狩るのはかなり困難を極める。
一部の国でドロップした記憶があるが、内々で消費されてしまい味の感想しか流れて来なかったのだが昨今、初めてオークションに出品された時の価格はキロ単価1000万を超えていた。
「1個じゃインパクトにかけるし何個か取りたいとこだな」
とカナタがボヤく。
「まぁそのうち落ちるだろ」
といって俺達は狩りと続ける。
その後しばらく狩りをしていたにも関わらず全然落ちなかったのだが、昼休憩でずっと呪詛を吐いていたカナタの思いが伝わったのか昼空けから連続で3個ドロップするという偏りを見せた。
最終的に夕方まで狩って11個だった。
「これで数千万…」
と驚愕していたスミレだったが身体に違和感を覚えたようだった。
なんせ今日だけで3レベルあがっている。
格上を倒していたというのもあるが『経験値倍加』に加えて経験値集約でさらに4倍の経験値を得ていたのが理由だろう。
その件もスミレに伝えてさらに驚いていた。
そして夕食で出したオーク肉でさらに一悶着。
「これ納品するのでは?」
「明日も狩るし問題なし」
と言って食事を始める。
今日はシンプルに豚しゃぶである。
「こんな場で聞くことでもないのかもしれませんが話せない事ばっかりじゃないですか?」
「オーク肉の件とかなら別に大丈夫ですよ、このまま納品しますし」
「『叡智』の件に付随して大体の事が秘匿情報になりませんか?」
すでに『叡智』の件も含めてスミレには説明している。
それに伴って完全テイム条件も説明して今後やってもらう事も説明したらしい。
「これで活動してまだ半年も経ってないのがおかしすぎますよ」
「私とアキラさんの事は秘匿してますからね…私達2人の情報は完全にNGだと思って頂ければ」
「『龍化』なども秘匿情報ですし基本的には人に話さない事にします…」
「ああ、それがいいぞ。私も知り合いに話す内容は何を狩ったとかそれくらいしかない」
スミレの言葉にカナタも続く。
「ああ、『竜化』に関してはそろそろ世に出ると思いますよ」
「そうなのか?」
「アメリカでドロップ情報があったのでそのうち発表をあると思いますよ」
「おお、じゃあこれで動画でも使えるな!助かる」
動画としての画の弱さをずっと嘆いていたカナタにとっては朗報であった。
「先に出しちゃってもいいかもしれませんね」
「いいのか?」
「別に何か取り決めがある訳じゃないですからね先出ししても何もありませんよ」
「じゃあどっかで撮影するか…相手は…」
と何やら考え始めていた。
その後、片付けをしているとスミレがやってきた。
「手伝うよ」
「いいのか?動き難いだろ?」
「ちょっと違和感はあるけどこれくらいなら全然だいじょうぶ」
「ならよろしく、あっちは盛り上がってるみたいだしな」
沙月とカナタは今後の撮影スケジュールの打ち合わせをしていた。
ツバキのレベル上げも加味して調整しているようだ。
「興味があるなら一緒に出演してもいいんだろ?」
「じょーだん、もういい歳なんだからそんな夢見ないって」
「卒業アルバムに夢はアイドルって書いてただろ?」
「そんな恥ずかしいこと覚えてたの…恥ずかしいんだけど…」
「まぁ機会があったらそこんとこ話してくれよ、いやまぁ別に話さなくてもいいんだけどな」
「うん…」
少し暗い雰囲気になってしまったがお互いに分かれてから13年本当に色々あった。
気を許した仲ではあったが、だからといって何でも話せるという訳では無い。
俺にも話してないことはたくさんある。
正直、昔馴染みには話したくないという気持ちもある。
だけど、話しておかないといけない…それがとてつもなく怖い。
そんなこんなで夜が更けていく。




